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理の護り手達

 各拠点ごとにも、まさかの精霊知能がそれぞれ配置されるという形で作戦は行われるらしく……

 いわば人間とシステム側の共同作戦という形で倶楽部制圧は行われるようだった。受肉はしない、一時的なものとはいえ精霊知能の投入を許可したってことにも驚きだけど、現世に対して極めて大きな権限を持つシャーリヒッタまで動かしたってところに、ワールドプロセッサの静かな激憤を感じて怖い俺である。

 

「我々は明日、朝4時に現地に集合して作戦に臨むよ。早朝っていうかほぼ夜明けだけど、こういうのはみんなが寝静まってる間に決着つけたいからね。悪いけどよろしく頼むよ」

 

 と、大まかな段取りを終えてのエリスさんがそう言って、作戦に向けての打ち合わせは終わった。

 このまま明日の早朝までは、特に何もなければバカンスだ。作戦がうまく終わればその後、明後日と明明後日は滞在しつつも遊び放題となる。サイコーじゃん。

 

 さておき、みんな打ち合わせも終わったということで好きに過ごしていらっしゃる。

 香苗さんはマリーさん、サウダーデさんと何やら話し込んでいるし、エリスさんと葵さんはベナウィさんともどもお茶を啜って寛いでいるね。完全にリラックスした、平和そのものな光景だ。

 

 かく言う俺はと言えば、お茶で軽く喉を潤してちょっとだけだけど緊張していた。

 今しがた話の最中に更新された、ステータスのおそらく称号欄を確認するために腹を括っているのだ。

 

 何しろおそらく、激ぉこワールドプロセッサちゃん直々の称号付与である。間違いなく何かしらキレてる感じ出してるよなあ。と、説明が終わった今、確認するのがにわかに恐ろしく思えてくる。

 

「……仕方ないよなあ、《ステータス》」

「! 救世主様、何か称号等に更新が!?」

「えぇ……?」

 

 覚悟を決めて俺はステータスを開く──矢先、話ししていたはずの香苗さんが即座に反応してきた。早くない?

 小声だったのに普通に聞き取ってきたのはまあ、S級探査者さんだし普通なことだけど、何もそんな、なんもかんもうっちゃってこっちに向いてくるの怖いよ。ほらサウダーデさんキョトンとしてるし。マリーさんファファファってしてるし。

 

 後でまたお教えしますよーとだけ答えて、ひとまず俺は、眼前に現れた俺のステータスを覗き込んだ。

 

 

 名前 山形公平 レベル860

 称号 理の護り手達よ、今こそ歪められたる世を糺せ

 スキル

 名称 風さえ吹かない荒野を行くよ

 名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た

 名称 誰もが安らげる世界のために

 名称 風浄祓魔/邪業断滅

 名称 ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で

 名称 よみがえる風と大地の上で

 名称 目に見えずとも、たしかにそこにあるもの

 名称 清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師

 名称 あまねく命の明日のために

 名称 風よ、遥かなる大地に吼えよ/PROTO CALLING

 

 称号 理の護り手達よ、今こそ歪められたる世を糺せ

 解説 そして護りなさい。風を取り戻した大地を

 効果 なし

 

 《称号『理の護り手達よ、今こそ歪められたる世を糺せ』の世界初獲得を確認しました》 

 《初獲得ボーナス付与承認。すべての基礎能力に一段階の引き上げが行われます》

 《……どのようなモノどもが水面下で動いていたとしても。我々はただ、理を護るのみ。歪みは糺す、それこそが世界維持機構・ワールドプロセッサ──そして》

 

 

「因果律管理機構・コマンドプロンプト……か」

 

 案の定、ワールドプロセッサさんたらガチギレである。文体こそ平静だけど命令っぽい文体だもの。

 おそらく精霊知能に向けてのメッセージをそのままここに持ってきたんだろうけど、根本的にポエミーだよねこいつ。

 

 何がアレって理だの歪みを糺すだの、日常生活でまず聞くことのないワードを当然のように使う姿はどことなく中学2年時代のことを思い出して切なくなる。

 ああ蘇る封印されし記憶の数々。やめろ桜井、そんな目で俺を見るな! 人気者のお前がそういう目で見てきたらみんなもつられてそういう目で見てくるだろ!

 

「怖ぁ……」

「な、何があったのですか!? 一体システムさんは公平くんに、どのような啓示を!?」

「御堂香苗殿は、配信外でもあのテンションなのですか先生?」

「大体そうさねえ。公平ちゃんが絡むと面白い子になるんさね、ファファファ!」

 

 思わず呻いた俺に、いよいよ香苗さんが詰め寄ってくる。相変わらず距離が近い、ほぼ抱きついてきているに等しいんですけど。

 そんな俺達を見てサウダーデさんが困惑している。まあ普通はドン引きだよね、素からして伝道師なのって。慣れきった俺やマリーさんがおかしいのかもしれないと改めて感じる始末だ。

 

「────失礼いたします。山形様」

 

 と、そんな折。

 部屋の外、襖を隔てて女性の声が聞こえてきた。どうぞと答えると、女中さんが襖を開けてお辞儀してくる。

 なんじゃらほい?首を傾げていると女中さんは、丁寧で柔らかな物腰でゆっくりと、言うのであった。

 

「昼食のご用意が整いました。つきましては当家の旦那様と奥様が、ぜひとも探査者の皆様方にも御堂本家・分家交えた会食を、とのことなのですが。いかがでしょうか」

ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー


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「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」2巻、発売中です!

書籍、電子書籍ともによろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつでもポエミー [一言] でもポエミーはトップが厳粛にいうと似合ったりしてええんよなw
[一言] 女中さん(山形様のお部屋にお客様全員集まっていらっしゃる……他の方のお部屋にお声がけに行かなくて済んでラッキー!)
[良い点] ワールドプロセッサさんが頑張ってポエミー分補充してくれて助かります。 しかし……マジでなにやらかしてるんだろう。
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