良かった……お盆の親元にまで押しかけてくる伝道師はいなかったんだ……
概ねのことを話し終えて時刻は大体11時。会議もお開きになり、じゃあ予定通りに大人しく帰ろうかと俺とリーベは帰路に着こうとしていた。
「なんせ明日から3日間、爺ちゃん婆ちゃん家に帰りますからね。今日は昼間は自宅でのんびりしようかと」
「公平さん的には久しぶりに、自宅でのんびり過ごす午後ですよー! それに昨日の戦いの疲れ、残ってるでしょうしねー」
『父様の現世での祖父母かぁ……オレにとっちゃひいおじいちゃんひいおばあちゃんだな! じいちゃんばあちゃんにも併せて挨拶したいところだぜ!』
「さすがに混乱の元になるからやめて、シャーリヒッタ……」
一同に明日から帰省なんですよーハハハーというのをリーベと二人、説明するとシャーリヒッタがえらく食いついてきた。
自分にとっても祖父母ってあなたね、その理屈で行くと捉えようによってはシステム領域そのものが山形家に連なっちゃうでしょ。ヴァールがオイオイとツッコミを入れているのも印象的だし、この二人漫才コンビみたいだね。
リーベは昨日の火野、鬼島討伐をこなした俺の体力とか体調をそれなりに気にしてくれてるみたいだ。まあ基本的には問題ないけど、人間体で概念領域に入ったり妖怪軍団を権能で止めたりと、それなりに消耗することをしたのも事実。
正直ちょっとしたダルさもあるにはあるしね。なので午後はガッツリ昼寝でもして回復を試みようかなーと考えている次第だ。
「公平くんの親元……伝道師としては是非、いつの日か訪ねてみたいところではありますが少なくとも今回は無理ですね。さすがに私が首を突っ込んでいい話でもありませんし、何より認定式絡みの雑務もこなさなければなりません」
「倶楽部がまだ健在だったら私達もご一緒したかもだけど、もう一段落はついて警備も解除されてるからねえ。ハッハッハー、公平さんの一族も見てみたかったような、そんなところに基本無関係の私達が混じるのも怖いから安心したような」
「はっはっはー! まーた一族の前で自己紹介とかさせられて、青ざめた顔で葵さんの胸の中で可愛く震える師匠が見られたかもしれないと思うと残念です! あー残念ですねー!」
「ハッハッハー、しばらく擦られそう」
香苗さんやエリスさん、葵さんも今回ばかりは俺達と同行することはない。なんせ理由がないしね。
倶楽部が壊滅した今、少なくとも近畿圏内においては平和が取り戻された状態にあると見ていい。となると香苗さんにはS級探査者認定式という、国家規模の大イベントの主役を務める大変な役目が次に待ち受けている。
前にも言ってたけどスピーチ原稿の作成だとか、段取りの確認だとかいろいろマジで大変みたいだ。首都圏入りも式の3日前、8月22日にはしないといけないそうだし。
そしてエリスさんと葵さんは単純な話、俺と香苗さんの護衛の任が解かれたためもう引っ付いてくることがないのだ。なんなら倶楽部関係の事後処理と対サークルに向けての準備とで、香苗さん以上に忙しくなるかもしれないらしかった。
「サウダーデ、ヴァールさんやエリス先輩に葵ちゃんの準備が整うまでは暇するだろ? ちょいと観光でもするから付き合わんかえ」
「古都探訪……そうですね、せっかくこの地に来てまともに観光の一つもしないでは甲斐というものがない。家族への土産物を買うのも併せ、是非に。お前はどうする、ベナウィ」
「家族と一緒で良ければぜひ、お願いしたいですねえ。マリアベール様は妻よりも日本の観光地について詳しいですから、頼りになりますし」
「ファファファ! 期待しすぎんでおくれ……ご家族さんも是非に呼びなよ。師匠に加えて妻子も連れてきゃお前さんも、ちったぁ飲酒量に歯止めの一つもかかるさね」
「フフ、違いない」
一方でマリーさん、サウダーデさん、ベナウィさんの師弟三代トリオはここからしばらく、隣県の観光をメインにあちこち巡られるみたいだ。
お三方ともそれぞれ遠い国から来てくださってるし、サウダーデさんに至っては太平洋ど真ん中からの来訪だものな。せっかくだし少しでも日本という国の文化や伝統、素敵なところを楽しんでいってもらえればと思うよ。
と、そこでリーベがそうだ! といきなり、マリーさんに話しかけた。
「マリーおばーちゃん、マリーおばーちゃーん」
「? どうかしたかい、リーベちゃんや」
「一応言っておきますけど、お酒は呑み過ぎちゃ駄目ですよー?」
「うっ……!?」
何かと思えばグッサリ釘を差してきた。なるほど、マリーさんの肝臓の件か。
ここしばらく、リーベの《医療光粉》をヴァールがサポートする形で彼女の内臓を治療してたんだよな。完治とはいかずとも寛解、つまりはある程度まで正常に戻るよう取り計らっていたのだ。
いわば担当主治医として、リーベがかなりガチ目の深刻さでマリーさんへと続けて言う。
「もうほとんど寛解したとはいえ、あくまで寛解ですからー。無茶なことするとまた元の木阿弥ですし、さすがにもうそれをもう一度治療してくれは通せませんしー」
「そうだな……マリアベール、今回の治療はあくまで特例なのだということを忘れるなよ。アドミニストレータ計画遂行に多大な貢献をしてくれたことへの感謝として、お前の肝臓を治癒したのだ。これを毎回のことと思ってもらっては困る。ソフィアも同様に考えているだろうな」
「ふ、ファファファー……わ、分かってますよ……ファファ、ファファファー」
「えぇ……?」
ヴァールからも、ソフィアさんの意志をも代弁する形でのガチ忠告。彼女の場合、往年のマリーさんの無茶苦茶らしかった飲みっぷりを知ってるから、なおのこと強く警告するんだろう。
マリーさん、震えて目を泳がせつつ笑ってるよ怖ぁ……今までに見たことのないお姿じゃん。
これ、釘刺しがなかったらやらかしてたんじゃないのか……そう疑わざるを得ないくらい、図星感のあるお姿だった。
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