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あんまり華麗ではないけど素敵な山形一族

 一年ぶりに親族達の前に姿を見せる俺、山形公平くん。

 たったの一年と侮るなかれ、今年3月からわずか5ヶ月でありとあらゆるすべてがいろいろ変わっちゃった俺は、一年前のオールド山形くんとは違うまさしくニュー山形なのである。

 

「こ、こんにちはー。ご無沙汰です、お久しぶりでーす」

「あっ救世主!」

「来たなあシャイニング、一族の出世頭!」

「えぇ……?」

 

 だって光るしね……などと考えながら親族達に挨拶をすると、即座に救世主シャイニング山形ネタを擦られてしまった。

 一族の出世頭って何よ、滅相もない。見ればうちの父ちゃんの弟さん、つまりはおじさんが俺を見て、楽しげに笑って周囲に語っていた。

 

「いやーまさか、公平が探査者になってしかもこんなに有名人になるなんてなあ! 誰も予想できなかったよ、大人しくて気の優しい子が、今じゃ探査者界隈の麒麟児だ!」

「あなた、はしゃぎすぎよ……ごめんね公平くん、いきなりこんなこと。久しぶり、元気してた? いろいろ、あったみたいだけど」

「あ、うん……なんだかんだ今は落ち着いたよ。久しぶり洋介おじさん、真理子さん」

 

 そのおじさん……山形洋介さんと、その妻の真理子さんに、俺は笑って会釈した。

 おじさん達は父ちゃんとは3つ違いなんだけど、俺より2つ年上の息子さんと同い年の娘さんをお持ちの親戚筋だ。

 気のいい人達で毎年、いつも優しくしてもらってるのが印象に強い。まあ父ちゃん同様にちょっとお調子者気質なんだけど、そこはご愛嬌ってことで一つ。

 

「兄さん達遅いわよー。っていうか公平、背ぇ伸びた?」

「夏子さん、久しぶり……うん、去年よりぐぐーんと伸びたよー」

「ぐぐーんとは嘘でしょー。ま、元気そうで何より」

 

 すでにビールを呑みつつ、テーブルの上に置かれたサキイカを食べつつ言ってくるのが山形夏子さん。父ちゃんの妹さんで、なんとギリギリまだ29歳というお若い女性だ。

 こちらの夏子さんはいわゆるシングルマザーで、まだ8歳の男の子、啓太くんと6歳の女の子、恵ちゃんと一緒にこの家でじいちゃんばあちゃんと暮らしている。

 

 その啓太くんはというと生来の人見知りで、夏子さんの後ろに隠れつつ俺を、なんかキラキラした目で見ている。

 愛くるしい顔立ちの子なんだけど、ヒーローを見る目なのはちょっとあれだね、御堂本家で会った子達と同じ匂いだね。怖ぁ……こりゃこっちでも何回か光りそうだぞ、チョウチンアンコウ山形くん。

 

 恵ちゃんも恵ちゃんで夏子さんの膝下に収まって、興味津々に俺とスマホを見比べてるし。たぶんシャイニング山形の動画でも見てるんだろうなーと遠い目になってしまう。

  

「公平くんに優子ちゃんも、大きくなったなあ。今それぞれ高校生と中学生だったか」

「ええ、俺が高一で優子が中二ですよ、健吾さん……姫子さんも、ご出産おめでとうございます。お加減はいかがですか?」

「ええ、全然大丈夫。ありがとね公平くん!」

 

 次いで声をかけてくるのはこれまた年若い夫婦で、夏子さんよりも若々しい。たしか今年で揃って22歳とかだったかな……奥さんが生まれたばかりの赤ん坊を抱いている。

 去年お会いした時はそこまでお腹も膨らんでなかったんだけど、春前頃に産まれるとか言ってたもんな、たしか。母子ともに健康そうで何よりだ。

 

 こちらは親戚の中でも一段遠く、じいちゃんの弟さんのお孫さんで、苗字も異なり二宮健吾さんと姫子さんご夫妻だ。

 つまりは俺のはとこってことになるね。じいちゃんの弟さんの家系は代々早めに結婚して早めに子供を育ててるみたいで、じいちゃんの孫世代が俺含めまだ学生ばかりなのに対して一回りほど、年上だったりする。

 

 こちらの二宮家の方々はさすがに山形家とは縁も遠めだし、じいちゃんの弟さんもそんなに帰省することはないそうだけど……たまたまというか、健吾さん姫子さんはこの近辺に住んでいるから、血縁の好ということもあり特別交流が深いのだ。

 そういうこともあり、親族の集うこの場にも来てくれているわけだね。

 

「おう、婆さん! うちの孫達が帰ってきてくれたぞー!」

「はいはい、がならないの。遠いところわざわざありがとうね正彦、由紀さん」

「ああ……ただいま、母さん」

「ご無沙汰してます、お義母様」

 

 次いで部屋の奥、キッチンのほうから姿を見せたのは60歳半ば程度のお婆さん。じいちゃんが叫んだ通りでこの人が俺のばあちゃん、山形八重さんだ。

 未だ白髪もほとんどない若々しさで、じいちゃんと並ぶとエネルギッシュな夫婦だなーって感じる。

 そんなばあちゃんは俺の前に来ると、柔らかく、ひっしと抱きついて背中に腕を回し、ポンポンと軽く叩いてきた。

 

「公平ちゃん。探査者になったそうだけど、大丈夫? つらいことない?」

「ばあちゃん……俺は大丈夫。たくさんのありがたい縁に恵まれて、どうにか無事にやってこれてる」

「あなたのニュース、テレビやネットでよく見かけるけど、もう気が気じゃなくて。こないだもあんな、大きなベーコンやダンゴムシみたいな化物相手にしたなんて、聞いたらね……」

「べ、ベーコン……? ダンゴムシ……って」

 

 バグモンスターと化した青樹さんと火野のことなんだろうけど、なんというか恐ろしく卑近な例えだ。

 たしかに青樹さんは肉の塊だったし火野はもはやダンゴムシだったけども、一般の方からそう忌憚ないご感想をいただくと、それらと戦ってた身としては案外微妙な気持ちになるものなんだね……

 

「優子ちゃんに、話は聞いてるわリーベちゃん、アイちゃん。みんなよく来てくれたわね、お盆の間はゆっくり過ごしていってちょうだいね」

 

 俺を抱きしめながらもそう言って、ばあちゃんが笑った。

 なんだか帰省したなーって実感の持てる、そんな笑顔だった。

急にたくさん名前が出てきましたが、別に覚えなくても大丈夫、雰囲気でおkですー

ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いしますー


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― 新着の感想 ―
[一言] ん~親戚の子供たちから『ヒーローを見るような眼差し』って(;^_^A まあ。確かに傍から見たら「リアルヒーロー(親戚のお兄ちゃん)」でしょうから無理はないのでしょうが・・・ (横断幕を『ニ…
[一言] ベーコンとダンゴムシのインパクトよw
[一言] 光って〜って大人たちに要求されたら愛想笑いで躱せるけど、子どもたちにキラキラお目々でお願いされたらもう光るしかない!
感想一覧
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