いつもよりチカチカ光っておりまーす(ファンサ)
夕暮れ時。ちびっこ達に絡まれるという恐怖体験を味わいながらも、どうにか彼や彼女達とのコミュニケーションを交わしていく俺ちゃん。
今はいよいよ光ってくれとせがまれて、おもむろに光ってみた次第である。どうだ明るくなったろう、これがシャイニング山形だよう。
「うわ、ピッカピカ!」
「本当に光ってる……え、トリックとかじゃなくて?」
「これで飛んだり跳ねたり戦ったりするんだよねー。すごいね」
「夜眠れなさそう……」
「オンオフはしっかり出来てるからね? 壊れた電灯じゃないからね?」
子供らしい率直な意見感想の数々。一家に一台あると嬉しい夜でも光る山形くんは、多感な少年少女達にもどうにかウケているみたいでよかった。
あんまり光量強いとそれこそ大人の人達が泡を食ってやってきてしまい、あえなく俺はシャイニング不審者にランクアップしてしまうため心なし、控えめに光ってみる。
たまにオンオフを切り替えたりすると、そういう緩急が面白いのか男の子が、お腹を抱えて笑い転げていた。
「あははははははっ! きゃははははははっ!!」
「ちょ、ちょっとゆーちゃん笑いすぎ……」
「だっ、だって……っ! すっごい、点いたり、消えたり……っくふふふっ!!」
ゆーちゃんという名の少年がケタケタ笑っているのを、女の子のうち一人が血の気を引かせて嗜めている。あれか、俺が怒ると思ったんだろうな。
これで怒るならそもそも光ったりしないんだから、気にしなくたっていいのに。心やさしい女の子なんだな、うん。
安心させるように、その子に笑いかける。
「面白いなら何より、気にしなくていいよ。えーと……」
「あ、綾です。宮崎綾……」
「そっか。宮崎さん、ありがとね気を遣ってくれて」
「い、いえ! はぅ……」
彼女、宮崎さんは顔を真っ赤にして俯いた。恥ずかしそうにツインテールの頭を手で弄り、撫でつけている。
うーむ、照れ屋さんなんだろうか? 他の子達が苦笑いしているあたり、割とよくあることのようだね。
さておき、そろそろいい時刻だ。もうじき夕ご飯の準備とか、お風呂の準備とかも整うのだろう。
空を見ればまだまだ青いけど、日は結構傾いているからギラギラした日差しでもない。ひぐらしの鳴く声を遠くに聞きながら、俺は発光を止めて子供達に告げた。
「そろそろお母さんやお父さん達のところに戻ったほうがいいよ。結構いい時間だしね」
「えー? 俺もっと兄ちゃんと遊びたいー」
「ワガママ言わないの、ゆうきちゃん」
「まったくいつまで経ってもお子ちゃまね、ゆうは」
「んだよーミヨちゃんに、マコちゃんまでぇ〜」
もう二人の女の子、それぞれミヨちゃんだのマコちゃんだのって名前みたいで、ゆーちゃんことゆうきちゃんに大人びたことを言って窘めている。
同い年……ではあるんだろうけど、このくらいの歳の子は女の子のほうが大人びているからね。ゆうきちゃんが特段、幼稚とかって話でもない。
ちぇっ、と面白くなさそうに舌打ちしつつも、彼は渋々退散する気になったみたいだ。
4人、並んで俺を見る。目を細めて俺は、そんな彼と彼女らを優しく見ていた。
「兄ちゃん、遊んでくれてありがとね!」
「ありがとうございましたー!」
「ピカピカすごかったです、シャイニング山形さん!」
「ステイツに帰ったらスクールのみんなに自慢しますねー! シャイニング山形さん、向こうでも人気なんですよ!」
「えっ……」
何それ怖ぁ……
アメリカ出身の女の子であり、他の子達からはマコちゃんとも呼ばれている少女の口から出てきた、聞き捨てならない言葉に思わず反応する。
まさかの俺までグローバルかよ。いやそりゃまあ、世界的探査者である香苗さんが率先して動画配信しまくってんだもの、視聴者層の規模はもちろん世界的だよね。
うかうか海外旅行もできなさそうだぁ。いやまあ、今のところ生涯通じて海外に行く予定って、あんまり思いつかないけど。
精々太平洋ダンジョンを好奇心から覗きに行きたいくらいかなー、と考えつつも俺は、苦笑いして彼女に言った。
「ははは……お友達のみんなにもよろしくね〜」
「はーい!」
「それじゃ、俺も部屋に戻るよ……4人ともありがとう、短い間だったけど楽しかったよ」
「ありがとうございましたー!!」
なんだかんだで俺にとっても有意義な時間だった。暇を持て余していたのが、あっという間に夕食だしね。
なのでお互い感謝しあって、俺と子供達は解散してそれぞれ屋敷に戻っていった。
あー、なんだろうお兄さん扱いが新鮮だった気がするなー。たぶん身近に年上か同世代ばっかりなのもあるんだろうけど、何より昔、優子ちゃん相手にしていたお兄ちゃんムーブを久しぶりに見せた気がする。
昔はよくよく甘えたりひっついてきてたんだよなあ、あの子も。いつの間にやらイマドキの思春期になってたけど。
「俺にもあんな頃があった……」
まるで年寄りめいたことを口ずさみつつ、部屋に戻る。
今さっきのふれあいが、あの子達にとって夏休みのいい思い出になってくれてたらいいなあと思いながらも。
俺はさあ、お夕飯だと腹を擦った。
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