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振り返るとこの夏休み、ほぼ毎日なんかイベントが起きてる!

 それなりに広い会議室、四角に並べられたテーブルの席にそれぞれ座る。一応上座に当たるのだろう場所には今回、話し合いの場を設けたヴァールとその補佐として、烏丸さんが座っていた。

 俺はといえば香苗さんの隣に座り、婦警さんに配ってもらったコーヒーをちょっと飲んでいる。熱い、舌火傷しそう。

 

「よし、それではそろそろ始めよう。スレイブモンスター密輸組織・倶楽部についての協議をここに開始する。烏丸、資料を」

「はい」

 

 ヴァールが話し合いの開始を宣言すると同時に、指示された烏丸さんが資料を配っていく。A4サイズの紙が数枚、クリップで止められている。

 中身は至って簡素に文字だけの、お堅い感じの文章だ。人によっては見てると眠くなるかもしれないけど、ここに集う人達ってばみんな、こういう読み物とかにも場慣れしてそうなすごい人達だもんな、俺以外。

 さすがに俺だってこんな場所で居眠りかます度胸はないけれど、ちょっと気を張りながら読もうかなと思う。

 

 資料が行き渡ってから、ヴァールは続けて言った。

 

「簡易的な資料につきレイアウトも簡素で恐縮だが、基本は口頭での議論となるだろう。資料はあくまで資料だ、そこのところはご承知いただきたい」

「ふむ……チェーホワ統括理事。倶楽部幹部である翠川の事情聴取内容についてですか、主な内容は? 本日の話し合いの焦点はそこがメインという認識でよろしいですか?」

「そうなるな。加えてダンジョン聖教のウィリアムズが、倶楽部の拠点から持ち出してきた情報についても後ほど神谷のほうから発表される」

 

 ベナウィさんの質問に、一応対外的にはソフィアさんってことになっているヴァールが答える。

 さっきから俺なりエリスさんなりがしきりにヴァールと呼んでいるけど、親しい間柄でのみ通用する渾名みたいなものだと郷田さんあたりは認識しているみたいだね。

 

 それはさておき大まかな話し合いの内容ってのはつまるところ、やはり翠川が取り調べの末に漏らしたらしい倶楽部の実態についてのようだ。

 加えて神谷さんのほうからも、例のUSBメモリから何やら得るところはあったらしい。いずれにしても組織の核心に迫る重大な情報なのは間違いないだろうし、心して聞かないとな。

 

 さて、とヴァールが語り始める。

 まずは倶楽部幹部、翠川の話だ。

 

「時系列の確認から行わせてもらおうか。3日前の7月31日。能力者犯罪捜査官のエリス・モリガナと早瀬葵が偶然、倶楽部幹部の翠川均と遭遇、戦闘に入った。翠川はその場で取り押さえて拘束後、負傷していたため市内の病院にて入院させていたのだが……翌8月1日、脱走したため再度取り押さえた」

「再度取り押さえの際、翠川はどこからか仕入れたエラーダンジョンのコアを使用してスタンピードを意図的に引き起こそうとしていました。居合わせた私と統括理事と、駆けつけてくれた早瀬と山形さん、御堂さんのお陰で未然に防ぐことができましたけど、危うく大事件でしたね」

「スタンピードが町中で、とは……恐ろしい話だねえ、そいつは」

 

 エリスさんの補足も入れながらの簡潔な説明に、マリーさんが眉をしかめてコメントを入れる。何よりもそう、町中でスタンピードが発生しかけたってのはとんでもない事態だ。

 春先、近所の商店街においてもスタンピードが起きたけれど、あれと同じ騒ぎがまた起こりかけたのだ。それも今度は人間の手による意図的なものというのだから恐ろしい。

 

「それを受けて昨日8月2日の朝10時から、この県警施設内において警察による翠川に対しての取り調べ、および事情聴取が行われた。当人が存外素直にいろいろと話したこともあり、昼食を挟んで後、16時には終了している」

「なお、この取り調べにおいてはチェーホワWSO統括理事並びに烏丸WSO日本支部局長補、郷田警察庁能力者犯罪対策局局長に加えて私、日本全探組理事の新川の4名も立ち会っています」

「各組織のお偉いさん方が揃って取り調べを見てたわけですか……」

「それだけ倶楽部の実態や動向については、元より日本国上層部も危険視していたということでしょう。それに今回、翠川の起こしたことがことですから」

 

 話を聞きつつ、香苗さんとヒソヒソと話す。思っていたよりこの国のお偉い方々は、倶楽部について危機感を抱いていたみたいでそれが意外だ。

 

 まあたしかに、年間10体もモンスターを密輸している組織なんてのが国内にいたんだから、政治や国際関係の観点からしても冗談じゃないだろうからね。

 加えてこないだのスタンピード騒ぎなんて、言っちゃうとテロ行為だし。警察庁の局長さんまで出張ってきてるのもおかしくないってくらい、翠川はやらかしたということなんだろう。

 

 そのように、各公的組織のトップ層の人達が見守る中で行われた事情聴取。そこで翠川は何を話したのだろうか。

 葵さんの電撃は懲り懲りだとばかりに素直に喋ったそうだけど……そもそもやつはどこまで何を知っているのやら。バトルジャンキーすぎてそんな細かいところまで興味なさそうだし、期待していいものなのかなあ。

 内心疑問視する俺をよそに、ヴァールは配られた資料を示して言う。

 

「翠川の発言内容についてまとめた、資料を見ながら確認していこうか──まず倶楽部という組織そのものについてだ」

「日本国内における倶楽部は全部で4つ拠点があり、近畿においては隣県にあるとのことです」

「4つ? なんか、少ないですね案外」

「なんなら各拠点の構成員も精々10名程度だ。世界各地の倶楽部と比べてもなお少ないと、翠川は供述しているな」

 

 ってことは概ね40人前後ってことか、日本国内においては。

 たったそれだけの人数で、スレイブモンスターなんてものを開発して世界中にばら撒くあたり、少数精鋭ってことなのかもしれないな……

 そしてその精鋭たちを率いている幹部が少なくとも3人、青樹さん、火野老人、翠川というわけか。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「素直に色々話した」?…注文をつける…というより、「駄々をこねる」かと思ってました。 ※「あの山形ってヤツと一回戦わせろ。そしたらしゃべってやる」とか…。
[一言] 郷田さん(ヴァールというのはチェーホワ統括理事の、ペンネームかハンドルネームかラジオネームかコスネームみたいなものかな?)
[一言] 大事なのはレベルとスキルで人数ではない、と。増えたら情報も漏れやすくなりますしね。
感想一覧
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