コミュ力つよつよ陽キャが二人……来るぞ山形!!
地元のローカル電鉄で数駅を渡ってから徒歩、10分ほど。マリーさん達が宿泊しているホテルは湖岸が一望できるところにある。
えっちらおっちら電車を使って歩いて、辿り着いたそこにはもう香苗さん達が勢揃いしている。なんならWSOの職員さん達やおまわりさん方も結構いて、いかにも何かある集団ですよと言わんばかりの雰囲気を醸し出している。
「大仰だなあ」
「物々しいですねー」
「ま、決戦ですしね正真正銘。気合の入り方は過去一じゃないですかね?」
リーベや葵さんも、あまりに緊迫した雰囲気の集合場所に若干引き気味だ。いかついおじさん達が集まって、ものすごーい怖くて険しい顔してるんだもんよ。
そしてその中をこれからいたいけな俺は、メインメンバーみたいな面して割って入らなきゃいけないのだ怖ぁ……さすがに帰るわけにもいかないし、ちょっと内心で気合を入れつつみんなの元へ向かう。
彼ら彼女らも俺達に気づき、声をかけてきた。
「公平くん! リーベちゃん、葵さんもこんにちわ、今日はよろしくお願いします」
「ハッハッハー、時間厳守で何よりだよ」
「どーもです香苗さん、エリスさん」
香苗さん、エリスさんを筆頭にヴァール、マリーさん、サウダーデさん、ベナウィさんと昨日、打ち合わせしたメンバーがこれで勢揃いだ。
ここに加えて俺のスキルで喚び出す精霊知能、シャーリヒッタを加えてのメンバーで隠し拠点を攻略するわけだね。
リーベが俺の前に出て、元気いっぱいにお辞儀して名乗りを上げた。
「お久しぶりの方はお久しぶりですー、初めましての方は初めましてー! 公平さんのパートナー、いつもニコニコ明るく元気なリーベちゃんでーっす! かわいいかわいいリーベちゃんって呼んでくださいー!」
思えばこの子、エリスさんや葵さん、サウダーデさんとはこれが初対面なんだよな。こと倶楽部案件については俺がいない間の家の守りを担ってもらっていたから、活動範囲がまったく重ならないんだ。
いいとこ葵さんがニアミスしてたってくらいだな。それでもリーベのことはみんな、話に聞いていたからなんの問題もなくスムーズに受け入れてもらってるみたいだった。
「リーベ殿……話に聞いた、もうお一人の精霊知能か。お会いできて光栄だ、俺はサウダーデ・風間。此度はよろしく頼みます」
「マリーおばあちゃんのお弟子さんで、ベナウィさんのお師匠さんですねー。ご一緒できること、光栄に思いますー。公平さんともども、探査者としてはまだまだ未熟者ですがどうぞよろしくお願いしますー」
「未熟だなどととんでもない。世界のために戦い続けてきた偉大なる先人として頼りにさせてもらうよ、リーベ殿」
サウダーデさんの威風堂々たる姿に、リーベも比較的真面目モードで答える。道中、事前に彼について軽く説明したんだけど、本当に真面目な人だってところになるほどと頷いていたからね。
無論リーベだってしっかりした子だし、サウダーデさんもそんなすぐにお怒りになる方でないと知ってはいるんだけれど、それはそれとして互いに齟齬のないよう、何より探査者として大先輩にあたる方だし粗相のないよう気をつけてくれ、とは言っておいたのだ。
そうしたこともあって、とても丁寧な会話だ。サウダーデさんもリーベを見かけどおりでないと理解してくださっていているし、これなら問題なく連携が取れそうでよかった。
次いでエリスさんが、リーベに手を差し出す。
「ハッハッハー、初めましてかわいいかわいいリーベちゃん。たのしいたのしいエリス・モリガナさんだよー。よろしくねー」
「おおー、あなたが噂の葵ちゃんのお師匠さんですかー! よろしくお願いしますー!」
「ハッハッハー。え、ちゃん付けって。葵ともうそんなに打ち解けてるの? マジで? 早すぎない?」
「分かる〜」
驚くエリスさんに同意する俺。ここに来るまでの道中、僅かな時間ですっかり仲良くなってしまった葵さんとリーベのコミュ力があまりにチートすぎて、ちょっと僕らには理解できない。
真の陽キャって、出会って1分も経たずにハイタッチしたりあだ名で呼び合ったりできる生き物なんだなあ。感心というか、紛れもない畏怖を抱くよ陰キャとしましては。
エリスさんと二人、眩しすぎる太陽を見るようにリーベと葵さんを見る。よく分からなさそうにしながらも彼女達は、相変わらず仲良さげに語らったりしている。
一頻り話し終えたあたりでヴァールが、俺達みんなに話しかけてきた。
「そろそろ時間だ。全員、マイクロバスに乗り込んでくれ。現地に設置した対策本部に向かい、そこから山中にあると思われる隠し拠点へと向かう。ここからはスピード勝負だ、そのつもりでな」
「分かった。えと、シャーリヒッタはどのタイミングで喚び出せばいい?」
「制圧チームである我々が、山に入ってからでいい。あいつの存在はなるべく人目につかないほうがいいからな」
「半透明の幽霊みたいなもんだしな……了解」
すっかりまとめ役な彼女の言に従いつつ、マイクロバスへ乗り込む。広々した後部座席の、一番奥に俺を挟む形でリーベと香苗さんが座る。
改めて香苗さんが、俺に微笑んだ。
「よろしくお願いします公平くん、リーベちゃん……これが対倶楽部の正念場ですね」
「そうですね、香苗さん。今度こそ誰も取り逃さないよう、お互いベストを尽くしましょう」
「リーベちゃんも頑張りますよー!」
いよいよ待ち受ける戦いを前に、俺もリーベも探査者として力強く答える。
さあ、出発だ。一同を乗せたマイクロバスが、ホテルを出発して現地へと向かい始めた。
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