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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
第二部・第八次モンスターハザード編

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陰キャにとってはそもそも知らない場所に行くこと自体がプレッシャーだったりするのです

 3日後。予定通りに香苗さんの実家、御堂本家を訪ねる初日を迎えた俺は、家族と一緒に玄関前にて待機していた。

 待ち合わせ時間は朝の9時。あともう少しで香苗さんが車でやってくる手筈になっているから、そしたらそのまま一緒に隣県まで乗せていってもらうわけだね。

 

 ちなみに俺達の護衛であるエリスさん、葵さんは先んじて隣県に行っている。なんでもあれこれ手続きとか段取りがいる案件があるみたいで、香苗さんの実家で落ち合うことになっているのだ。

 その間の俺達の護衛は別の人が、遠くから監視というか付いていてくれているみたいだ。ありがたい話だね。

 

 で、いろいろ荷物を詰めた、大きめのリュックサックを抱えて待つ俺。並んで見送りに来てくれた家族達と、しばしの別れを前に歓談する。

 先日めでたく14歳の誕生日を迎えた我が愛しの妹、優子ちゃんが羨ましそうな声をあげた。

 

「いいなー兄ちゃん、御堂さんのご実家ってば超豪邸なんでしょ? そんなところに3日も4日もとか、セレブじゃん」

「あのなあ。普通の旅館とかじゃないんだから、そう気楽なもんでもないぞ? 言っとくけど」

 

 完全に俺のこと、遊びか何かに行くとでも思ってそうな彼女に答える。

 たしかに豪邸だしセレブな体験かもだけど、いうほどリラックスしたり楽しんだりできそうなイベントじゃないんだよねー。

 

 そもそもが倶楽部案件の余波みたいなもんだし、そうでなくとも香苗さんのご家族様方や親戚様方とお会いするわけで。

 陰キャコミュ障エターナルぼっち検定特級の俺ちゃんからすれば、あまりに不安すぎて昨夜は寝つけなかったほどだ。こういう時、話し相手が脳内にいるから便利だよね。

 

『あのさあ……別に話しするのは嫌いじゃないからいいけど、同じようなことしか言わないのは勘弁してよ。何度怖いだの不安だの緊張するだの言ったって、もうやらなきゃ仕方ないんだからさっさと腹括れって昨日だけでも何回言ったよ、僕』

 

 いや、それは……はい、ごめんなさいお手数おかけしました。

 脳内トーク相手のアルマさんに陳謝する。昨日はひたすらぼやく俺と、ハイハイって感じであやす彼だか彼女だかって感じで珍しく逆の構図になってしまった。申しわけない。

 

『まったく、コマンドプロンプトが何を恐れるんだか……むしろ君の妹の言うように楽しめってば。きっと素敵で豪華で美味しい料理がてんこ盛りで出てくるぞお。お風呂だって大きくて気持ちいいだろうしベッドなり布団だってきっとフカフカだ。せっかくなんだし堪能しないと君、人生損するよ?』

 

 あからさまに向こうで受けるだろう歓待を期待しての、まるでよだれを垂らしているかのような声色。

 まあ、こいつはこうだよなあ。意識だけでも楽しさを見出す謎なポジティブさ、これでこそアルマさんかもしれない。

 

 楽しめる分には楽しむべきってのは正論だから、努力しておくよとだけ返して。

 今度は母ちゃんと父ちゃんが俺に話しかけてきた。いつもどおりの、漫才みたいなやり取りだ。

 

「お土産ちゃんと持った? 忘れ物ない? あんたそそっかしいとこあるからね、向こうで粗相しないようになさいよ」

「母ちゃん心配しすぎだってー。なんたってあれだろ? うちのせがれときたらなんだっけ、コマ、コマ……?」

「コマンドプロセッサーでしょ、もう!」

「コマンドプロンプトです……」

 

 混じってる混じってる、コマンドプロンプトとワールドプロセッサが合体してるよママ上殿。いや別に、そんなの覚えてなくたって構わないんだけども。

 というか言われて気になってきた、お土産とかちゃんと持ってるよな俺? リュックの中を改めて確認する。うん、入ってる入ってる、うちの県の銘菓。

 

