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二度目の相対──倶楽部幹部・青樹佐智

 駆け抜け、一気に大穴へと飛び込む。落下の感覚が10秒ほど──着地。探査者として強化してきた肉体は、問題なく何メートルもの落下にも耐えきった。

 俺、香苗さん、エリスさん、葵さんの4人が降り立つ倶楽部拠点の地下は、今や合戦場そのものと化している。

 

「ぐるぉぉぉぉああぁぁぁぁぁぁ!!」

「班ごとに連携! 敵はB級からA級だ、気をつけろー!」

「人工物に囲まれて、探査でもないのにモンスター討伐か!!」

「ぐげぎゃがががががががががぁぁぁっ!!」

「S級探査者達にだけ任せきりになるなっ! 俺達も使命を果たせっ!!」

「うるるるるぁぁぁぁモンスター死ねよやごるるるるるぁぁぁ!!」

「ぴぎー! ぴぎぎぎぎぎーっ!!」

 

 激闘、乱闘、あるいは死闘。

 先に辿り着いていた探査者達、ざっと50人は下らない数の人達がみな、スレイブモンスターの群れを相手に一歩も引かずせめぎ合っている。

 多対多の、小規模ながら戦争めいた光景だ……数の上では劣るけどしかし、連携しながら実力で凌駕していく人間達は実力的にはやつらより上だ。

 

 決死の怒号が、この無機質な人工施設の中で飛びかっていた。

 その中を構わず、エリスさんを先頭にして俺達は駆け抜ける。

 

「雑魚に構うな! モンスターどもを突っ切って前へ! 地下へ! 絶対に幹部連中をここに来させるなっ!!」

 

 緊迫の叫び。エリスさんも作戦が始まったとなればもう、呑気に構えていられるわけがない。

 幹部が今ここにある乱戦に到達してしまえば、さらなる混沌の状況に陥るのは火を見るよりも明らかなのだ。

 

 この状況であれば、空間転移が使えればよかったけれど。あの機能も厳密には、コマンドプロンプトの権能行使だ。使うに際してそれなりに、俺の身体への負担はある。

 

 いつもはそういう負担の、ほとんどを肩代わりさせるための神魔終焉結界なんだけど……今現在においては、次元ごとバグスキルを封印するという特大の権能を使うためのリソースにほとんどを費やしている。

 こんな状態で同時並行的に何かしらの権能を使うのは、人間としての俺の身体では負担が大きすぎるだろう。

 

 寿命を著しく削ることを覚悟するにはまだ早い。幹部らしき気配が未だ、下層からこちらに向かってきているこの段階なら、全速力で駆け抜ければ問題なく分断も可能だ。

 だったらとにかく走るしかない! 俺達はそうして、探査者とモンスターが鎬を削る鉄火場を駆け抜けた。

 

「エリス殿! 山形殿!」

「ベナウィにショートカットルートを作らせる! こちらだ!!」

「サウダーデさん、ヴァールさん! ……ベナウィさん!!」

 

 突っ切ってすぐ、俺とエリスさんが呼びかけられてそちらを向く。サウダーデさんとヴァールだ、乱戦から少し離れたところにベナウィさんを伴って3人でいる。

 ショートカット──道が入り組んでいるの予想して、一気に下層までぶち抜くのか。助かる!

 

 一人しゃがむベナウィさんは、床に手を当て集中している。

 4人でそちらへ向かえば、彼は本日3度目の《極限極光魔法》を発動していた。

 

「《極限極光魔法》──ライトレイ・ペネトレイター!」

 

 右手が光り、そこから眩い閃光とともに光の杭がまっすぐに放たれた。床をぶち抜き、音を立てて何度も衝撃を生み出す。

 一回、ニ回、三回、四回。大きな破壊音の数だけ下層へのショートカットを生み出した彼が、やがて光を収めるとすぐさま飛び退いた。

 不敵な笑顔で俺たちへと告げる。

 

「これで敵の下へ大幅なショートカットができるでしょう! ここは我々に任せてみなさんは幹部を!」

「ありがとうございます、ベナウィさん!」

「あとは任せます、ヴァールさん、サウダーデさん!」

 

 大きな穴が空いた、その先に幹部がいる。

 ここからは気配が分かる俺が先導して飛び降りる。香苗さんと葵さんの言葉を受けて、ヴァールとサウダーデさんも力強くうなずき、戦闘態勢に入った。

 

「互いにまた、無事で会おう! ──《鎖法》!」

「ご武運を! 《炎魔導》──サウダァァァァァァデッ! バトゥゥゥッ・ファィィィッ!!」

「えぇ……?」

 

 あの人マジで、戦う度にサウダーデと叫んでいるのか……

 落下しつつも上層から聞こえてくる、サウダーデさんの雄叫びに場違いながらそんな感想を抱きつつ、さらに下層へと下っていく。数秒の落下感覚の後、やはり問題なく着地。

 

 最下層、かどうかは分からないがオペレータの気配は紛れもなくこの階層にある。ずいぶん焦っているようだ、一目散に二人で移動しているな。

 進行方向はこちらだ……つまりはこのまま進めば遭遇できる。理想的だ、モンスターを上層で、幹部を下層で仕留める状況に持ってこれた!

 

「こっちです、みなさん!」

 

 先導して駆ける。あともう少し、もうちょっとで敵の懐だ。

 細い通路を走っていけば、やがて大きな部屋にたどり着いた。やはり無機質な、それでいて機械的なパイプや機材がいろいろ置いてある空間。

 ちょうどいい……ここで立ち止まり、俺はエリスさんに提案した。

 

「狭い通路だと葵さんの高速殺法が使えない……ここで迎え撃ちませんか? もうじきやつらもここに来ます」

「私も今、それを言おうと思ってたよ。そうだね、ここを決戦の地としようじゃないか」

 

 同じことを考えていたらしい、エリスさんが葵さんを伴って俺と香苗さんの前に出る。二人とも臨戦態勢だ、戦意がみなぎっている。

 敵の気配はどんどん近付いてくる。もう間もなくこの部屋に入ってくるだろう。香苗さんの緊張と不安の面持ちも横目に、俺は敵の進行方向にある通路を見据えた。

 

 ────そして、現れる者達。

 

「……してやられたか。まさかここまで早期に打ってでてくるとは」

「翠川が吐いたか、あるいは聖教のイヌが得たデータによるか……いずれにせよ動きが早すぎるのう。そんなにわしに会いたかったのか? モリガナ」

 

 茶髪の三つ編みを前に垂らした、ロングコートの女傑。

 醜悪なまでに歓喜の形相を浮かべた、皺だらけの老翁。

 

 倶楽部幹部・青樹佐智と火野源一。

 敵の首魁たる二人が今、俺達の前に姿を表した。

ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー


【ご報告】

「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」2巻、発売中です!

書籍、電子書籍ともによろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[一言] ジジイか……第一声がそれかお前w
[一言] やっぱり粘着質な爺って気持ち悪いですね……
[一言] 何回見てもテンションに笑う やってることも拳を赤熱させてぶん殴るゴッ○フィンガーだしw 最終的に  見よ、東方は赤く燃えている…(作戦終わって日の出の中)とかやっちゃうんだろうか…
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