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生まれた時から愛してました。具体的には500年前から

 概念存在に対する、人間でもあるコマンドプロンプトこと俺のスタンスを表明して、改めてシャーリヒッタは納得したように笑った。

 どっちかって言うとサウダーデさんあたりに似合いそうな豪快な声をあげ、爆笑したのだ。

 

『ダハハハハハハッ!! そーかそーか、人間としてコマンドプロンプトとして狭間に立つか! アンタらしいなコマンドプロンプト、いやさ山形公平!!』

「お、おう……ど、どうも」

「リーベ嬢ちゃんやヴァールさんともまた違う、豪放磊落って感じだねえ彼女」

「なんといいますか、酒場にいそうなタイプですねえ。無論客側としてですが」

「えぇ……?」

 

 暗に居酒屋の酔っ払いみたいだと話すマリーさん、ベナウィさんに思わず呻く。

 なんてこった仮にも精霊知能がそんな、初対面の客にも躊躇なく絡んでいくタイプの酔いどれさん扱いをされてしまっているなんて。

 地味にヴァールが頭を抑えている。リーベがここにいたら一緒になって騒いでいた気がするし、そういう意味ではやはりヴァールだと相性悪そうなんだな。

 

「まったく、なぜこうもガサツなんだお前は……!」

『まあそう言うなって妹よ、お姉ちゃんにゃもうちょい素直になれよ、な?』

「ワタシが姉だ! そもそも姉妹ですらないが! もういいから帰れ貴様、話が進まん!」

『つうかリーベいないのリーベ? こないだ会ったけど話ししてえなあ〜』

「帰れと言っているのだ! 聞け!!」

 

 暖簾に腕押し糠に釘っていうのかな。ひたすら我が道を行くシャーリヒッタに、ヴァールの生真面目さはひたすら空振ってしまっているみたいだ。

 なんなら胡座かいて居座り決め込むつもりみたいだしな、シャーリヒッタ。エリスさんや葵さんにも話しかけて、困惑しつつも対応している彼女らと打ち解けだしているし。

 

『お前さんのことも知ってるぜ、エリス・モリガナ! バグスキル《不老》を、少なくとも悪用はしてねーみたいで何よりだぜ!』

「は、はあ、どうも……お、おそれ、いります……」

『んでもって早瀬葵! おめーさんのAMWだったか? すげーな、スキルを増幅させるなんざよ! どーなってんだ一体、いっぺん解体してみてほしいくれーだぜ!』

「はっはっはー! できるわけ無いでしょやだなー! 精霊知能ジョークですかそれ、もーシャーリヒッタさんたらー!」

『ダハハハハハハッ! それもそーだな!! わりーわりー!』

「怖ぁ……」

「なんでそう打ち解けてるのさ、葵……」

 

 訂正、俺級にコミュ力よわよわなエリスさんはともかく葵さんだったわ、ありえないくらい打ち解けてるの。

 エリスさんが隣に座る弟子を、化け物を見るかのような戦慄の視線を向けている。分かる。突然現れたオバケ相手になんでここまで適応できちゃってるんだこの人。

 

 香苗さんやマリーさんやサウダーデさん、ベナウィさんにも興味津々って感じの視線を向けているシャーリヒッタだが、ヴァールの言う通りそろそろお帰りいただいたほうがいい頃合いだ。

 打ち合わせの途中だし、引き継ぎも終わってるしね。何よりヴァールと水と油みたいだし、いらん口喧嘩を続けられても困るからね。

 というわけでシャーリヒッタに呼びかける。

 

「おーいシャーリヒッタ、用事も済んだし今日のところはそろそろ戻ってもらっていいかー?」

『んー? ……まあ、しゃーねーか。世間話する場でもないみてーだしな、ここ』

「スマン」

『いいってことさ、父様』

「またか!」

 

 あくまで俺をパパ扱いする気かこいつ! 言っとくがジョークでも認知とか言い出すんじゃないぞ、マジで人聞きが悪いからな!!

 

 俺の言葉を素直に聞き入れて、シャーリヒッタは立ち上がり半透明のまま、まさに透き通るような笑みを浮かべた。

 そして最後に俺たちを見回して、厳かに告げる。

 

『──我らが与えしバグスキルを悪用する者の処断、たしかに承った。精霊知能シャーリヒッタ、身命を賭してコマンドプロンプト以下、我が同胞、我らが寄り添う者達の力になることをここに誓おう』

「頼んだぞ、シャーリヒッタ」

『すべては拓かれし新たな時代の秩序のために。誰にも見通せぬまったく新しい世界を、我々は我々なりに生きていこう。そちらにおわす御方が、かくあれかしと望まれたように』

 

 そう言って、彼女はまっすぐに俺を見据えた。

 深い感情の、籠もった眼差し──親愛、敬慕、畏敬。およそ考えうるあらゆる好意を宿しているようにも思える、愛情の眼差し。

 面食らってにわかに目を見開く俺に、笑みを深めてシャーリヒッタは続ける。

 

『そして──また会おう、コマンドプロンプト。エンピレオにしてグレートファザー。愛しても愛しても愛し足りない、我が父よ』

「な──」

『他の精霊知能についてはいざ知らず、オレは生まれた時からずっと、あなたを父だと思っているよ。本気さすべて、何もかも。だから、またお会いしましょう────お父様』

「お、おい!?」

 

 言いたいことを全部言えた、みたいなスッキリした淡い笑顔を浮かべて。そして精霊知能シャーリヒッタはまばゆい光とともに消えてしまった。

 元のシステム領域へと帰ったのだ──去り際も特殊演出じゃねーか地味に。何? あいつだけなんで特別?

 いや、それより。

 

「……あいつ、マジで俺のこと父だと認識してるのか。生まれた時からずっと。マジかよ」

「シャーリヒッタ……そこまでの想いがあったのか? 500年も、誰にも悟られずにコマンドプロンプトへの、愛を……?」

 

 まさかの別れ際での衝撃の事実。

 シャーリヒッタは俺を、私をずっと父と認識して愛していた。自分は娘だと、想い続けていたというのだ。

ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー


【ご報告】

「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」2巻、発売中です!

書籍、電子書籍ともによろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[一言] 500年拗らせ娘……価値観も神話の方に近そうだしあらゆる好意の中に男女のも含まれてるなら山岸の情緒がさらにバグるww
[良い点] やはり娘……!認知チャンス……!!! ワープロさんと、養育費について話し合わないとですね
[一言] いやぁ、まさしくコマンドプロンプトの娘だな 一人でひっそりとスキルを練り続けたコマンドプロンプトの
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