「たまには里帰りも良いものですよ、コマンドプロンプト」
そんなこんなでその日はしこたまゲームをしたりアイを抱きしめてリーベと川の字っぽくなって昼寝したりと、しばらくなかったくらいのんびり過ごした。
一応、夏休みの最後の宿敵こと自由研究をどうするか、というのを考えてもみた。一人じゃどうにもならない気がするのでリーベとも相談して、どうするかなーと頭を悩ませたのだ。
「やっぱりセミの抜け殻を適当にこう、サイズ順に並べるしかないか?」
「えぇー……? フィールドワーク的な感じであちこち探し回るんですかー?」
「そうだなあ。お散歩的な感じにしてもいいけど、そもそも内容がちょっとなあ」
小学生の時にもやってみたんだけど、意外と抜け殻ごとに個体差があるからなんとか研究らしさはでっち上げられるかもしれない、と、俺はあからさまに面倒の少ない抜け殻集めにしようかと現在お悩み中だ。
こないだ梨沙さんからも小学生かな? 的なこと言われちゃったし、さすがにちょっと止めとこうかなーって気もしてたりするんだよね。
あるいは探査者についての、そうだなあ称号とかスキルとかについて当たり障りのない雑学を並べ立てるとかくらいか。
ただ、これについてはシステム側の俺がやるとこう、ズルくさいというかマッチポンプ気味というか……いろんな意味で本職なのにそれやっちゃっていいの? って感じはしてるんだよね。
まあ、いずれにしてもテーマさえ決まればあとは書くだけまとめるだけで、そこはコマンドプロンプトとしての演算能力を使えば秒殺できるわけなので簡単なんだけど。
だからこそテーマ決めが悩ましいところもあったりするんだよなー。悩むー。
と、そんなことを言ったらリーベにはまた、盛大に呆れられてしまったけれどね!
「この世界すべての因果律を完全演算して制御し尽くす究極機構が、夏休みの自由研究に頭を抱えているわけですかー……見る人が見れば何してるんだって卒倒しそうですねー。ヴァールとか変な顔しそうですー」
「あいつ生真面目だもんなあ。シャーリヒッタの奔放さにリーベのお気楽さを足して3で割ったらお互い、ちょうどよくなりそうな……と?」
飛び火して今日も解散間際、シャーリヒッタにワタシは姉だ、妹じゃない! と主張していたヴァールの真面目さを話していると、ふと称号が変更されたのを感じ取る。
ワールドプロセッサ、さっきの俺の言葉聞いてたかな? いつまでも秘密主義だとそのうち、自分の首を絞める羽目になるぞーって。
ステラの件、聖剣の件をシャーリヒッタにすら共有しなかったことについてはちょっぴり思うところあるからね、俺も。
何かしらの反応は期待しつつ、俺はステータスと口にした。
「称号変更ですかー? ワールドプロセッサ、さっきの会議見てた感じですかー」
「そりゃ見るだろ、現世に投入した精霊知能が3体にコマンドプロンプトまでいるんだし、と──」
名前 山形公平 レベル925
称号 皆とともに、皆と拓いていく時代を信じて
スキル
名称 風さえ吹かない荒野を行くよ
名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た
名称 誰もが安らげる世界のために
名称 風浄祓魔/邪業断滅
名称 ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で
名称 よみがえる風と大地の上で
名称 目に見えずとも、たしかにそこにあるもの
名称 清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師
名称 あまねく命の明日のために
名称 風よ、遥かなる大地に吼えよ/PROTO CALLING
称号 皆とともに、皆と拓いていく時代を信じて
解説 忠言感謝します、コマンドプロンプト
効果 高次元領域に正規ルートで進入できる
《称号『皆とともに、皆と拓いていく時代を信じて』の世界初獲得を確認しました》
《初獲得ボーナス付与承認。すべての基礎能力に一段階の引き上げが行われます》
《……すでに時代は私達の手を離れた。そのことにまだ、私の気持ちが追いついていないのかもしれません。コマンドプロンプト、あなたのように私も新時代を信じていきたいと願っています》
……ワールドプロセッサも、急激に変化したいろんなものに対応しきれていないのかもな。能力的にではなく、心や気持ちの部分で。
分かっていたことだけど少なくとも悪意はないんだ。ぶっちゃけ策謀家気質で腹黒だけど、それだって邪悪なる思念を打倒するため、コマンドプロンプトが無責任に高跳びを決め込んだためにそうならざるを得なかったんだし。
そんな彼女が今になって、はじめて他者を信じ、物事の成り行きを託そうとしているんだ。
すべてを丸投げしてしまった側の俺が言えた義理じゃないけど、それでいいんだよ。もう、私やお前が率先して果たすべき役割はないんだ。後は安心して、続く者達へと託していければいい。
世界は元来、そうして続いていくものなのだからね。
「……にしても、久々に称号効果ついてきたなあ。しかもこれ、高次元領域への正式な通行手形みたいなものじゃないか」
「あー……昨日概念領域にまで行ったから、それでじゃないですかー? 異世界の神なんてのも絡んできた以上、そのうちまた現世以外の領域に行くことにはなりそうですし、今のうちに渡しておこうって感じかもしれませんねー」
「だよなあー。しかし、システム領域にもかあ」
アドミニストレータ計画遂行後はすっかり、効果のないメッセージばかりが送られてくるようになっていたのにここに来て新規の称号効果が出てきた。
現世以外の領域に、自由に出入りできる許可書みたいなものだね。これがないとたとえ進入したとしても長居はできず、元いた座標に戻される仕組みになっていたりする。
俺ならその辺踏み倒せなくもないけど、わざわざルール破りをするのもね。
これを渡してきたってことは、これが必要になる何かをワールドプロセッサは見越しているのかもってことだ。
異世界の神絡みなんだろうな……システム領域にまで付与してきたのは単純に、そのうち顔見せろってことなのかもしれないなあ。
こっちも里帰りってやつかな?
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