迫りくるシャイニング山形親戚デビューの時!
遅れました、すみません!
そうして迎えた翌日、帰省1日目の朝。
父ちゃん母ちゃん、俺、優子ちゃんにリーベ、そしてアイの5人と一匹はそれぞれ準備を済ませて、玄関前に集合していた。
「おし、みんな忘れ物ないな?」
「後から気づいてもさすがに取りには戻れないからねー」
「ういー」
「きゅうー」
両親の言葉を受けて返事する俺、とそれを真似して鳴くアイ。ちなみにこの子は今俺の頭の上にべったり乗っかっていて、ちょくちょく尻尾を揺らしているのが背中に触れてるね。
今日からの帰省には車が用いられる。運転手は父ちゃんで、助手やらナビゲートやらは母ちゃんが務めるのだ。
俺以下子供達は後部座席にてのんびりだらりと過ごす道中になるだろう。
昨日午後、ひたすらゆっくり休んだ俺は体調的にも万全だ。忘れ物をしきりに気にするみんなに対して、意気揚々と告げる。
「もし忘れたら俺が取りに戻るからね、最悪。空間転移で行き来できるし」
「兄ちゃん本当に便利になったねー……空間転移ってズルなやつじゃんズルなやつ」
「ズルて。いやまあ、ズルかもだけど」
優子ちゃんの呆れたような感心したような言葉に複雑な気分。たしかに今やしれーっと使ってるけど、空間転移ってすさまじいズルだよねー。
遠く隔てた2点をつなげる能力。神魔終焉結界を着なきゃ使えないものの、それでも破格のインチキスキルだ。
元々はリーベが使ってるのを見ていいなー、使いたいなー! って思って結界に組み込んだんだけど……
今やダンジョン探査には欠かせない、究極の時短スキルとしてひたすら便利に使わせていただいているね。
「ちなみにリーベちゃんも空間転移はできますよー? どちらかにお声がけいただければたちどころに! 鍋敷きでも抱きまくらでも取りに行きますよー! 有能、有能!」
「きゅ! きゅ!」
本家本元といえるスキル《空間転移》の使い手であるリーベが、自分の有能さ加減をアピールしながらニッコリ笑った。アイも真似してきゅーきゅー鳴いているのがかわいい。
山形家の二大マスコットである彼女らの言葉もあり、父ちゃん母ちゃんに優子ちゃんもそういうことならと頷く。
「万一の時には頼むぞ二人とも……よし! じゃあ行こうか、親元へ」
「窓やら鍵の戸締まりもできたし、火元ガス栓水道もOK」
「忘れ物も多分ないし、あっても兄ちゃんリーベちゃんにお願いできる、と! 完璧だね!」
万事抜かりなし。これにて準備も万端だ。というわけで俺達は家を出て、ガレージの車に乗り込む。
いわゆるワゴン車で、俺たち全員が乗り込んでも全然問題ないってくらい車内は広い。ぶっちゃけこの家の人数からすると大きすぎる車だ。
これってのも父ちゃんの思惑があったりして……実はこの人、車中泊に漠然とした憧れがあるのだ。
どこか見知らぬ遠い地にでかけ、車の中で寝泊まりして過ごす。そんなキャンプの亜種みたいな行為に楽しみを見出したようで、機会があればやってみたい! と思い、わざわざそれを想定してこんな大きなワゴンを購入したんだね。
でもここからがあるある話なんだけど、実際に父ちゃんがそうした車中泊を実際に行ったことは今のところ、一度だってない。単純に日々の暮らしが忙しいのと、やはり休日は家の中でダラダラ過ごすのが一番のようで、なかなか行動に移せないらしいのだ。
あるよねなんかそういう、趣味を始めようと思って機材を揃えるところまではしたものの、いざやろうと思うとなんかちょっと……ってなって結局やらないことって。
俺もいくつか似たような感じでなあなあに終わった趣味があるからすごくよく分かる。親子ー。
「よし、じゃあ出発するぞー」
「シートベルトしなさいねー」
「はーい!」
運転席に父ちゃん、助手席に母ちゃん。後部座席に俺、優子ちゃん、リーベって感じで座る。アイは俺のお膝元。
真ん中が優子ちゃんなのは万が一の時、俺かリーベのどちらかがすぐさまこの子を助けられるようにするためだ。まあないとは思うし、あったとしても因果操作で家族は守り切るからあくまで念のため、なんだけどね。
「ひさびさだなー、じいちゃん家」
「親戚みんなも来るんだろうし、兄ちゃん大変そうだねー」
「俺ぇ? なんでぇ?」
「だって今年になって大躍進じゃん! 探査者になって大金持ちでー、御堂さんはじめ業界の大物と大勢知り合いになってー、シャイニング山形とかいって芸人デビューも果たしてー、おまけに実は500歳でしたー、なんてさ!」
「芸人デビュー!?」
やめてよ! つい最近も話題になっちゃったシャイニング山形を芸人呼ばわりしないでよ!!
ちなみに一昨日の火野との一件ももちろん全国ニュースで報道されたけど、そっちのほうでは俺はあんまり話題にならなくて助かったよ。
まあ代わりに、空を飛んで初代聖女然とした姿を遠目からでも撮影されていたらしいエリスさんがなんか、謎のフライング美少女としてちょっとした人気を博してしまっているそうだけど。
"ハッハッハー、悪目立ちしちゃった! "なんて冷汗をかきながら笑っていた彼女の姿を思い浮かべる。
こんなところまで俺と似てるんだなーと複雑な心地になりつつも、車はいよいよ親元に向け出発したのだった。
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