腹ごなしに飯でも食うか!(錯乱)
さておき、俺達は歩き出した。向かうは橋を超えて先にある繁華街、をさらに少し歩いたところにある商店街だ。
俺の地元の商店街以上のレベルで大規模、かつ人で賑わうアーケード街であり、ファッションから食事からいろんなお店がところ狭しと立ち並んでいる。
古都らしい、古びた建屋も少なからず並んでいるけど全体の印象としてはやはり都会的だ。少なくともうちの近所よりは確実に垢抜けているね。
そんな町並みを進みながらも、俺は3人に切り出した。
「それで今日、どこでお昼にするの? この辺のことは正直、全然詳しくなくて」
「んー、珍しいハンバーガーショップがあるって話だし、行ってみようかなって。その前にあちこち見て回って、気になるお店があったら入って、それからご飯食べるの!」
「私らもそんな予定立ててるわけじゃないし、適当って感じだよー。たまには隣県でも行こっかって、なっただけだし」
「なるほど……」
つまりはさほど、計画性のある行動でもないってわけか。だったらこっちも、なんとなし肩の力が抜ける感じはする。
気楽に行けばいいのだ。いやまあ、遊びってそういうもんだけれども。
女子3人に対して俺一人ってことで、どことなく気負ってしまっていたところはあるみたいだ。ふう、と息を吐いて気分を落ち着ける。
俺の隣で梨沙さんが、早速とばかりに店を指差した。俺も名前を知っている喫茶チェーン店だ。
「とりあえずお茶でもしようよ。この辺のお店、開くまであとちょっと時間かかるみたいだし」
「いいねそれ! 私朝ごはんまだなんだー」
「私はちゃんと食べてきたけど、もうお腹空いてきちゃった!」
「えぇ……?」
店の開店時間を待つつもりの梨沙さんと、朝ごはんをまだ食べていない木下さんはともかくとして。
しっかり朝ごはんを食べてきたらしいにも関わらず食い気を爆発させている遠野さんがハチャメチャに健啖すぎる。怖ぁ……
思えばこの人、いつぞやみんなでプールに行った時にも、事前に一人だけコンビニのお弁当をガッツリ食べていたな。
その時からすごい食いしん坊さんだと思っていたけど、改めてすごい食欲だと感心するばかりだ。下手したらクラス1、食べる子なんじゃないだろうか?
「そんなに食べてお昼、大丈夫なの真知子……?」
「へーきへーき! ちょっとサンドイッチを食べるくらいだし!」
「ちょっとじゃないでしょ、喫茶店のサンドイッチの量って。本当あんた、めちゃくちゃ食べるわよねー……」
これには梨沙さんも木下さんもビックリして、遠野さんをガン見している。
たしかに、喫茶店のサンドイッチって値段が張る分ボリュームあるからね……朝ごはん食べてお昼もまだ遠い頃に食べたら、今度は昼食が食べられなくなりそうなものだけど。
その辺、遠野さんは特に問題なしとカラカラ笑っている。この分だと本当に、喫茶店でサンドイッチを食べてもなおお昼もガッツリいきそうだな。すごい胃袋だ。
ともあれ、そういうことならと俺達は喫茶店に向かった。自動ドアが開いて中に入ると、空調のよく効いた涼し気な空間が広がる。
案内された4名席に座る──対面に梨沙さん、隣に木下さん。斜め向かいに遠野さんという布陣。改めてだけどこの集まり、傍から見たらどういう風に見えてるんだろうね。
「公平くん、はいメニュー、何する?」
「ん……おっ、メロンソーダフロート!」
梨沙さんが広げたメニューを見せてもらうと、すぐさま目につく魅惑の商品・メロンソーダフロート!
俺これ好き、めっちゃ好き。まず喫茶店くらいでしか売ってないレア感もいいし、メロンソーダにドドンと盛られたアイスクリームもすごく魅力的だ。
見かけたら俺は必ず、これを選ぶことにしている。一も二もなくこれにすると指差すと、隣で木下さんがくすりと笑った。
「あはは、即答じゃん! 山形くん好きなんだね、メロンソーダフロート」
「え、あ……あはは、そうなんだよ。ついがっついちゃうくらいには、まあ」
「公平くん、かわいい……私もこれにしよっかなー」
いくらなんでも反応が早すぎたか、やたら面白がられてしまっている。くそう、はしゃぎすぎたか。
でもなんか、梨沙さんも同じもの頼んだしやっぱり人気の商品なんだろう。メロンソーダにアイスクリームが乗っかってるんだ、人気がないわけがないよね。
「私はー、と。じゃあアールグレイとチーズケーキにしようかな〜」
「コーラにサンドイッチと、あとパンケーキ!」
「パンケーキ!?」
「本当にお昼食べられなくなるよ、真知子!?」
無難というか大人めに、紅茶を選択する木下さんと……まさかまさかのパンケーキまで食べるつもりの遠野さん。
サンドイッチは止めてパンケーキにした、とかではなくサンドイッチを食べた上でさらに、パンケーキまで食べようというのだ。
これには一同驚いて、再度彼女を凝視する。
「あんた、私の朝ごはんの何倍食べるのよ一体……」
「腹が減っては戦はできぬって言うじゃん! 腹拵え、腹拵え!」
「朝ごはん食べた上でそれ言うかぁ……」
食べすぎて逆に戦ができなくなりそうだ。まあ、遠野さんなら大丈夫なんだろうけど。
戦慄とともに、笑顔の彼女を見る俺であった。
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