滅びろ、この倶楽部!貴様らの壊滅を通じてみんなで楽しく祝勝会をしてやる!!
シャーリヒッタとの打ち合わせも終えて、最後の締めくくりとしてヴァールが口を開いた。
隠し拠点の発覚から概念存在を相手としての想定、からのシャーリヒッタ……結構濃ゆい感じの会議だったけど、それもこれで終わりということになるね。
「明朝までには改めて各人に連絡するが、おそらくは明日、この間の制圧作戦同様の流れで隠し拠点へと突入を行う。お前達は連絡を待ちつつ、ゆっくりと心身を休めておいてくれ」
「火野と鬼島と。あといるならスレイブモンスターもですね……こないだほど大規模にはならないと期待したいところですが、さてどうなりますやら」
エリスさんが肩をすくめる。残るは幹部二人だけではあるものの、先日の作戦時にはない懸念も今回、新たにあるにはあるからなんとも言えない。
言わずもがなだけどバグモンスターと概念存在達だ。前者にしろ後者にしろ、どうにかできるのが事実上俺しかいないってあたりがまた嫌らしい話ではある。
バグモンスターと概念存在が同時に出現した場合、バグモンスターのほうはひとまずシャーリヒッタに任せることになるかもなあ……申しわけないが、仮にそんな場面になったら俺は先に概念存在から処理する。
青樹さんの例を見るに、S級が何人も揃っている今のこのパーティーならば問題なく足止めできるだろうからだ。加えてシャーリヒッタもいれば、下手をすると普通に無力化まで持ち込めそうな気さえしている。
なんというか、頼もしい仲間が勢揃いで非常に助かるよね。全部一人で抱え込む、なんてのは明らかに悪手だって分かるくらい、素晴らしい能力の持ち主がこうして集まってるんだもの。
尊敬すべき探査者の先輩方を見回し、俺はひそやかに頷いた。そうしている間にもヴァールが続けて言う。
「それでは話し合いはこれにて終了とする。ワタシとマリアベールは制圧作戦の段取りのため、これより警察や全探組、ダンジョン聖教との打ち合わせに向かう。他の者は自由にしてくれ、ご苦労だった」
「やれやれ、これは結局、公平ちゃん達と一緒に市場に行くってのは難しいねえ。香苗ちゃん共々、明日には帰るんだろうし」
「あー……」
会議が終わったはいいものの、続けざまに仕事があるヴァールとマリーさんは大変だ。特にマリーさんは結局みんなで市場に行くことが叶わなさそうなので、少し残念そうだ。
言ってたもんなあ、こっちに来る直前。御堂本家の近くに市場があるからみんなで行こうって。それが蓋を開けてみればこのとおりで、結局倶楽部との戦いの事前事後に関係して動き回っているのが今のこの人達だからね。
とはいえ、何も全部諦めなくてもいい気はする。
俺は、明るくマリーさんに話しかけた。
「でしたらそうですね……今月中のどこか、倶楽部との決戦が終わった後に祝勝会的な感じで集まりましょうよ。みんなで、市場に行くんです。美味しいもの食べて、楽しくあちこち行きましょう」
「それはいいですね。私も、いろいろ一区切りつけばそういう宴をしてもいいのではと思っていました」
「ふむ? ……祝勝会はどの道したいから嬉しい申し出だけど。他の子達はどうだい、都合つくかねえ?」
乗り気の香苗さんとマリーさんだけど、他の人達がそうであるとも限らない。特にサウダーデさんは母方のご実家に帰省中だったと聞くし、倶楽部が完全に壊滅したとなったらまた、すぐに東北に戻られることだって考えられるしね。
だけど、そうした懸念に対してサウダーデさんは深い笑みを浮かべた。筋骨隆々の巨躯を折り目正しく正座したまま、堂々たる態度で師へと答えたのだ。
「俺で良ければぜひ、参加させていただきたい。悪辣なる者どもから人々を守り抜いた末の宴というのであれば、参加しないのはむしろ決まりが悪い。帰省も済ませていますし、今月中であるなら問題ありませんよ」
「あ、もちろん私も参加しますよ。家族も連れてきていいですかね、ジャパニーズ・市場で飲食というのは、是非妻や子達にも体験させてあげたいですから」
「そりゃもちろん、いいに決まってるよ。ね、公平ちゃん」
「はい! せっかくですからご家族さんにも、日本を楽しんでいってもらいたいですし」
ノリとしては邪悪なる思念との決戦後に行った、祝勝会のようなものかもしれない。いやまあ、あれに比べればさすがにもう超小規模だろうけど。
家族を連れてきたいと言うなら断る理由もないからね。ベナウィさんも今月末には母国に帰られるのだから、日本での思い出はたくさん作って欲しいところだし。
「ハッハッハー、私ももちろん参加するよー」
「はっはっはー! その頃には私達の護衛任務も、終わってるかもですしねー」
エリスさん、葵さんも当然とばかりに参加を表明する。
倶楽部との決戦後は、この人達も護衛の任を解かれてまた、別の任務に向かうんだろう。だったら壮行会も兼ねての会になるかもしれないなあ。
とにかく、これで概ね満場一致だ。
あとはヴァールなんだけど……事後処理とかで忙しいなら無理っぽいんだろうか? ちょっと寂しいけれど、仕方ないといえば仕方なくはあるよね。
と、考えていたら彼女はふむ、と頷いた。
「まあ、火野を逮捕し、鬼島の対処もできていればという前提にはなるが……ワタシやソフィアも参加させてもらおうか」
「おっ、本当か? 嬉しいよ、ヴァール」
「倶楽部には手を焼かされたからな。区切りをつける意味で、節目に宴をするというのもいいだろう」
意外にも乗り気な彼女。こうなれば問題なく祝勝会ができるな!
あとは倶楽部の隠し拠点を制圧し、おそらくそこにいると思われる幹部二人を捕まえるのみだ。
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