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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

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みんなの当たり前を護る仕事

 いつの間にかネットでバズりだしている、シャイニング山形と愉快な伝道師のことは一旦忘れて。俺たちは特撮ヒーローの映画を見ることにした。

 売店でポップコーンでかいの一つと、コーラ中サイズ二つを買って中へ。購入チケットに記載された位置へと辿り着き、二人並んで座る。

 

 まだ上映までにいくらかの時間がある。その間も俺は、佐山さんから探査者としての俺について、いくつか質問されていた。

 

「……じゃあその、探査者さんを乗っ取ったモンスターがあちこち、ダンジョンを行き来してたんだ。それも、たくさんのモンスターを連れて」

「うん。最終的には湖岸……大橋の前に公園あるじゃん。あの辺にあったダンジョンに入ったんだけどね。ちょうど運悪く探査者が潜ってたもんだから、大変なことになりかけちゃってさ」

「それで、山形くんが助けに行った?」

「広瀬さん……組合の偉い人に頼まれたから。俺自身、俺にできることで助けられるならやりたかったしね」

 

 話してて気付くんだけど、佐山さんの反応はどこか、憂鬱そうなものだ。こちらを気遣う反面、何か、ものが奥歯に挟まっているような。本音を言いたい感じが見て取れる。

 なんだろう? 思うところがあるなら言ってほしいかもしれない。たとえば俺への指摘とかだとしても、受ける受けないは別にして、聞くことは聞こうと思うし。もの言いたげにこちらを見つめられるだけ、というのはこちらとしても気になる話だ。

 というわけで聞いてみよう。

 

「どうしたの? 何か、あった?」

「……山形くん、どうしてそこまでできるの?」

「そこまで、って」

「私たちを助けてくれた時もそう。学校で、関口に睨まれても私を気遣ってくれたり、何があってもダンジョンから守るとか、苦手な虫でもモンスターなら倒す、とか。助けられるなら、助けるとか──」

「佐山さん?」

「──すごすぎるよ、山形くん。どうしてそこまでやれちゃうの? 探査者ったって、その前に山形くんは子供じゃん。私と同じ、高校一年じゃん」

 

 苦しげにすら表情を歪めて投げ掛けてくる。その質問に、なんとなく、俺は腑に落ちる心地がした。

 思えば、佐山さんはスタンピードからこっち、ずっと俺を守ろうとしてくれていた。男子のからかいとかだったり、関口くんの敵意とかだったり。他の女子をも巻き込んで、俺以上に俺のことに敏感だったように思う。

 

 たぶん、だけど……危うく見えるんだろうな、俺が。

 探査者としての義務感とか使命感にのめり込んでいるように、彼女からは見えたんだろう。うん、なんとなく理解できる。

 まして実際に行動を起こしたりしているわけなので、余計に落ち着かないんだろうね。いつ俺が命を落とすかわからないから。

 

「優しいね、佐山さん」

「茶化さないでよ……ねえ、もっと自分勝手になりなよ。他のみんな、好き放題だよ。関口なんて、あいつも探査者なのにあんなんじゃん。山形くんだけがそんな、真面目すぎなくても良くない?」

「別に真面目なつもりもないんだけどね……」

 

 むしろ心の中では大概、おちゃらけているくらいだ。外面が大人しいから佐山さんからは、真面目すぎるように見えてるんだろうね。

 

 しかし、どう答えたものかな……

 今の俺を取り巻く現状そのものが、佐山さんがそんな風に俺を見る原因だと言わざるを得ない。だけどいきなり、俺のポエミーなスキルがシステムさんでマッハでリーベ、みたいなウンタラカンタラを話したって一ミリも伝えられる気がしない。

 我が事ながら意味分からんし。一月かそこらでよくもまあ、ここまで人生変わったもんだよ。

 

 ブザーが鳴る、もうじきに上映が始まる。

 照明が落ちていき、スクリーンの幕が開く。

 スマホの電源も落として、さあ映画が始まる。

 最後にこれだけは言っとかないとな。

 

「俺、今の生活が好きなんだ」

「えっ?」

「学校で勉強して、佐山さんたちと話ししたりして。放課後や休日には遊びにも行くし。そんで探査者として、ダンジョン探査もする。すごく充実してるんだ」

「……無理、してないの?」

「まったくしてないって言うとそれも違うかな。でもそんなの、俺じゃなくても誰だってそうだし。やりたいことをやらせてもらってる俺は、幸せだよ」

 

 やりたくないことを、それでもやらなくちゃいけないことなんて。そんなの、探査者とか関係なしに誰だってそうだ。

 父ちゃんや母ちゃんも、仕事やパートの愚痴は結構多い。優子ちゃんだって、学校生活で嫌なことがあったらブツブツ言う時もある。

 探査者だからとか関係なく、誰だって大変なんだ。

 

 だから、俺は探査者としてやりたいことをする。

 そんな風に、大変だけど頑張ってくれている人たちが、ダンジョンだのモンスターだので酷い目に合わないように、俺たちで食い止める。

 単純だけどそれが俺の、やりたいことなんだ。

 

「当たり前の日常が、当たり前であり続けるのを守れる仕事。俺は、やりたくてやってるだけなんだよ。真面目ってのには、ちょっと当たらないかな〜」

「……ふふっ。何言ってんの、超真面目じゃん」

 

 佐山さんが微笑む。

 そのことに安堵を覚えつつも、映画がいよいよ始まる。

この話を投稿した時点で

ローファンタジー日間、週間、月間1位、四半期4位

総合日間14位、週間9位、月間11位

それぞれ頂戴しております

ありがとうございます

引き続きブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします

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― 新着の感想 ―
精神性がニチアサのヒーローとかのそれなんよ
すごく感動的なこと言ってる、これは称号GOGOランプ点灯やて
[良い点] 主人公、素で考え方が大人よりなんだな そりゃ、楽しく学生してるだけだと理解できないかもしれん [気になる点] やばい、現在27歳の俺より大人かもしれん [一言] 俺たちもなんでそんなに仕事…
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