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「二人組作ってー」と同じくらい「軽く自己紹介してー」のハードルは高い

 お昼ごはんも概ね食べ終えた、は~お腹いっぱい。

 見れば他の探査者のみなさんも概ね満足している様子だし、親戚のみなさんがたも未だ、話尽きることはないといった様子だけど心なし、もうそろそろ解散してもいいんじゃないかなーってムードを醸し始めている。

 

 あるよねそういう、誰もが終わりたいって思ってるんだけど自分から率先してお開きにするのはアレだから、誰か他の人が声掛けしてくれないかなーってみんなして思ってるやつ。

 全員誰かに丸投げするから結果として、誰も言い出せずにひたすら時間ばかりが過ぎていくのだ。今回もなんか、そんな風になりそうな予感がひしひしとしていた。

 

 だがそんな空気を裂くように、博さんへと話しかけた人がいた。

 たぶんここにいる人達の中でも一番よく食べた健啖お婆さん。そう、マリーさんである。

 

「はぁ、食べた食べた。ごちそうさん、美味しかったよ……博ちゃん。このあとなんぞ、私らの紹介だって?」

「おあがり様です、マリーさん。ええ、我が家とも縁の深い皆様方をぜひ、一族の者達に紹介させてもらえれば、と」

 

 腹を擦りながらの質問に、博さんはダンディスマイルを放ちつつも答えた。

 今回、この宴席に俺達が呼ばれたのはひとえに、博さんや才蔵さんが一族の者達に紹介したいからという理由がある。香苗さんに関係している探査者を、この際だから皆に知らしめたいって思いがあるようだった。

 

 そうしたことからも語る博さんに、マリーさんはいつも通り、穏やかな笑みを浮かべて告げる。

 

「ファファファ、だったら早めに頼むよ。歳食うとね、こんだけご馳走を平らげたらすぐに昼寝したくなるんさね。せっかく紹介してくれるってのに転寝こいてちゃ、そりゃさすがに締まりがないだろう?」

「ああ……そうですね。これは配慮が足りず失礼しました。時期も良さそうですし、さっそく皆様のご紹介を簡単ながら、行わせていただきます」

「ん、悪いねえ。頼むよ」

 

 昼寝したいからさっさと用件済ませて解散させてくれ──と。意訳するとこういうことになるな、マリーさんの提言は。

 昼寝云々は彼女としても口実だろう。要するにこの、終わりがけでとりとめもない雰囲気を嫌って切り上げたんだと思う。

 

 あとは紹介さえ済めば終わるって段階で、いつまでも紹介が始まらないでは帰るに帰れないからね。

 正直、俺としても助かるし他のメンバー、葵さんやサウダーデさんもどこかホッとした様子だ。

 

「いやー、助かります。そもそもが身内の輪にいつまでも居座るのも、収まり悪いですしね」

「うむ……まして俺なぞ、先生の弟子というだけであって本来であれば御堂さんの一族とはなんの関係もないわけだからな。大変な馳走を賜ったのはありがたいが、同時に心苦しくもあった」

 

 このメンツの中では比較的、真面目なほうだろう葵さんとガチガチに超生真面目っぽいサウダーデさん。

 このお二人はそもそも、この宴席に参加したこと自体が居た堪れないものだったんだろう。その気持ちは俺にも分かる。

 

 さて、とにかくマリーさんの言葉を受けて博さんが立ち上がった。同時にピタリと声が止み、一族のみなさんが揃って彼を見る。

 怖ぁ……これが御堂本家当主ってものなのか。一挙手一投足が分家筋に見られているようで、畏れられつつ敬われつつも、どこか試されている感じさえある。

 

 政治家さながらのプレッシャーだろうそれを一身に引き受けながら、博さんはしかし、穏やかな笑みを浮かべてアナウンスを始めた。

 

「宴もたけなわ、といったところではありますが皆様、ここでひとまず宴席を終わりとしたく存じます。しかしながら私、3代目御堂よりご紹介したい方々がいますれば、しばしご傾聴のほど願いたい」

 

 大きく、太く、そして明朗な声。一族すべてを率いる当主らしい、威厳に満ちたその声に隣で座る、才蔵さんがうむうむと頷いた。

 先代当主だった彼からしても、博さんのお姿は当主として立派だということなんだろうか。マリーさんも目を細め、どこか懐かしんでいる……彼が子供の頃から知り合いだっていうしな。大成した姿は、やはり眩いものなんだろう。

 

「この度、S級探査者へと昇格した我が娘・香苗。その香苗が日頃より親しくし、また大変な支援を受けている偉大なる探査者の皆様にお越しいただいている。簡略ではあるがご紹介いたします──まずは初代・将太とも交流のあったマリアベール・フランソワさん」

「マリアベール・フランソワです。こないだまでS級でしたが引退し、今ではWSOの特別理事です。ファファファ、よろしく」

 

 マリーさんから挨拶がなされ、同時に拍手が巻き起こる。

 一族のみならず、世界的にも有名だもんな、この人。ミーハーってんじゃないだろうけど、探査業で興隆した御堂一族の方からしたら、まさにレジェンドだろう。

 

「続いてその弟子、ご自身もS級探査者であらせられるクリストフ・カザマ・シルヴァさん」

「サウダーデ・風間とも呼ばれております。以後お見知りおきを」

「そのクリストフさんの弟子でこちらもS級探査者、ベナウィ・コーデリアさん」

「どうもうっかりベナウィです、よろしくお願いいたします」

 

 続いてサウダーデさん、ベナウィさんと紹介されていく。サウダーデさんはともかくベナウィさんは、自分からうっかりベナウィと名乗ってしまっていいんだろうか?

 心なし拍手のほうも、していいのか悪いのか分からず微妙にまばらだったし。

 

 こないだもそうだけど、ゲストが自虐ネタかますと反応しづらいんだって!

 そう思いつつも、続いてエリスさんと葵さんが紹介されようとしていた。

ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー


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書籍、電子書籍ともによろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[一言] この辺先に紹介されてオオトリ務めるプレッシャーよw
[一言] 自分で言っちまうのかいw
[一言] いつかのインタビューみたいにならないように頑張れ山形君!
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