首都圏チームの暴走聖女、その名もシャルロット・モリガナ
事件解決における諸々の感謝をありがたく頂戴しつつも会議は始まった。倶楽部壊滅による余波と、今後についてどう動くかというところについてが主な議題だ。
ちなみに捕らえた幹部陣は今のところ、全員大人しくしているとのことだった。まあ、先に捕まった翠川や青樹さんはともかく、火野と鬼島は事実上非能力者に戻っているからね。
特に火野は高齢というのもあり、体力的な面での衰えがかなりのものなのだとか。
レベルを上げてむりやり体を動かしていたようなものだろうし、そうもなるよなあ。
「取り調べは本日、この会議が終わってから我々各組織のトップとエリス、葵立ち会いの下に行われる。そこから引き出された情報の如何をもって、我々の次の方針も定まる形になるな」
「方針……つまりは倶楽部と協力関係にあった二勢力、サークルとダンジョン聖教過激派にどう相対するか、という話です」
「追跡して関係者や各拠点を制圧するのは定まっていますが、それをするにしてもまずは情報が必要ですからね」
ヴァール、新川さん、郷田さんと続いて今後、対倶楽部において同盟を結んだ各組織の方針が示される。
当然ながら次のターゲットはサークルとダンジョン聖教過激派らしい。
前者は倶楽部が保有していたスレイブコアの元となったダンジョンコアの出処であるし、過激派については倶楽部からスレイブモンスターを買い取る形で資金援助をしていた、どちらも真っ黒な連中だからね。
ダンジョン聖教は先々代の神谷さん、厳粛な面持ちで話す。
「ダンジョン聖教過激派については、すでに当代聖女シャルロット・モリガナが粛清のために動いております。かの聖女の名の下に過激派構成員は全員破門の上、警察庁能力者犯罪警察局と連携を取り捜査に協力しています」
「同時にサークルへの対応につきましても能力者犯罪捜査官であるアンジェリーナ・フランソワ氏、シェン・ランレイ氏と連携して行い、首都圏内ですでに何度も交戦した末に幹部を数名、捕縛できています」
「倶楽部拠点制圧作戦の時にも、関東のほうで乱入してきてましたねアンジェさん達……」
すでにサークルにも過激派にも足がついていて、衝突も何度か起きているみたいだ。この国の首都圏もなんだか物騒だなあ。
そしてアンジェさん、ランレイさんといえば直近で言えばやはり、青樹さんを捕らえた制圧作戦の時の動きが印象深い。
倶楽部の関東拠点にサークルの一部構成員が合流していたそうで、それを追ってアンジェさん達が殴り込んでいたそうなのだ。
そしてその殴り込みってのがタイミング的に、制圧作戦とドンピシャ被って事実上、彼女達能力者犯罪捜査官メンバーが作戦に乱入して暴れ倒す形になったんだとか。
ダンジョン聖教の当代聖女シャルロット・モリガナさん率いるダンジョン聖教騎士団と一緒に行動していたあたり、過激派連中もそこにいたのかもしれない。
いずれにしても関東拠点がまさかの、本命であった近畿支部をも上回る大乱戦の様相を呈したのに一枚噛んでしまっていたのは事実だ。マリーさんが、ため息混じりに苦笑した。
「ファファファ〜まったくそそっかしい孫娘さね。電話越しにいやーやっちゃったわ〜とか笑いながら謝ってたけど、まったく誰に似たんだろうかねえ、あのお気楽さときたら」
「ハッハッハー、それこそマリーじゃないかなあ。君よりマシですらあると思うよ」
「祖母のかつての狼藉に比べればまだまだ、可愛らしいものだろう」
「先生のお孫さんらしい豪放磊落さかと」
「年配の探査者の方からたまに耳にしますが、若い頃のマリアベール様と本当に瓜二つだそうですね、ミス・アンジェリーナは」
「……………………ファファファ〜」
これはひどい、まさかのマリーさん自身へのブーメランである。話を聞くに若い頃のマリーさん、アンジェさんよりよっぽどやらかしてたみたいだ。
以前エリスさんをして狂犬とまで言わしめていて怖ぁ……何もそこまでって思ったもんだけど、上司から先輩から弟子から果ては孫弟子に至るまで反論されているのを見るにこれマジなやつじゃん、怖ぁ……
神谷さんがクスクス笑ってそのやり取りを見る。けれど次の瞬間、また申しわけなさそうに表情を歪め、頭を下げた。
どこか言いにくそうに、けれど言う。
「対サークル実働部隊の皆さまが作戦に乱入したことにつきましては……事情を詳しく調べたところ、原因が当方にあることがすでに判明しております。サークル担当の捜査官チームには、本質的な責はありませんよ」
「え……と。それってどういう?」
「捜査官のお二人と同盟関係にあった当代聖女、シャルロット様が騎士団を率いて殴り込むのを抑えようとして結果的に巻き込まれたと。他ならぬシャルロット様が直接、白状されました」
「えぇ……?」
まさかの真実。暴発したのはダンジョン聖教のほうだったのか。
シャルロット・モリガナさん……アンジェさん達と協力関係にあったのもビックリだけど、そのパートナーを完全に無視して独断専行で兵を率いた挙げ句、すべてを巻き込んで乱入したのか。
「"そのような作戦はそちらで勝手にやればよろしい。私は私で神敵を討ち、サークルおよび過激派の不心得者共を粛清するために動きます"と。そのような言い分で猪突猛進されたようです。すでに関係各所に謝罪はしておりますが……改めて、この場にいる各組織の代表方には謝罪を。混乱を招き、申しわけありませんでした」
「公的な謝罪はされているため、後は組織単位での話し合いになる。個人間の問題としては捉えないが……苛烈だな、当代の聖女は」
「先代のアンドヴァリが育てあげたのですが、どうにも視野が狭く。能力は初代様を除き歴代最高と言っていい天才なのですが、やはりまだ、子供なのです」
「ハッハッハー、神谷くんにそこまで言わせるってすごいね、シャルロットくんとやらは」
5代目聖女の頭痛の種らしい7代目聖女のありように、初代聖女ことエリスさんが楽しそうに笑って言った。
天才だけど視野が狭くて暴走しがちって、怖いなあ……それに先代聖女っていったら過激派の首魁って話だし。そんな人に育てられたのか、シャルロットさん。
話からしてまだ若いみたいだけど、どんな人がちょっぴり気になるよ。
ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いしますー
【お知らせ】
「攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」のコミカライズが配信されております!
pash-up!
( https://pash-up.jp/content/00001924 )
様にて閲覧いただけますー
能勢ナツキ先生の美しく、可愛らしく、そしてカッコよくて素敵な絵柄で彩られるコミカライズ版「スキルがポエミー」!
漫画媒体ならではの表現や人物達の活き活きとした動き、表情! 特にコミカライズ版山形くん略してコミ形くんとコミカライズ版御堂さん略してコミ堂さんのやり取りは必見です!
加えて書籍版1巻、2巻も好評発売中です!
よろしくお願いしますー!




