彼岸よいつか、また会おう
遅れました!
すみません
倶楽部、サークルは元よりダンジョン聖教過激派が本格的にガッツリ絡んでいる。
なんなら三組織がグルになって何やら一つの目的に向かって邁進していたのだとか、聞きたくもない悪の連携についてバッチリ聞いてしまった。
そこに乗じて手を貸す概念存在も概念存在なんだけど、そもそも何をやっているんだ人間さんって感じがしなくもない。
織田もこれには呆れ返った様子で、肩をすくめて苦笑いしているのがなんとも言えない光景だ。
「いやはや、中々大規模な事業ですねえ。人間と概念存在、現世と概念領域の共同作業ですか。ははは、いつの間にそこまで仲良くなったのか」
「そもそもが委員会の意向が根底にあるんだろうけど、まさかここまで面倒なことになっているなんて……」
「私も永らく神をやっていて、あまつさえ叡智の極限にさえ触れたことのある身ではありますが……やはり世界は奥深い」
「これを奥深いとは言いたくないなあ」
どこぞかの最高神であろう織田にとっても、さすがにここまで現世のワルと概念領域のワルがスクラム組んでるとは思っていなかったらしい。どこか感心した様子で唸っている。
大ダンジョン時代以前にもいくらかの期間中、ヒトとカミの距離が近しかった頃はあったけどこれはそんなレベルをぶっちぎっている。完全に提携して一つの目標に向かって邁進してるじゃないか、邪悪な青春すぎるだろ。
ただ、赤鬼の認識から言うと概念存在側はあくまでもオペレータの支配、現世社会の掌握がメインなのに対し、現世の委員会側はまた別の何かをメインターゲットにして画策してるみたいだ。
それがなんなのか、というところが今後の焦点になってくるかな……もう明らかにサークルだのダンジョン聖教過激派だのとも一悶着しなきゃダメそうだしね、こうなると。
どっと疲れが滲み出てきた。深いため息をしてから、俺は胡乱に赤鬼を一瞥して織田へと告げる。
「やれやれ……とりあえず鬼島を連れて退散するよ、織田。加勢ありがとう、感謝してる」
「必要のない横入りだったかもしれませんがね。ああ、妖怪達にとっては避け得ぬ破滅を避けられたという点で、大きく貸してやれたかもしれません。こちらこそ感謝すべきかもですね、山形公平」
「概念領域内の派閥争いはそっちで勝手にやっていてくれ。間違っても現世に波及させないでくれよ、これ以上の面倒事はゴメンなんだからな」
「もちろんですとも。ただでさえ混沌たる現世に、誰が好き好んで首を突っ込みましょうか」
苦笑いして答えてくる彼だけど、今回思いっきり首突っ込んできてるのは他ならぬ彼自身だ。どうも好奇心とかエンジョイ精神優先で動いてる気配があるし、そのうちまた会うことにもなりそうだな。
そうでなくともこの世の真実について知れば、愚痴をこぼしに来るくらいはするかもだし。まあそこについてはヒントを与えた者として甘んじて受けるけどね。
軽く伸びをして、俺は赤鬼の腕を掴む。
未だ威圧にて動けないこいつは、そのまま現世に戻れば即弱体化するだろう。今こうしている時点で探査者と関わらないという誓いが破られているのだし、概念存在としての弱体化は完全に既定事項だ。
それをこのモノ自身も分かっているのだろう。項垂れ、もはや命運尽きたとばかりに絶望している。
「……………………」
「弱体化っても死ぬまではいかないんだから、そう気を落とさずに。また鬼島という人間の皮を着て、今度は人間として現世で過ごすのも悪くないと思うぞ。まあ罪償いはしなきゃならないんだけども」
「……オマエは、何者なんだ……」
「山形公平。探査者だよ」
ちょっとばかりスキルがポエミーなだけのな。すっかり意気消沈した赤鬼・鬼島をしっかり逃さないように拘束して、さあ現世に戻ろうか。
おそらくは火野と思しきバグモンスターのことも気になるしね。S級やそれに準ずる実力者が大勢いるわけだし、さすがに苦戦してるとも思わないけど……万一があってはいけないし、一応戦闘するつもりで心構えはしておこうか。
「それじゃあ現世に戻るよ。来るべきでない領域に来て長々居座って悪かったな」
「ほんの10分程度でしょうに、気にしませんよ。まあ、あまり頻繁に来られますとそこは困りますが」
「分かってる。用もないのに来ないよこんなところ」
人が生きたまま辿り着いてはいけない領域。けれど、いつか誰もが辿り着く領域。
──彼岸と此岸。ここに来ることは、それこそ山形公平の命が尽きるまでは二度とあるまい。どこか物寂しい風景を目に焼き付けながらも、俺はそう誓って転移を果たした。
ゲートを開き、鬼島ともどもくぐって元いた場所に帰還する。一瞬で変わる景色。
さーてさて、戦況はどうなってるかな? と。
「────うん?」
「グアアアアアアアアアアアアッ!!」
「へ!? なんだぁ!?」
現世に戻った途端、響く爆音。視界いっぱいに広がる、壁。
こちらに向かってすごいスピードで迫ってきている。え、潰される?
────咄嗟のフルパワー。
これは、絶対に負けてはならない戦いである。
「ちょちょちょちょちょちょ、ストーップゥ!!」
《風さえ吹かない荒野を行くよ》、《誰もが安らげる世界のために》、解放。
極限倍率10万倍の出力を引き出して、俺は壮絶な光を放ちつつ、迫る壁に反射的に攻撃を放った。
遅れたお詫びに本日12時に追加で更新します
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【お知らせ】
「攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」のコミカライズが4月13日(木)から配信されることになりました!
それに伴い予告編に相当する0話が専用ページにて配信されております!
pash-up!
( https://pash-up.jp/content/00001924 )
様にて閲覧いただけますー
能勢ナツキ先生の美しく、可愛らしく、そしてカッコよくて素敵な絵柄で彩られるコミカライズ版「スキルがポエミー」!
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上記の通り第一話が4月13日(木)より配信され、第二話が4月27日(木)に配信されます。
以後は毎月第二、第四木曜日にそれぞれ更新となりますので、皆様なにとぞ楽しんでいただければと思います!
加えて書籍版1巻、2巻も好評発売中です!
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