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マリアベール「キレちゃいないよ?私キレさせたら大したもんだよ、ファファファ」

 いよいよ皆様方とご対面の時だ。緊張しながら部屋に入る。

 俺に割り当てられた部屋にもまして、広々とした和室。大きな卓袱台を取り囲む形で何人も座っていて、案の定だけど見知った顔ばかりだ。

 

 マリーさん、エリスさん、葵さん、ベナウィさん──そしてもう一人、修行僧さんの格好をされている、ひどく大柄の男性。

 それと御堂家の方々。こちらは以前にも挨拶した、香苗さんの祖父の才蔵さん、父の博さん、母の栄子さん。そして弟の光さんもいる。

 

 なんていうか、平均年齢の高めな一団だ。探査者でもなく、おそらく一番年若いだろう光さんがどこか居心地悪そうにしている。

 そんな彼ら彼女らが、一斉に俺達のほうを向いてきた。

 

「おお、香苗! それに山形殿も!!」

「ファファファ、来たね二人とも。お邪魔しとるよ」

 

 才蔵さんとマリーさんが、開口一番俺達を迎え入れてくれる。特に才蔵さんのテンションが高くてビビる。前も興奮気味な感じだった記憶はあるけど、その時以上にも何やら昂ぶっていらっしゃるね。

 隣で博さんが苦笑いしながらも、それを嗜めた。

 

「父上、いきなりそれでは山形くんが困るでしょう……少し落ち着いてください」

「むう……! し、しかしな博」

「坊やの言う通りだよ、才蔵。いい歳こいてはしゃぎすぎさね、まったく……血管切れちまうよ、82歳のジジイが」

 

 息子さんばかりかマリーさんにも言われてしまっている。ていうかとんでもない物言いしてるけどマリーさん、才蔵さんと本当に仲いいんだなあ。

 それらを受けて、才蔵さんもさすがに少し落ち着くかと思われたんだけど……博さん相手にはともかく、マリーさんに言われると面白くなかったみたいだ。

 彼女に向けて、語気荒く返していく。

 

「何を抜かすか83歳が! いつまでも現役にしがみついとった妖怪居合ババアに、人のことを言えた義理はなかろう!」

「ファファファ! いいのかえそんなこと言ったら、ソフィアさんなんざ私らよりもっと長生きなのに現役じゃないか。チクるよ?」

「あの方とお前なんぞが比較になるか! 老いぼれると自惚れも激しくなるみたいじゃな、まるで小娘の頃の生意気さが戻ってきとるでないか!」

「ンだとこの野郎! どこの誰が生意気だってんだ鼻垂れが、えぇ!?」

「えぇ……?」

 

 怖ぁ……マリーさんの地が出てるよぉ。才蔵さんに釣られてヒートアップしだした彼女の、どうやら若い頃の面影らしい口調に慄く。

 ドラゴン騒ぎの時、リーベやワールドプロセッサに向けてもこんな感じにべらんめぇでキレてらしたけど、その時よりも感情を剥き出しにしているね。こわい。

 

 察するに、古馴染みである才蔵さんとのやり取りで次第に昔を思い出してきたって感じなんだろうけど、普段が物腰柔らかな淑女だからギャップがすごい。

 いわゆる第四次モンスターハザードら辺の、18歳だったマリーさんは常時こんな感じだったんだろうな。そう思うと、ヴァールやエリスさんが今の穏やかさに遠い目をする気持ちも分からなくもない、かもしれない。

 

 と、そのエリスさんが二人のやり取りに割って入った。柏手を打ち、呑気な声音で彼と彼女を宥める。

 

「はいはいそこまでそこまでー。古い友達同士で気のおけないやり取りは結構だけど、御堂さん……香苗さんと山形さんを置いてけぼりはよくないヨー」

「う……す、すみません先輩。御堂ちゃんに公平ちゃんも、見苦しいものを見せちまったねえ」

「し、失礼した……」

「い、いえ」

 

 さしものマリーさんも、自分より先輩にあたるエリスさんには強く出れないよね、そりゃ。

 才蔵さんもそれに応じてクールダウンするあたり、根っからキレてるわけでなくある種のじゃれ合いみたいなものだったみたいだ。

 

 改めて才蔵さんは博さんや栄子さん、光さん共々俺達に向き直り、深々と頭を下げる。

 

「いやいや、遠路はるばるよう来てくださった山形殿。香苗も、すまんな大変な時期に」

「そちらの事情はある程度、マリーさんやモリガナさんからお伺いしているよ。大したもてなしもできず恐縮だけれど、このような場所でよければどうぞ静養していってほしい」

「どうか我が家同然と思って、お過ごしくださいまし」

「……よろしく」

 

 紋付袴を着た、老いてなお盛んを地で行く様子で元気そのものな才蔵さん。

 ダンディにスーツを着こなし、堂々とした姿で穏やかに微笑みかけてくれる博さん。

 美しい、川をイメージしているような青い着物を身に纏いたおやかにお辞儀してくる栄子さん。

 そして、学生服に身を固めてどこか、所在なさげに口数少なく挨拶する光さん。

 

 この4人が香苗さんのご家族、御堂本家の方々だ。

 どんな言動をしていても溢れ出る上流階級オーラが眩しい、翻って我が山形家の庶民ぶりが浮き彫りになりそうな気分だ。

 これは、せめてこちらもパンピーながらしっかりと礼儀正しくご挨拶せねばなるまい。そう思い俺はその場に正座し、頭を下げて一礼した。

 

「こちらこそ、この度は滞在をお許しいただきまことにありがとうございます。お久しぶりです、皆様方……山形公平です」

「……ふふ。3日会わざればというけれど、概ね3ヶ月か。まるで別人のように大きくなられたね、山形くん」

「マリアベールからは聞いておったが、直に見ると……ううむ。少年でありながらどこか、途方もない遠大な歴史を思わせる。男児とは、短期間でかくも大成するものなのじゃなあ」

 

 博さんと才蔵さんが、揃って俺を、3ヶ月前よりは成長したと仰ってくださる。

 光栄だ……というかすごいな才蔵さん。感覚的なもので俺のコマンドプロンプトの部分に気づいてるっぽい。これで会うのは2回目なのに、さすがというかなんというか。

 マリーさんにも負けず劣らずの眼力、お見事だね。

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― 新着の感想 ―
[一言] これが上流階級の眼力……年の功かな?
[一言] マリーさんにとっては、ある意味罵り合える仲というのは貴重なのかも?
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