500年前から匂わせシャーリヒッタちゃん
昼食をリーベと二人、手早くながらも美味しく頂いて俺は、シャワーを浴びて改めて着替えた。まあ普通の私服だけど、神魔終焉結界は最初から発動しておく。いつ何が起きるかも分からないしね。
そうして12時前、しっかり準備して俺達はまた、外に出かける段取りとなったのだ。
「それじゃあいってきます。晩ごはん、間に合わないかもだしその時はなるべくメールとかするねー」
「いってきますー!」
「はいはーい。気をつけてね二人とも」
「いってらっしゃーい!」
母ちゃんと妹ちゃんに見送られて外へ出る。玄関まで、アイがついてきて名残惜しそうに鼻を擦り付けて鳴いていたのがかわいい。
ことを終えて帰ったらまた遊ぼうなーと言ったら嬉しそうにきゅうきゅう鳴いて、あたりを飛び回っていた。そうとなれば倶楽部の残り幹部達なんて、完膚なきまでにやっつけてまた、平和な日常に戻らないとな!
「よし、行くかリーベ!」
「はーい!」
そうして歩き出す。一応、葵さんも道すがら合流する手はずにはなっているから3人で集合場所へと向かうことになるね。
……言ってたら最寄りのコンビニ前、物々しい大槍を背負った葵さんを発見。さすがに目立つねフーロイータ、道行く人がえっ、えっ? みたいな顔して二度見していらっしゃる。
「あっ、山形くーん!」
「物々しいですねー」
俺に気づいて、両手を振って駆け寄ってくるわけだけどフーロイータの圧がすごい。リーベが思わず目を丸くするくらいにはこう、物騒な風貌でいらっしゃる。
とはいえ本人は至って明るい、いつもどおりの葵さんだ。俺たちと合流し、あまつさえ初対面のリーベとも早速挨拶を交わしていた。
「さっきぶりでーすはっはっはー! さー決戦ですよ決戦! ところでそちらの息も忘れるくらいの美少女の方は、一体?」
「! えへへー、見る目ありますね早瀬葵さんー! 初めまして公平さんのパートナーたる精霊知能、かわいいかわいいリーベちゃんですー! 今日はよろしくお願いしますー!」
「リーベちゃん! よろしくお願いしますねはっはっはー!!」
すごい。さすがコミュ力つよつよなリーベと葵さんだ、たちどころに打ち解けてハイタッチなんかしちゃってるよ。
言うまでもなく俺にはできない芸当だ。なんなら二人の陽キャオーラを至近距離で浴びたことで溶けてなくなってしまいそうな心地ですらある。塩をかけられたナメクジかな?
ともあれこれで3人揃った。一路、ホテルへと向かう。
葵さんによるとエリスさんや香苗さんも問題なく動いているようなので、ひとまず今の時点ではなんの問題もないってことになるな。
出鼻を挫かれることがなくてよかったと、ホッとしていると歩いているリーベがふと口を開いた。
「……にしてもシャーリヒッタの話は驚きですねー。まさか公平さんにドストレートに告白するなんて、さしものリーベちゃんもビックリですー」
「ん……あーたしかにな。あれはビックリしたよ」
「まさかのアイラブダディですもんねー」
道すがら、シャーリヒッタについてリーベが率直な驚きを見せる。この子にとっても同期だし、何より例のパパ大好き発言について何か思い当たる節がないか聞きたくてアレコレ話したわけだけど……
俺を好きなことそのものでなく、その気持ちをストレートに伝えてきたことに驚いたあたり、どうやらある程度は事情を知っているようだった。
困惑も露に、彼女は話し始めた。
「シャーリヒッタが前から──本当に昔から、コマンドプロンプトに対してどこか異様な執着を抱いているのは、薄々わかっていましたー」
「それは、本人が直接言ったりしたのか?」
「そのものズバリではないですけどー、あれ? って疑いを抱くには足るだけのニュアンスはちょくちょく、混ぜてた感じですねー。えーとたしかー……」
『ワールドプロセッサの補佐役か。オレには大役だな』
『シャーリヒッタならやれますよー、ガンバ、ガンバ!』
『ま、コマンドプロンプトが今はいないんだ、下手は打てねえさ……全部終わったら、褒めてくれるかなあ』
『?』
「──みたいなー、感じのこととか言ってましたねー」
「匂わせ怖ぁ……」
「健気ですねー」
リーベとシャーリヒッタの、本当に生まれたての頃だろう会話からすでにいろいろ匂わされている。モロバレじゃねーか!
他の精霊知能はマジで知らなかったみたいなので、つまるところシャーリヒッタは自分だけ初期の時点で私の存在に気づいた上、あえて黙っていて代役を務めてくれていたことになる。
ワールドプロセッサですら知ってたかどうか微妙な真実を、ずっと隠し切っていたのか。
「どうやって気づいた? 誰にも発生を気づかれなかったのは、間違いないはずなんだけど」
「それはー……本人に聞いてみないとわかりませんねー。今日、また喚ぶんですよね彼女? その時に聞いてみましょうよー」
「きっと愛の力ってやつですよ! 親への愛が、超常的な第六感を備えさせたんでしょうねはっはっはー!」
気楽に叫ぶ葵さん。愛の力ってすげー! と言えばいいのかも分からない。
シャーリヒッタに直接聞かないと、分からない領域だろうなあ。
ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー
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