 着替えとかその他諸々も問題ない。一応携帯ゲーム機もあるほどだ。

 まあ、なんか忘れ物しても空間転移で戻ってこれるといえば戻ってこれるんだけどね。あまりそれありきで考えるのもちょっとね。

 

「公平さんのお留守中、家の護りはこのリーベにお任せくださいー! もしも悪い奴らが来ても指一本! 誰にも何にも触れさせませんよー!」

「リーベ……悪いな、任せるよ」

 

 俺が出かけている間、家を守るのは主にリーベに託すことになる。数日間だけだし、そもそも俺のほうで倶楽部を相手取ることになるとは思うけど、何をするか分かんないのがああいう人達の怖いところだからな。

 その点、リーベはあらゆる局面に対応できるだけの力がある。ステータスから見てもそれは一目瞭然なのだ。

 

 以前見せてもらった探査者としてでない、精霊知能としてのリーベのステータスを思い返す。

 

 

 名前 リーベ レベル420

 称号 精霊知能

 スキル

 名称 空間転移

 名称 医療光粉

 名称 破砕光粉

 名称 飛行

 名称 気配感知

 名称 防御結界

 

 称号 精霊知能

 効果 任意で称号とスキルを隠蔽できる

 

 

 免許証には載ってないスキルも加えての、これが受肉したリーベの真のステータスだ。

 称号が《精霊知能》になってるのと、スキル《空間転移》が追加されてるのを除けばほぼ免許証通りなんだけど……この称号《精霊知能》ってのが中々アレな効果で、要するに自分のステータスを偽装してしまえたりするのだ。

 

 受肉して探査者として活動するに際して、精霊知能であることとか空間転移能力を持つことを万一にも知られたくないがゆえの特殊称号なんだろう。

 つまり免許証に書いてある称号《癒し手》はまったくのダミーであり、それを看破するのは通常の鑑定スキルでは不可能だったりするのだ。

 俺の《よみがえる風と大地の上で》でようやく、その辺の偽装や隠蔽と全部貫通して見れるほどなのでかなり強固な偽装工作と言えるね。

 

 さておき、そういうダミーを除いて考えてもリーベの戦闘力は超一級だ。レベルこそ足りてないけど、立ち回り次第ではS級探査者相手にも引けは取らないんじゃないかな?

 攻撃用の《破砕光粉》は三界機構にすらダメージを与える威力があるし、《防御結界》の鉄壁ぶりはいわずもがなだ。支援用には《空間転移》や《医療光粉》もあるし、おまけに希少スキル《飛行》まである。

 まさにおせちみたいなステータスだね、超豪華。

 

 精霊知能として好き放題スキルを引っ提げて受肉したこの子を、そんじょそこらのモンスターなりオペレータなりが突破できるとは到底、思えない。

 それに加えてこの町自体が今、ヴァールが手配してくれた警備探査者の人達によってそれとなく護られてる状態だしね。かなりの数のオペレータが動員されているみたいで、なのに物々しさのまったくない雰囲気なのはさすがプロだよなあ。

 

 とにかくそんなわけなので、防衛についても特には問題ない。

 俺も安心して数日間、家を離れることができるってことだ。

ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー


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書籍、電子書籍ともによろしくお願いいたしますー!


作者てんたくろーのTwitter(@tentacle_claw)

もしくは

PASH!ブックス公式Twitter(@pashbooks)

にて詳しい告知をさせていただいております。ぜひともご確認くださいませ!

よろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 青樹さんのバグスキル「次元移動(仮)」は、本人が静止してないと発動できないんでしょうか? もし歩きながらでも発動できるなら、「潜入・情報収集」とかには重宝がられると思うんですけど…。 …
[良い点] アルマと山岡君の掛け合いで楽しむ方向に意識をシフト出来たのが良かったと思いました。 [気になる点] 称号《精霊知能》は受肉した精霊知能には全て与えられるんですか?因果律維持管理機構コマンド…
[一言] >かなりの数のオペレータが動員 法律上対人戦闘はできないけど、警備とかの見回りには起用できるんですね
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