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太陽にも似た極光色の夜明け

 やたらめったら叫びながらも、それでもその実力はまさしく最強クラスということだろう。

 《炎魔導》の発現。燃え盛る焔を両拳に纏ったサウダーデさんの、駆け抜けながらの正拳が、わずか一撃で施設そのものを吹き飛ばしていた。

 

「サウダァァァァァァデッ!!」

「す、すごい……! いろいろ、すごい」

 

 地上施設内部が軒並み、壁と言わず屋根と言わず扉と言わず砕け飛んで燃えていく。いや、威力おかしい。中に人がいるかも知れないから、たぶん手加減というか調節はしてると思うけどそれでもおかしい。

 御堂本家の敷地全体と同じくらいという、かなりな広さの家を丸々一つ、たったの一撃でぶち抜いちゃってるよ。明らかに肉弾戦に特化したスキルの使い方だっていうのに範囲が広すぎる。怖ぁ……

 

 おそらくは《格闘術マスタリー》によるバフを受けているからだろう。単純に威力も速度も倍化させるからな、あのスキルは。

 ともあれ吹き飛んでく家の、内部が露になっていく。人はいないが、テーブルやら椅子やらキッチンやらがある、生活の痕跡が見える内装だ。ひとまずハリボテの線は消えたけど……やはり、地下に空間を作っていたみたいだ。下階へ繋がる階段が、俺の目にも見えた。

 

「あれか、地下への通路は!」

「手はず通りだよ、総員。ベナウィさんが風穴開けてくれるまでは待機だ。もどかしいけど我慢するんだ」

 

 思わず身を乗り出すけれどすぐさまエリスさんに制止される。そう、本隊である俺達の出番はもう少しだけ先だ。

 ヴァール達が階下へと降りていく。この先、ベナウィさんがモンスター相手に一発かまして、直後にスレイブモンスターまでの直通ルートを構築してくれるわけだから、それからだな、俺達の出番は。

 

 地下にあるオペレータの気配を感知する。元よりあった2つの気配──おそらくは青樹さんと火野老人か? ──は、未だ動く様子を見せない。

 寝てるっぽいのか、まさか。仮にそうだとしてももうすぐ、まさしく叩き起こされる羽目にはなるだろうけど。

 

 一方でヴァールたち突入した3人は順調に、スレイブモンスターの元に辿り着こうとしている。

 それなりに道は曲がりくねっているようで、気配は何度も方向転換を繰り返している。あっ、一気に下階に落ちた。多分サウダーデさんか、床をぶち抜いたな。

 

 それと同時に3つの気配が一気に、モンスターの蠢く気配のかたまりと接触したのを悟り。

 俺はエリスさんはじめ、仲間達に告げた。

 

「3人とも、スレイブモンスターの群れと接触したみたいです! もうじき状況が動くかと!」

「よし……! 各班、構えろ! じき《極限極光魔法》が来るぞ、────!?」

「地面が、揺れっ!?」

 

 指示が飛ぶのと同時、大きな地響き。地震、ではない。地下のモンスター達の気配がごっそりと消えた、ベナウィさんの初撃だ!

 《極限極光魔法》。オペレータに与えられたスキルの中でもトップクラスの威力を誇るスキルの、二撃目が間もなく来る!

 

「みんな! 2射目来ます!!」

 

 俺が言うや否や────大地から天空に向け、一筋の光の柱が立った。

 轟音。そして爆風。遥かに地下から障害物をすべてぶち抜いて、破壊そのものとも言うべき光が天へと突き立てられたのだ。

 

 日の出よりも早い日の出。太陽よりもなお眩しい、極光。ベナウィ・コーデリアの、人の手による夜明けがそこにはあった。

 

「相変わらず、威力が出鱈目ですね……!?」

「《極限極光魔法》! 話には聞いていたけど、ここまで滅茶苦茶なのか!」

「ファファファ! 地下で居眠り漕いてるアホどもにゃ、ちょうどいい目覚ましの鐘の音だろうさねえ!!」

 

 同じくS級探査者である香苗さんやエリスさんさえ唖然としてしまう程の超威力。

 サウダーデさんの、一撃で家を吹き飛ばした《炎魔導》でさえ遠く及ばないこの火力は、間違いなく現存する探査者達の中でも頭一つ抜けた破壊の化身とも言えるだろう。

 

 空へと放たれたその光が、たっぷり10秒ほどして消える。後に残るは、施設の残骸さえない虚無の平野にポッカリと空いた、大穴。

 直通通路。そこから一直線にスレイブモンスター達のいる、地下へとつながるルートが完成していた!

 

「よし! 各班突撃! 穴を降りればそこはモンスターの巣窟だ!!」

「今こそ務めを果たせ探査者達よ! モンスターを倒し、罪なき人々の安寧を守るために!!」

『────うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』

 

 新川さんと烏丸さんの号が飛び、それをもって一斉に四方八方から探査者達が駆け出した! すさまじい雄叫びを誰しもがあげ、一塊の戦闘集団となって穴蔵へと突き進み落ちていく!

 エリスさんが、次いで俺達へと叫んだ。

 

「私らも行くぞ! モンスターは全部無視して地下下層、幹部のいるところまで一気に攻める!」

「ベナウィさんの狼煙を受けて連中も動き始めました! スレイブモンスターと合流される前に、俺たちが先んじて行かなくては!」

 

 今しがたの轟音と振動に、地下にいる二人のオペレータも当然ながら異変に気づいたようだった。慌てて動き始めている。

 モンスターの元に辿り着かれて乱戦に持ち込まれると厄介だ。俺達はそれより先に、奴らとかち合わなければならない!

 

「全速力で駆け抜けろ! 私達の敵はスレイブモンスターじゃない──倶楽部幹部・青樹佐智と火野源一、もしくは鬼島だ!」

 

 指揮を取るエリスさんに続き、俺と香苗さん、葵さんが走り出す。

 ついに、戦いの火蓋が切って落とされたのだ。

ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー


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― 新着の感想 ―
[一言] 自分の考察に対する早速のご返事ありがとうございます。読ませてもらってまた疑問が出てきたので、先日と同じように箇条書きで投稿させていただきます。 ・火野の「諦念」→自分自身の「真の目的」は別…
[気になる点] 倶楽部側の初動が遅すぎる…。もう「油断」とか「怠慢」なんてレベルじゃないですね、これは…。 今の事態(拠点を急襲される)は、もしかして「想定外」? ※「モンスターハザードで先手を取る…
[一言] 圧倒的パワー…(なお目立ちすぎ)
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