精霊知能にとっても神いわゆるゴッド
「……なるほどー、とにかく大変だったんですね公平さん。お疲れ様でしたー」
なんやかんやと今日もいろいろあった末、早めに帰ってきた俺ちゃん。自室にてリーベと並んでベッドに座り、これまでの経緯について説明していた。
なんせ新スキルのこととかヌツェンのこととかもあるし。リーベの話も聞いておきたかったからね。
「結局、本来予定していた翠川の事情聴取とか、それを受けての俺たちの話し合いとかも全部わやくちゃだ。まあ、今頃ヴァールが再度事情聴取を行っているだろうし……数日後には聞けるんじゃないかな、いろいろ」
「あ、さすがに明日また来てくれ、とかじゃないんですねー」
「なんせ余罪追加だもんよ、それも現行犯で。警察やら全探組、ダンジョン聖教を交えての協議も改めてしなくちゃだろうしな。それに優子の誕生日もあるってんで、気を遣ってくれたみたいだ」
俺達は暇でも、ソフィアさんとヴァールは今頃方々を駆け回っていることだろう。想定していない脱走行為にスタンピード誘発と、さらに罪状を追加しちゃった翠川への対応を、関係各所と話し合うのは急務だからね。
そんなわけで翠川から得る情報について、俺達まで話が来るのは少し先のことになる。こちらとしても、もうその辺はそっちのペースに任せますってなもんだし、ひとまず待機ってことになったのである。
「じゃあ、優子ちゃんの誕生日プレゼントとかもどうにか買いに行けそうですねー。ギリギリでちょっと心配しましたよー」
「そうだな。というわけで明日、優子が欲しがってるバッグを売ってるって店に案内してくれるか? リーベ」
「はいー! もちろんですよ、公平さんとデート、デート!」
はしゃぐリーベ。そう、俺たちは明日中には隣県は駅チカにて、妹ちゃんが春先から欲しがっていたバッグを買いに行かなきゃいけないのだ。
ぶっちゃけ倶楽部とかよりこっちのほうが俺にとっては大切だ。何が悲しくて犯罪組織に振り回されなきゃならないのかって話だし。せめて家族の誕生日くらい、普通に祝わせてほしいもんだよね。
そんなわけでリーベの言うとおり、ちょっとしたデート気分で明日は駅チカなう! だ。
そもそもあんまり行ったことのない場所だから緊張する、なんか怖いお兄さんに囲まれたりしないだろうな怖ぁ……
「美味しそうな料理店もいっぱいありましたし、お昼もあっちで食べたいですー!」
「まあ、せっかく行くんだしグルメには走りたいよなあ。というか本当お前も、食欲に忠実というかなんというか……明日の晩、焼肉だぞ?」
「えへへー! 受肉してからというもの、食の喜びに目覚めちゃいましたー!夕飯はそれはそれとして、お昼も美味しくいただいちゃいますよー!」
すぐ食い気に走るよねと思わずつぶやくと、照れたようにかわいく笑ってリーベは俺にもたれかかってくる。うーん密着。
……受肉かあ。それを言えば、ヌツェンとかの話も聞いておこうか。なんか、俺がシステム領域から離れて輪廻に乗って以降にも向こう側ではいろいろ、あったみたいだし。
「それでさあリーベ、俺の新スキルで呼び出した、ヌツェンのことなんだけど」
「あー、元気してましたー? あの子ってば堅物ですしー、自分の担当範囲でやらかされたこととかコマンドプロンプトから直々に呼び出されたってところで相当、ガチガチだったと思いますけどー」
「おお、よくご存知で……って、俺が呼んだのも強張っちゃってた原因なのか」
さすがはリーベというべきか、最近までのシステム領域についてはやはり、ヴァールより詳しいみたいだ。
しかしアレか、ヌツェン……俺から呼び出されたってのも怖かったのか。
なんか悪いことしちゃったかな。別にあの子に、責められるようなところはなかったんだけど。
バグスキルという形でバグ対応をしようと決めたのはあくまでワールドプロセッサだし、あの子はそれに従って己の権限の範疇でバグスキルを製造したにすぎない。
翠川はじめバグスキル保持者がそれをもって犯罪に走ったところで、ヌツェンにはなんの責任もないのだ。
包丁持って暴れた犯罪者がいたとして、包丁のメーカーまで責任追及がなされるなんてありえないからね。強いて言えばやはり、そもそも包丁を売ろうと考えた立場に等しいワールドプロセッサくらいなものだろうか。
「俺としては、本当に他意なく《system:スキルリムーバー》を使ってほしいから来てもらったってだけなんだけどなあ」
「責任感が強すぎるんですよ、あの子ー。しかも今やシステム領域中で噂になっているあなたに呼ばれて、気にしないわけないんですからー」
「そういうもんかあ……って、え? 噂? 俺が?」
ヌツェンのことはともかく、システム領域内で俺のことが噂になってるの? なんで?
尋ねるとリーベは、にっこり笑って話し始めた。
「そりゃー、500年間魂なんてあるはずないと思っていたコマンドプロンプトが、実は存在していてずっとこちらを見守っていた上、最後のフォローまで果たしてくれたんですよー? 今じゃ公平さん、精霊知能達から神か父親のように慕われはじめていますよー」
「怖ぁ……何それ。いきなり知らんとこから子供が生えてきたんですけど」
「特に大ダンジョン時代以降に発生した子たちは、現世の影響も強く受けてますからねー。それこそ救世主! なんて言い出してる子までいるほどでしてー」
「えぇ……?」
すみません、システム領域にまで信仰の輪が広まるのやめてもらっていいですか?
っていうか何考えてるんだ今の若い子達は。シンプルにそこが分からない。もしかしてあのヌツェンも実は、そんな感じに俺のことを父か救世主か何かみたいに思ってたりするのか?
怖ぁ……
こんなんじゃ俺、精霊知能を召喚しづらくなっちまうよ……
せっかく得た新スキルに何やら、不穏なものを感じてしまう俺なのだった。
次話から新エピソードですー
しばらくまた、一日一回投稿でお送りしますー
ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー
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