同世代にとっては迷惑な男!シャイニング山形ッ!
いつも通りの全探組のビルに到着し、俺とリーベはそのままエレベータへと向かった。
目指すは最上階である15階、県本部長の広瀬さんが待つフロアだ。仲間達もみんなそこに集まって、話し合いをする流れになっていた。
すでにメンバーの大半が揃っているみたいで、最上階にはオペレータの気配が多く感じ取れる。
俺達が最後だったりしたらちょっと嫌だなーとか思いながらも、エレベータに乗り最上階へと向かう。
「そういえば公平さん、知ってます? ここのビルの4階から14階、S級探査者が抜けて空地になるらしいですよー?」
「へぇ? いや知らなかっ……えぇ!? マジで!?」
「マジですー」
驚きの新情報をいきなり聞かされて思わず叫ぶ。4階から14階っていったらあなた、泣く子も黙る日本のS級探査者達の専用階層じゃないですか。
国内でも10人しかいない──今度香苗さんも加わるから11人か──S級探査者は、それぞれ各都道府県の全探組施設内に個人用の事務所を構えている。
ここみたいなビルの、1階層をまるごと与えられているというすげーリッチなことになっているのだ。
俺もいつかはそんな風に〜、なんて考える気も起きないくらいのスケールだよね、各都道府県に別荘があるようなものなんだし。
そんな豪勢極まりないものがここのビルにもあったわけなんだけど、どうしたことか空き地になるのか? なんで?
理由を問うたところ、リーベはニッコリ笑って応えてくれた。
「ミッチーが11人目のS級になるじゃないですかー。それをきっかけに全探組の施設内でなく、専用の高層ビルを建ててS級探査者が集う拠点にしようってことに、なったそうですよー」
「各都道府県に作るの、それ? ……景気のいい話だなあ」
たしかに香苗さんがS級になった以上、慣例で言えば全探組のビル内にもう1階、事務所階層がないと不公平になっちゃいかねないのはある。
あの人はそんなこと気にしないだろうけど、周囲は騒ぐだろうからなあ。特にマスコミとか。
S級探査者は半ば人間国宝みたいなものだし、国や地方としても誰一人として下手な扱いをしたくはないだろうし。
そういう事情から、まさかの超高層ビルを建ててそこにS級探査者を突っ込めばいいじゃん! という発想になったのか。
各都道府県ごとにそんなものをおっ建てるとなるととんでもない金がかかるだろうけど、まあ業界ぐるみで金持ちな界隈だからね。
むしろビル建築にあたってあちこちにお金を出すことになるから、経済を回すことになって結果的にはみんなハッピーなのかもしれない。難しいことはあまり分からないけど、たんまり溜め込んでるだろうしね、探査者のみなさんは。
「聞いたところによれば地下は5階から地上高くは50階くらいまでのビルを、あちこちに立てる計画が出てきてるそうですよー。高所恐怖症気味な公平さんにはちょっとおつらいかもですねー」
「怖ぁ……たしかに怖ぁ……ていうか、S級の数に対して高層すぎやしないかそれ? なに、一人あたり5階層ぶち抜きで使うの?」
「取らぬ狸の皮算用、ってやつですねー。ミッチー世代は特に優秀な若手が多いから、今後もS級が増えていくに違いないってことで多目に見積もってるんですってー。こないだ探査に行った時、事情通のお友達が言ってましたー」
「えぇ……?」
いくらなんでも皮算用がすぎる。何をどうしたらS級の数が4倍になるかも……なんて計算になったんだ。10人排出するのだってまるまる100年かかってるのに。
そしてそうか、香苗さんの世代ら辺はそんなに優秀な人達揃いなんだなあ。思えばたしか、まとめて"御堂世代"とか呼ばれてるんだったか。同期の鈴山さんとか、A級の中でも腕の立つ人だったものな。
一人納得していると、リーベが不意にニンマリ笑った。
からかうような笑みだ。嫌な予感しかしない。
「それに加えてー……公平さん。あなたの存在が大きいんですよねー」
「俺ぇ? なんでぇ……?」
「天才・御堂香苗が崇拝する神童・シャイニング山形! 数多のS級探査者からすでに太鼓判を押されている彼やその前後にデビューした通称"シャイニング世代"は近い将来、必ずS級に至る探査者が複数人いるはずだ! ……ですって。これは友達の受け売りですけどー、全探組やWSOの偉い人達もそんなこと考えてるみたいですよー」
「怖ぁ……」
俺を基準に同世代の人達を考えないであげてほしい、マジで。自分で言うのもなんだけどイレギュラーっていうか、厳密に言うとオペレータですらない身の上なんですけど。
そしてなんで"シャイニング世代"なんだよ、せめて"山形世代"でしょ!?
期待が重すぎて泣けてくる。これ、同期の人達からすれば堪ったものじゃないのでは?
何かの機会で同世代の探査者同士顔を合わせた時、ものすごい嫌味や皮肉を言われそうだ怖ぁ……
「なんでそんなことに……」
「まー春からこっち、公平さんほど目立ってる探査者もいませんしねー。ミッチーを抑えて堂々トップのシャイニングぶりですよー。よっ、日本一!」
「目立ちたくて目立ってるんじゃないんですけど!」
やはり光るのがアレか、アレなのか。
なんだってワールドプロセッサは俺にチョウチンアンコウになれと囁いてきたのか……今さらながら文句の一つも言いたくなったよ。
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