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概念存在の理由、3組織の目的

 現れた大狼。蒼銀の毛並みが美しく、それ以上に真っ赤な瞳、大きい牙が恐ろしいソレは、織田言うところの身内であるらしかった。

 この期に及んで俺への敵意を隠そうともしなかった、赤鬼の鬼島でさえこの狼の前では口を噤んで息を殺して気配を潜めている。妖怪では決して太刀打ちできない神格、恐るべき魂の圧から少しでも身を護ろうと必死なのだ。

 そんな彼を一瞥してから、織田は俺に向き直って言った。

 

「本当はそれこそ、星一つに相当するほど大きいのですがね。私のサイズに合わせてずいぶん調整してくれたようです。頼りになる甥御ですよ」

「甥?」

「関係性上の話です。突き詰めるとむしろ、因縁ですらある子なのですが……はるか昔の話ですからね。今はそれなりに仲良くやらせてもらっています」

 

 織田がどこか、苦笑いのように顔を歪めると大狼がまた、吠えた。聞くものすべてを凍りつかせるような、叫びそのものに権能が篭った遠吠え。

 神話についてはあまり詳しくないんだけど、何やらややこしい関係にあるみたいだ、このおじさんと甥っ子さんとやらは。まあ、俺に関わる話でなければそこはなんだっていいんだけどね、と。

 

 蒼銀の大狼はさておくにせよ、今は話の続きが聞きたい。

 織田を見れば彼も頷き、続けて言うのだった。

 

「今回、倶楽部やサークルに関与している概念存在の一団については、一言で表すと自分達の権威を護り確保するために参加しているものと思われます」

「権威……探査者の存在で現世と概念領域のバランスが崩れたから、その是正のためってことか?」

「言ってしまうとそうなります。よくお気づきになりましたね」

「あなたやぬらりひょんがヒントをくれたからだよ。俺自身、言われるまでその辺のパワーバランスについては一切気にしていなかった。気にする余裕がこれまで、なかったとも言うけど」

 

 探る目つきで俺を見る、織田。赤鬼も、憎悪と猜疑に塗れた目をこちらに向けている。

 俺が何者かは相変わらず気になるか、そりゃそうだよな。

 

 本来であれば極めて重大事項であるはずの、現世と概念領域のパワーバランス崩壊。

 世界の有り様をまるごとひっくり返しかねない事態にあって、明らかに何かしら絡んでいるのに気にも留めない俺のスタンスは、彼らにとってはさぞや異様なものに映っているのだろう。

 とはいえ、本当に気にする余裕も理由もなかったしな。赤鬼はともかく織田については、もうじきその辺にも思い至るだろうからご理解いただきたいもんだ。

 

「で、少なくとも妖怪達については、パワーバランスの是正とそのための調査のために鬼島、お前を介入させたというわけか」

「グッ……そう、だ。探査者、能力者と呼ばれる特異な人間どもを調べ、場合によっては現世社会ごと手駒にして支配する。そのために委員会に接触し、俺は倶楽部を創設した。委員会メンバーだった、火野と共にな!」

「…………あの爺さん、出向役員だったのか」

 

 まあ、考えてみれば78年前、火野は委員会の下でモンスターハザードを起こしていたって話だからな。今に至るまで同組織に所属していてもおかしくはないのか。

 そして鬼島という存在を得て、やつは倶楽部を創設した。となると、今度は鬼島の……いや委員会の目的が気になるな。

 

 概念存在側の理由はもはや概ね、判明している。

 探査者という、本来想定していた人間のスペックを遥かに超えて神々さえ凌ぐ力を手にし始めている彼らの存在が、妖怪や悪魔達に強い危機感を抱かせたのだろう。

 

 かつての、大ダンジョン時代以前のバランスに戻したい。それができずとも、せめて正体不明の能力者達をどうにか制御支配するだけの手札を仕入れたい。そんなところかな。

 だから倶楽部に手を貸して、スレイブコアの精製やスレイブモンスター、バグモンスターを発生させるに至った。すべては現世社会を混乱に陥れ、探査者社会の力を削ぐために。あるいは自分達の力を、蓄えるために。

 

 サークルに関与している悪魔連中もそんな感じなのかもしれない。ある意味率直な動機で、もっとややこしくて悪辣なものかもしれないと身構えていた分ちょっぴりホッとするほどだ。

 だが、だからこそ彼らの介入に応じた側──委員会の動機が気になるのだ。

 尋ねたところ、赤鬼はしかし否定で答えてきた。

 

「委員会については、俺も、おそらくは悪魔側も知らないでいる……恐らくは別口の概念存在が関与しているくらいまでしか、分からない」

「目的とか、目指す地点についても聞かされてないのか? ただの一つも?」

「最終的な到達地点については、知らぬ…………興味もない! だが強いて言えば倶楽部、サークル、そしてダンジョン聖教過激派の3つが目指すそれぞれの目的が、ある一点で交わることになることだけ、は……! っおのれェェェッ、抗うこともできぬこの権能ッ! キサマ本当に何者だァァァッ!!」

「……過激派まで絡んでいるのか」

 

 さっきから何もかもを強制的に白状させられて、怒り心頭らしい赤鬼だがそこはスルー。浮かび上がってきた三者の交点とやらに、俺は内心でため息をついた。

 ガッツリ絡んでんじゃねーか、ダンジョン聖教過激派!

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いしますー


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「攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」のコミカライズが4月13日(木)から配信されることになりました!

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 能勢ナツキ先生の美しく、可愛らしく、そしてカッコよくて素敵な絵柄で彩られるコミカライズ版「スキルがポエミー」!

 漫画媒体ならではの表現や人物達の活き活きとした動き、表情! 特にコミカライズ版山形くん略してコミ形くんとコミカライズ版御堂さん略してコミ堂さんのやり取りは必見です!

 

 上記の通り第一話が4月13日(木)より配信され、第二話が4月27日(木)に配信されます。

 以後は毎月第二、第四木曜日にそれぞれ更新となりますので、皆様なにとぞ楽しんでいただければと思います!


 加えて書籍版1巻、2巻も好評発売中です!

 よろしくお願いしますー!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 妖怪側のトップは「ぬらりひょん」だったけど、悪魔側のトップって…よく「魔王」と称される、「サ」がつく「あのお方」なんでしょうか? [一言] …とはいえ、「魔王」って「悪魔の王」でもある…
[一言] ・・・なるほど。 つまり現人神である『シャイニング山形』を崇める御堂『教皇』様たち信者がダンジョン聖教過激派を駆逐するほどに増えていき、過激派以外のダンジョン聖教と並び立つ『二大宗教』となっ…
[一言] 宗教には宗教ぶつけるのが一番…笑
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