シャイニング宴のシャイニング終了、からのシャイニング二人きり
単なる昼ごはんだけで、なんだかずいぶん疲れてしまった。
シャイニング山形のシャイニング挨拶をシャイニング披露して、大人の方々が強制的に落ち着いたり子供の方々と一部伝道師がそれにも負けない興奮を見せたりと、微妙な空気になったところで宴席は終了と相成った。
去り際、本家の人達も含めて御堂一族の人達が何かこう、前にもまして純粋な興味の視線を向けてきていたのが忘れるに忘れられない。
まるで水族館のチョウチンアンコウが光りだした場面にたまたま出くわしたような、えっどうなってるんだろうこれ? みたいな視線だ。完全に好奇心の対象になってしまっている。
子供の無垢な視線に突き動かされたとはいえ、ちょっと光りすぎちゃったみたいだ。いやそれを言うならそもそも光るなって話ではあるんだけどね。
「さてそれじゃあ、そろそろ私らは帰るとするかねえ」
部屋への帰り道の途中、玄関への分岐路で立ち止まる。マリーさん、サウダーデさん、ベナウィさんはそろそろ引き上げて以降、作戦開始の明日明朝までホテルで静養するらしい。
マリーさんがいつも通りファファファと笑って言った。
「ま、私ゃ特別理事として立ち会うだけの見物人だがね。いざとなりゃあドス持って彷徨くつもりしてはいるけど、参加メンバーを見るにそんな機会はなさそうさね」
「現役を引退された先生にお手数はおかけしませんとも。譲り受けた次代は、我々現役探査者こそが担うべきなのですから」
「そもそも話を聞く限り、本当に厄介らしい幹部達はミス・エリスやミス・葵、そしてミスター・公平が相手してくださりますからね。それこそなんの問題もありませんよ」
「ファファファ! 違いない。私が幹部なら即座に自首するね」
弟子達の言葉を受けて冗談っぽく言う。まあ実際、この人がわざわざ現役に一時でも復帰するなんてことにはそうそう、ならないだろう。
S級がこれだけの数揃っている上、手前味噌ながらコマンドプロンプトたる俺までいるのだ。挙げ句霊体とはいえ精霊知能も出張ってくるわけだし、何が起こっても対応しきれる確信がある。
『そんなこと言ってると足下掬われるよ? 万一僕みたいなのが群れをなしてきたらどうする?』
そんな無茶な事態は絶対にないから。脳内、アルマの声に応える。
邪悪なる思念級の迷惑で横暴で傲慢な化け物が、たとえ一体だってそうそう現れてたまるか。そして現れた場合、事態は人間がどうのって話じゃなくなるから。
言っちゃうと人間メインで対処しようとしている時点でまだまだ、大した話とは言えないのだ倶楽部なんてのも。
システム側としては精々、バグスキルをどうやって手に入れた? とか、スレイブモンスターをどうやって製造している? とかって部分が気になる程度だけれど……どの道その辺ももうじき、明らかになるだろうしな。
「それじゃあマリー、サウダーデさんベナウィさん。明日は早朝3時にここの家の前に集合だ。悪いけど早起きしてもらうよ、ハッハッハー」
「私と師匠は揃って山形くんと同様、こちらのお屋敷に滞在させてもらいます。なのでもし師匠がお寝坊かましても私がバッチリ起こしますからご安心をば、はっはっはー!」
「ハッハッハー、安心してぐっすり寝れるね。さっきのことはすべて寝て忘れたい……」
「むごい」
さっきの挨拶時、大ダメージを受けたエリスさん。パッと見調子を取り戻したかのように思えたんだけど、やはりしばらくは引きずりそうな様子だった。
気持ちはすごく分かる。というか自己紹介でのやらかしは俺も中学の時に経験があるため他人事ではない。
この辺はあまり俺も思い出したくない、ガチのマジで封印したい過去につき多くは触れないけど……
そんな俺だからこそ、エリスさんの苦しみは我がことのように分かるのだった。
「エリスさん、俺達は同志です」
「公平さん……」
「陰キャとして、ボッチ経験者として。そして何より、よくわからない狂信者を抱え込む者同士として。あなたは一人じゃない……俺も、一人じゃない」
「! そっか……そうだね。私達は、同じ気持ちを抱える同志なのか」
「ずいぶんアレな同志ですねー……」
エリスさんを励ましつつ、自分も似たようなものだとアピールする。同類相憐れむというべきか、俺と彼女の間にはやはり、シンパシーとも呼ぶべき共感があるようだった。
そうしてマリーさん達と別れ、途中でエリスさんと葵さんとも一旦別れ──といってもこちらは同じ屋敷内だ、何かあればすぐにお互い、駆けつけたりできるが──、俺は香苗さんと二人で自室に戻ってきた。
ここからはフリータイムだ。というより明日に備えてゆっくり静養したほうがいい。何せ朝3時に門前集合ってことは、最低2時には起きてないと間に合わないことになるし。もはや深夜だよ。
「探査者の未成年就労規則って、深夜関係どうなってましたっけ……」
「成年の探査者が同伴の場合に限り認められていますね。おそらく今回はソフィアさんなりヴァールなりが段取りを整えてくれているものと思いますが」
「特例で鑑定スキルの使用令状まで、用意してるくらいですしねえ」
法的に引っかかりそうなあれやこれやはたぶん、ヴァールがどうにかしてくれているだろう。頼むぞWSO!
祈りながらも部屋の中、再び座布団に座る。香苗さんと二人、ようやく落ち着いた格好だ。
お茶をまた淹れてもらい、ちびちび口をつけては息をつく。やれやれ、なんかいろいろあったなあ。あとは夕食とお風呂くらいで、それ以外は自由時間だから助かったよ。
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