ネクストターゲット:ダンジョン聖教過激派、ついでにサークルも
倶楽部との決戦に際して少し絡んできていたアンジェさんやシャルロットさんの真相はさておき、今後の国内の能力者犯罪情勢は彼女達を中心とする形で動くだろう、というのがヴァールの見立てだ。
共闘していた3つの組織のうち一つが壊滅した。それを受けて残る二つの組織がいよいよ、本格的に動き出すことが予想されるからである。
「サークルと、ダンジョン聖教過激派……それぞれを相手取っている能力者犯罪捜査官と当代聖女が連携していることからも分かるが、すでにその両者は結託して動いている」
「元々は倶楽部を介して関わり合ってきていたようですが、倶楽部壊滅を受けて合流したようですね。サークル側もすでに幹部が何名か捕縛されていますので、そうする他なかったのでしょう」
「アンジェリーナ達から報告は都度受けているが、日増しに戦闘が増えている。幹部から聞き出した情報を元に拠点と思しき地点を虱潰しに襲撃しているらしいので、状況的にはこちらが攻めている形になるのだ」
サークルと過激派が合流した現状、首都圏は今や能力者同士のぶつかり合いが、絶え間なく行われる危険地帯と化しているみたいだ。
拠点襲撃とそれに伴う戦闘が日常的に行われているって、本当に日本の出来事なのかと耳を疑いたくなる。ほとんどアウトロー同士の討ち入りとか抗争だよこれ、怖ぁ……
アンジェさん達だけでなく、シャルロットさん率いるダンジョン聖教騎士団とやらが動員されてるっぽいのが余計抗争感を出している。
完全に組織同士の争いだし、ダンジョン聖教に至っては事実上の仲間割れだもの。そういうのは映画とかドラマの中だけにしといてほしかった。本当に、心からそう思う。
首都がそんなことになっているのはヴァールからしても遺憾らしく、無表情を苦く歪ませて続けて話す。
「この状況は言うまでもなくまずい。長引けば長引くほどに周辺地域の住民に被害が及ぶリスクは高くなり、治安悪化も大きな懸念だ。関西が落ち着いた今、こちらからアンジェリーナやランレイに向けて援軍を送り、一気にカタをつけなければならない」
「ハッハッハー、ってことは私と葵の次の行先は?」
「うむ──能力者犯罪捜査官エリス・モリガナと早瀬葵には今回の倶楽部に関する事後処理が済み次第、首都に向かい対サークルおよび対ダンジョン聖教過激派の任についてもらう。国際探査裁判所長による辞令も近く届くゆえ、そのつもりでいるように」
「はっはっはー! 了解しました!」
事態が長期化することによる様々な危険を鑑みて、エリスさんと葵さんを今度は首都へと送り込む。ヴァールは決然と、残る二組織を一気に叩く方策を披露した。
倶楽部との戦いにおいても主導的な役割を果たしてくださったお二人の助力は、今関東で戦っているアンジェさんやランレイさん達にとって間違いなくプラスになるだろう。
加えてヴァールが、次いでサウダーデさんに話しかけた。
「サウダーデ、よければ今月中はお前の力も借りたい。エリス、葵、ワタシに加えてお前も対サークル、対過激派に加わってもらえるか? 無論、報酬は弾む」
「む……承知しました、俺で良ければ喜んで。微力ではありますが、無辜の民に被害が及ばぬよう力を尽くします。個人的なことを言わせていただければ、先生のお孫さんとの共闘というのは興味深くもありますからね」
「ファファファ! まだまだ未熟な孫だから、まあお手柔らかにしたっとくれ。頼むよクリフトフ」
なんとサウダーデさんまで加わり、ヴァール含めた4人で関東への助太刀に入るというのだ。
すごい戦力だ……少なくともこれ、戦術面ではもう負けるってことないんじゃないか?
倶楽部との戦いからして急な呼び出しにもかかわらず、快く応じて馳せ参じてくれたサウダーデさん。
S級探査者のトップ層として、実力も人格も心から尊敬できる大御所であるこの方までも加わるのなら、サークルだろうがダンジョン聖教過激派だろうがもはやその命運は決まったようなものだろう。
うん、これは安心感がすごい。
アンジェさんとランレイさんのタッグの時点でなんの心配もしてなかったけど、ダメ押しすぎるほどにダメ押しの援軍だわこれ。
この件については完全に他人事になる俺だけど、せめて遠くからでも無事と武運を祈らせてもらうとしようか。
内心でそんなことを考えていると、不意にヴァールがこちらを向いた。
「そして、山形公平」
「うんうん……うん? んんん? 俺ぇ?」
「倶楽部の一件がようやく片付いたというのに悪いが、あなたにも参戦願うことになるだろう……ダンジョン聖教過激派の目的が、どうやら"ワタシ達"にも因縁浅からぬものであるらしいからな」
「…………うぇえ!? お、俺もか!」
なんかいきなりご指名を受けた、俺も参戦するのぉ!?
しかもダンジョン聖教過激派の目的って……たしか、神の召喚だったと聞いているけど。
今の口振りからしてまさか、システム側にも関わってくる話なのか?
「救世主様が今度はダンジョン聖教を相手に御威光を発揮されるのですか!? 伝道師として、これは救世主神話伝説の新たな幕開けであると世に知らしめねば……!!」
「御堂さん、相手はあくまで過激派ですよ、過激派。大多数の当教とは関係ございませんので、どうか落ち着いてくださいませ……」
「ハッハッハー! やば、私どっち応援したら良いかな葵。ぶっちゃけ私も使徒とやらになってもいいかなーって思ってるんだけど」
「はっはっはー! むしろ両宗教の架け橋にでもなっちゃえば良いんじゃないですか?」
香苗さん、反応するとは思ったけど神谷さんの前では止めときません? 宗教間の揉め事な予感に、冷や汗をおかきになってますよあちら様。
そしてエリスさんと葵さんはとんでもないこと言わんでください! 初代聖女、聖女にとっての聖女たる方が救世の光の使徒だなんて大変なことになるでしょう!
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