詰んだ赤鬼
あとがきにて大切なお知らせがあります
ぜひとも最後までご覧くださいませー
まるで蜘蛛の子を散らすように退散していった妖怪達。やってくるのもあっという間だったけど、去っていくのもあっという間な連中だったな。
途端に静寂を取り戻す河原、遠く果てのない三途の川が広がる光景。ああ、とはいえ鬼島だけは未だこの場にいる。
権能は解除したけれど、そもそも俺の威圧をモロに受けているから動けないのだ。
「ぐ、うッ──!? くそ、動け、ねえっ!!」
「この鬼だけは、現世で明確に動き回ってたから誓い一つ程度では済ませられないんだよなあ。人の皮を被り倶楽部幹部として活動していた点については、俺でも概念存在でもなく現世の社会秩序によって裁かれなければならないように思う。どう考える?」
「一理ありますね。とはいえこのモノも概念存在なれば、現世の処罰などなんら堪えるものではないでしょうが」
未だもがく鬼島を見下ろしつぶやく俺に、織田が澄まし顔で答えた。たしかに、腐っても赤鬼なんて大物妖怪なんだから、人に与えるような罰ではなんの影響も与えられはしないだろう。
ただし、それは通常の場合ならの話だ。俺は織田の見解に反論した。
「さっきのぬらりひょんは妖怪すべてを代表して誓いを立てた。今後、探査者にまつわるあらゆる物事に関わらないという誓いだ。それを破れば概念存在たる妖怪の力は極限まで削られ、下手をすると人間よりも弱々しいモノに成り下がってしまう」
「…………ああ。探査者絡みの犯罪組織である倶楽部に関与していたことへの罪過を問うことで、必然的にこのモノに誓いを破らせるのですね。それにより弱体化すれば現世社会の刑罰も少しは堪えるでしょうし、概念存在としての報いを与えることにもつながる」
「加えて妖怪や、他に関与している連中への見せしめにもなるかもしれないしな。どこまで有効かは分からないけど」
「っ……!!」
今回、妖怪達すべてに今後一切の探査者への関与が禁じられた。だが鬼島だけはこれまでの行いから、倶楽部幹部としての罪を問われる形で探査者達と関係せざるを得ない。
そうなれば自動的に誓いの破却と見做され、概念存在としての権能を失うこととなるだろう。存在も相当に弱体化するし、必然的に司法による裁きもそれなりに贖いに足る負担となる。
現状、分かる範囲では唯一明確に現世でやらかしていたからこその袋小路。事実上、概念存在としてのこの赤鬼は詰んだのだ。
頭の回りはいいほうなのだろう、思い至って鬼島が俯いた。血の気が引いた様子だが、さすがに弁明も反論も聞いてやる気にはなれない。
アルマ同様、死なないだけマシってことで落とし所と捉えてほしいところだね。
『おいちょっと待てよ、こんな雑魚と一緒にするな! こいつ結局、ノコノコ現れては何もできずに君に返り討ちに遭って嵌められただけじゃないか! 一旦は君を殺せた僕と同一視するなよ!』
むしろ質が悪かった分お前のがよっぽどアレだろうが、俺を殺したことを自慢げに言うな馬鹿野郎!
脳内でアレな主張をかましたアルマさんにツッコむ。許せない度で言えばどっちもライン越えてるんだけど、やったことのエグさは比べるまでもなくこいつのほうがヤバい。そのくせちょくちょく開き直るんだから、ある意味とんでもないやつだよ本当。
頭を抱えたくなる心地でいる俺に、織田はふむと両手に土産袋を掲げながら顎に手を当て、やがてつぶやく。
こうしている間にもどんどん、向こう側から来るなんらかの気配は近づいてきている。おそらくこいつの身内なんだろうけど、さてどんなのが来るんだろうな。
かのモノがやってくるまでのわずかな時間、織田はやがて、紳士的な口調を崩さないままに答えてきた。
「見せしめになるかは微妙なところですねえ。何せ、確定で悪魔は関与していますから」
「やっぱりか。倶楽部にも手を貸してたんだろうかね……鬼島、《答えろ》」
「っ! ……いいや、アイツラとは分業だ。妖怪が倶楽部を、悪魔がサークルを支援していた……!!」
織田による暴露を、鬼島に確認させる形で真偽を判別していく。やはりと言うべきか、妖怪以外のカテゴリーの概念存在達も絡んでいたか。
悪魔。
字の如く悪しき魔なわけだけど、人々の認識を受けて神に成ったり悪魔に堕したりして、この手の存在はとかく立場が行ったり来たりするから必ずしも邪悪であるとも限らない。
神々にも善悪それぞれあるように、悪魔にも良いやつ悪いやつがいるってだけの話だ。人間同様にね。
「我々神々の見立てでもそこは間違いないかと。上部組織である委員会となると未だ、把握はしかねていますがね」
「サークルにもちょっかいかけてたのか。概念存在……本当、何がしたいんだ? 悪魔も妖怪も」
先程ぬらりひょんや織田が説明してくれたが、大ダンジョン時代の中で強力になっていく人間達を警戒しての、今回の介入のようなのだが……
肝心要と言っていい委員会については、織田も知らないらしかった。首を左右に振り、彼岸のはるか遠くを見る。
「ああ、来ました。私の出迎えです」
「──ワォオオオオオオン!!」
すさまじいスピードで、まるでちょっとした山のような大きさの犬、いやさ狼が駆け抜けてきた。
三途の川の水面を、沈むことさえなく軽快に走り、凶悪なまでの威圧感をもって俺達の眼前に姿を表したのだ。
【お知らせ】
「攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」のコミカライズが4月13日(木)から配信されることになりました!
それに伴い予告編に相当する0話が本日より専用ページにて配信されております!
pash-up!
( https://pash-up.jp/content/00001924 )
様にて閲覧いただけますー
能勢ナツキ先生の美しく、可愛らしく、そしてカッコよくて素敵な絵柄で彩られるコミカライズ版「スキルがポエミー」!
漫画媒体ならではの表現や人物達の活き活きとした動き、表情! 特にコミカライズ版山形くん略してコミ形くんとコミカライズ版御堂さん略してコミ堂さんのやり取りは必見です!
上記の通り第一話が4月13日(木)より配信され、第二話が4月27日(木)に配信されます。
以後は毎月第二、第四木曜日にそれぞれ更新となりますので、皆様なにとぞ楽しんでいただければと思います!
よろしくお願いしますー!
Web版のほうも引き続き毎日更新のほう、続けてまいりますのでそちらも併せてご覧くださいませ!
「攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」、今後ともよろしくお願いいたします!
以上! てんたくろーでしたー!




