探査者サーの姫
称号 世に向け己を放つ、大きなうねりの生まれる兆候
解説 遅かれ早かれ輝きの、眩ゆい光は暗がりの荒野に届く
効果 場所、環境を問わず半径1km以内のモンスターの位置を把握する
お次はこれだ。《世に向け己を放つ、大きなうねりの生まれる兆候》。
これもなあ……たしかきっかけは、香苗さんが作り、そして俺のダンジョン探査の様を動画にして配信している、救世主なんちゃら神話チャンネルとかいうのの話をしていたことだったはずだ。
いつぞやの出歯亀称号といい、この辺りからシステムさんの自重が一段階、外れている気がする。どうしたんだリーベ、何か心当たりあったりしないか?
『あなたの人となりを知って、安心してきてるんだと思いますよー? 何だかんだそれまでは、あなたを見定めるのに力を入れていた感じしましたし』
なにそれ、怖ぁ。
勝手にスキル与えといて見定めてくるのか。さすがに、モルモットじゃないんだからさぁ。
『それは……仰る通りですね。こちらの都合で強力なスキルを与えておいて、それに足る人かどうか見定めるなんて。公平さんからすれば、面白い話なわけありません』
消沈するリーベの声。いや……落ち込むなよ〜。
思うところはあるけど、必要なことなら仕方ないと思うことにするよ。神様みたいなのってそういう、人に試練を与えてくるところあるしね。傍迷惑なのは間違いないけど。
『……システムさんは、今はもう、あなたを深く信頼しています。それだけは信じていただけると嬉しいです。あなたを試すなんて真似、二度としないでしょうしさせません。リーベちゃんだってもう、あなたを信頼する、あなたの味方なんですから』
ありがとう、リーベ。まあ、気にしすぎないでよ。
俺にしかできないことがあるんなら、俺がやるのは当たり前なんだから。
「公平くん? どうしました?」
「……あ、いえ。ごめんなさい、ちょっと考え事を」
「お疲れになられましたら公平様、少しお休みになられますか? 膝枕なんて初めてですけど私、そういうの上手そうってよく言われるんですよ」
「流れるように甘やかすムーヴに入るのやめてもらえます?」
ポンポン、と自分の太ももを叩く望月さん。母性を感じて素晴らしいけれども、ちょっと押し黙ったくらいで即座にバブみを感じさせてオギャらせようとするのはやめてほしい。
なんて言うんだ、この人……なんか、男を惑わす蠱惑さがあるぞ、変に。大学のサークルの姫ってこんな感じな気がする。探査者仲間とかでも男なら多分、放っとかないんだろうなってくらいの可愛いさでぽわぽわ感だ。
ええい、彼女の母性はさておき効果だ。
場所、環境を問わず半径1km以内のモンスターの位置を把握する──これまた中々のもんじゃないか。
実際、後述の探査者感知効果も併せて既に、リッチ討伐の際に便利に使わせてもらったよ。レーダー効果はあるだけで値打ちがあるね。
「スキル《気配感知》の、事実上の上位互換ですね。率直に一探査者として、羨ましく思うほどの効果です」
「そうですね……ちなみにモンスターの種類とか、強さとかも分かるんですか?」
「いえ、さすがにそこまでは……大きさとかなら分かるんですけどね」
モンスターの気配こそ分かるものの、どういう種類かだとか、どのくらいの強さだとかまではさすがに分からないなあ。そこまで判明できたら今以上に便利なこと間違いなしなんだけど、高望みのし過ぎも良くはない。
そう言うと、望月さんはなるほどと頷き、言う。
「そうですか……もし、そこまで分かるものでしたら。進む先に敵わない何者かがいると分かった時に逃げを打てて、公平様の安全が守られるかなと思ったんですけど……」
「望月さん……」
残念そうに俯く彼女は、恐らくだけど自分の身に振りかかった災難を思っているんだな。
後輩たちと共に入った、本来ならば余裕のダンジョンにて異常な格上と遭遇する……とんでもない話だ。もし事前に望月さんがそのことを知っていたなら、そもそもダンジョンに潜ることすらしなかっただろう。
情報の大切さを、それこそ骨身に染みて分かっている彼女らしい心遣いだ。良い人だなあ、望月さん。
逢坂さんが必死になって敵を討とうとした理由が分かる。こんな人が、人を護ってあんなことになったなんて……酷いことだよ、本当。
「とはいえ、モンスターの位置がこの範囲で分かるだけでも破格です。公平くん、この効果はどんどん活用していって良いと思いますよ」
「ええ、そうします。そのためにシステムさんも、この称号をくれたんでしょうから」
香苗さんの言葉に頷く。
称号の効果にしろスキルにしろ、フルに使ってこその探査者なんだ。しっかり使いこなせるよう、頑張らなくちゃな。
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