ロリババアとはどんな効果だ?いつ発動する?
通路を歩くことしばらく、能力者犯罪対策課の看板が立てられた部屋の前までたどり着く。
おそらく中でヴァールが待ってくれているのだろう、スキル保持者の気配を感じる。気になるのはそれが一つでなく、近くにも4人分の気配があるということか。
まさか翠川と青樹さんじゃないと思うけど、誰だろう? ヴァールが連れてきたのか、はたまた全探組が派遣してきた警備の探査者さんだったりするのか。
さしあたっては入ってみれば分かるだろう。
先頭を行くエリスさんが、閉まっていた対策課のドアを勢いよく開けた。
「失礼しますよーハッハッハー。WSOの年齢不詳統括理事はいらっしゃいますかーハッハッハー」
「師匠よりよっぽどロリババアな感じの美少女さんのことですよーはっはっはー! 失礼しまーす」
「ちょっ、お二人さん!?」
完全にいつものおふざけモードで突入していった! 嘘だろこの人達、どうかしてんじゃないのか!?
香苗さんと思わず顔を見合わせる。もう俺、この時点で帰りたいんですけど。視線で訴えかけると気持ちは分かりますけど堪えましょう、私もいますからと視線で返された。あまりの事態に、アイコンタクトで会話できちゃったよ俺達。
ともあれトンデモ師弟が突入してしまったのだ、仕方なしに後に続く。
中に入れば案の定だけど、スーツ姿の厳しいお兄様お姉様があちこちからこちらを見てきていて死にそう。いやあの、公務執行妨害とかでお縄だけは勘弁してほしい。俺と香苗さんは関係なくて先に入っていった二人だけがやらかしたんです!
「さすがにTPOは弁えてくれるかエリス、葵……」
と、部屋の奥にあるドア──隣の部屋と繋がってるみたいだ──からヴァールと、あとなんかいかにもお偉いさんって感じの警官服を着ているおじさまがやって来た。
でもおじさまはちょっと困惑というか、冷や汗をかきながらそれをハンカチで拭いている。自然体のまま、呆れ顔でエリスさんと葵さんを見やるヴァールとは対象的な緊張の姿だね。
「それと《ロリババア》とはなんだ? どういう意味だ、称号か?」
「どちらかといえば属性ですかねーハッハッハーなんちて。いやはや失礼しましたヴァールさん、緊張からつい口と勢いがスベって」
「なんならそれ以外のすべてがスベっていますけどねー私達。はっはっはー!」
「えぇ……?」
地獄よりなお深いところまでスベリ散らかしたことを、自分から言っていくのかよ。末恐ろしいな葵さん。
そして地味にヴァールもすっとぼけたこと言ってるし。どんな意味だ? じゃないよお前、そこはスルーしていいんだよ。エリスさんまで乗っかっちゃってもう、収拾がつかない感じになりそうだ。怖ぁ……
「え、えーと。やあ、ヴァール。それともここでは統括理事とお呼びしたほうが?」
「ああ、山形公平と御堂香苗。そう固くならずいつもどおりでいい。来てくれてありがとう、助かるよ」
さすがに話が進まないし、何よりおまわりさん達の珍獣を見る目があまりにもこわいので、意を決して俺からヴァールへと切り出した。
そしたら彼女は柔らかく対応してくれて、それでちょっと気分が楽になる。香苗さんもどこかホッとしているね。
やったぜ、少なくともこの場においてはヴァールに寄りかかっておけばとりあえずアウェイ感はなくなるはずだ。
なお早々にやらかした師弟はもう手遅れです、本当にありがとうございました。
「ハッハッハー、やらかしたー。裏社会でもスベリ散らかしてきた渾身のエリスさんジョーク、やっぱり健在かあ」
「うーん師匠のスベり芸、やっぱりサイコーですねー! 突拍子もないことしてればウケると思ってそうなの、すごくグッドですよはっはっはー!」
「ハッハッハー、泣くぞ?」
「怖ぁ……」
この期に及んですっとんきょうなエリスさんもそうだけど、地味に葵さんの発言がおかしい気がする。自分の師匠に対して何か、著しくよくない感情を抱いてませんか? 主に愉悦的な。
尊敬は間違いなくしてるんだろうけど、それはそれとして何かこう、歪んだ愛着を感じる。弟子版青樹さんかな?
いろんな師弟関係があるもんだなあと、密やかに背筋を寒くしたりしていると、さっき感知していた気配に動きがあるのを察知する。
さっきヴァールがやってきた部屋からさらに、4人のスキル保持者がこちらに向かってやってきたのだ。
「まったく騒がしい師弟さねえ……はしゃぎたい年頃の葵ちゃんはともかくエリス先輩は、もうちょい落ち着いてもいいと思うんだがねえ、ファファファ」
「あちらの青髪の方がミス・モリガナですか。私もS級として噂は耳にしておりましたが、実在したのですねえ」
「マリーさん……ベナウィさん!」
そのうち二人は俺にも馴染みの深い、S級探査者の人達だ。
マリアベール・フランソワさんとベナウィ・コーデリアさん。ともに邪悪なる思念とも戦った、決戦スキル保持者でもある。
「初代聖女様……このような方なのですね、神谷様」
「ふふ。ええ、そうよ騎士オーロラ。いつも明るくて朗らかで、私を含めた歴代聖女達すべてを温かく見守ってくださっているの。まさしく"聖女たちにとっての聖女"なのよ、うふふ」
「げえっ……って言ったら悪いけどあえて言うよ、げえっ! 神谷くんにウィリアムズくん!?」
そして続けて現れたのが、ダンジョン聖教は先々代聖女の神谷美穂さんとダンジョン聖教騎士団のオーロラ・ウィリアムズさんだ。
こちらの二人は初代聖女の称号を冠するエリスさんと縁が深くて、時折どこかの狂信者たちのようなムーヴを彼女に対してするものだから、俺としてもどこか他人事じゃない関係性だったりするね。
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