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倶楽部幹部・鬼島の終焉

 反射的なフルパワー、からのアッパーに近い軌道でのパンチ。極限倍率10万倍の俺が放つ攻撃の威力は、あの邪悪なる思念の本体でさえも追い詰めた桁違いのものだ。

 そんなものを受けた以上、どんなものであれ現世に存在する物質がただで済むはずもない。

 

「《あまねく命の明日のために》!」

 

 咄嗟のパンチを受けた、眼前に迫る壁が即座に消滅した。同時にスキルを発動したことで、突き抜けた拳から光が放たれる。アニメでよくあるものすごーく太いビームみたいに触れたものすべてをぶち抜いて、はるかな蒼穹へと突き抜けていったのだ。

 これあれだな、思わず全力でぶっ放したし普通に宇宙の果てまで行くビームだわ。軌道上に何かしら有名な星がないことを祈る──あったらその時点で天体学に甚大なご迷惑がかかってしまうからね。

 

「──ぐええええぎゃああああああああっ!?」

 

 うっかり地表に向けて放たなくてよかったと内心、めちゃくちゃ安堵していると目の前の、ぽっかり空いた壁が蠢いた。

 苦痛? らしき叫び声をあげている。ていうかそもそもなんだコレ、たぶんバグモンスターだとは思うんだけど戻ってきた途端過ぎて理解が追いつかない。

 

「えっと、火野か? これ」

 

 鬼島を掴んだまま、とりあえず空中へ飛び立ちバグモンスターらしき影から距離を置く。

 離れてナニモノかの全貌を観察すれば、それはたしかに推測通りバグモンスターだ……背中から俺のほうに迫っていたから最初、何がなんだか判別できなかったんだな。

 

 背中から胴体にかけて、俺の攻撃によって大きな風穴が空いている。回り込んで前面部を見れば、別の攻撃によってすでに著しく焼けたりもげたり抉れたりしていた。

 察するにサウダーデさんの肉弾戦とベナウィさんの破壊光線によるものだな。傷口が蠢いて徐々に塞がれようとしているあたり、俺が攻撃する直前か同じタイミングで攻撃がなされたと見ていい。

 

 つまりは意図せずして挟み打ちを仕掛けた形か。

 直近の範囲にいるオペレータの気配を読み取り、そちらへ向かう。

 バグモンスターから著しく距離を取った山の中、散々に戦闘が行われたからか木々が薙ぎ倒されて結果的に視界の開けた地点に、仲間達がいるのを俺は確認した。

 

「おーい! みんな、大丈夫ですかーっ!?」

「公平くん! 戻ってきてくださったのですね!!」

「公平さーん! おかえりなさいませー!!」

 

 すぐさま向かえば、あっちも気づいてくれて香苗さんとリーベが大きく手を振って迎えてくれる。

 ヴァール、サウダーデさん、ベナウィさんにエリスさん、葵さんにもちろんシャーリヒッタも。みんななんの問題もなく無事で、傷ひとつない様子だ。よかった。

 

 鬼島もろともみんなのところに降着する。

 未だ威圧を受けて身動きの取れない鬼島を一同の前に放り出すと、それを見てシャーリヒッタがすぐさま反応した。

 

『父様! ──やっぱ概念存在が絡んでたんだな。そいつ、妖怪だろ?』

「ああ、シャーリヒッタ。最後の倶楽部幹部・鬼島……正体は概念存在は妖怪の一種、赤鬼だ。すったもんだの末に動けなくして連れてきた」

「赤鬼……妖怪、か!? まさか、しかしモンスターの気配もない。本当にいたのか、そのようなモノが!」

「ジャパニーズ・オーガ……!!」

 

 赤鬼としての姿を晒している鬼島を見て、一同盛大に驚いている。まさかおとぎ話の鬼が実在して、しかも倶楽部幹部をしているなんてのは話だけでは実感も少なかったんだろう。

 でもまあ、この異様な巨躯に真紅の肌。恐ろしい顔つきと牙、まさにこれこそ鬼です! って感じのドストレートな風貌を目の当たりにすれば嫌でも納得するしかない。

 ヴァールが冷静に《鎖法》で鬼島を拘束しながら、俺に尋ねてきた。

 

「あなたの威圧で拘束しているのか。よもや本体か?」

「ああ、けどすぐに人間体になる。俺と妖怪達の間で交わした誓いをこいつは、現在進行形で破っているからな。弱体化して人間同然になるぞ……ほら、言ってたらすぐだ」

「ぐ、ああぁ……っ!?」

 

 バグモンスターのこともあるからいろいろ省いて説明する。とりあえずこの場は、ヴァールという探査者に絡まれたことで鬼島が誓いを破ったと判断され、弱体化するのが確定したということだけ端的に言っとけばいいだろう。

 実際言うやいなや、鬼島が呻き出した。概念存在にとり誓いとは、権能にも匹敵する存在をかけた契約。それを破れば当然ペナルティがある。

 

 概念存在として、致命的なまでの弱体化というペナルティがな。

 

「ち、力が、魂が……俺の、俺の存在が、弱まっていく……っ!?」

 

 全身から煙をあげて、赤鬼が権能を失い魂を貶めていく。それに伴い姿も元の、ラッパー姿に戻っていく。

 魂が概念存在としての形を保てなくなり、より小さな規格へとダウングレードしたのだ。これにより人間体、それも本当に人間同然の姿が本体として固定化されたわけだな。

 

「おのれ、おの、れ、やま、がた……こう、へ」

「概念存在でなくなるお前は、せめて人として罪を償ってくれ」

「やまがた、こうへい…………っ!」

 

 恨み節さえ、見る影もなく弱々しい。

 ひどく憔悴した状態で、それでも俺の名を呼び……

 

 概念存在は赤鬼であった者、倶楽部幹部・鬼島は意識を失い気絶した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 無名な星なら良いのか? 恒星が消えれば周囲の惑星も破滅する。 生命の存在しない惑星である事を祈る。
[一言] そしてまたシャイニング山形ビームが全国区を飛び越えて世界規模で観測されたのか。 というか皆平然とビームを受け入れている様子。
[一言] 800話おめでとうございます! この物語は2週目からが特に面白いですね いつも読ませてもらってます! ありがとうございます、これからもがんばってください!
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