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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
第二部・第八次モンスターハザード編

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回らないタイプのお寿司なら仕方ない

 気絶した翠川をヴァールが抱えて、俺たち3人はダンジョンを後にする。最深部まで潜ってコアを獲得するわけでもない、いわゆる途中離脱だ。

 今は踏破よりも翠川の身柄の確保が先決だ。そしたらヴァールが警備にあたっていた探査者を動員して、このダンジョンの調査と探査を任せるみたいなのでそちらの仕事とさせてもらおう。

 

「やれやれ。一時はどうなるかと思ったが……どうにか被害が拡大せずに済んでよかった。本当に助かったよ、山形公平、葵」

「そう言ってもらえると嬉しいよ。俺としても、住んでる町が酷いことにならなくてよかったしね」

「はっはっはー! いや本当、一歩間違えれば大惨事でしたよ」

 

 ヴァールの《空間転移》でダンジョンの出口の手前まで到着しつつ、一段落したことでそれなりに弛緩した空気が流れる俺たち3人。

 無論、翠川を護送中ということもあって油断はしていないけど……難しい局面を乗り切った直後だからね。打ち上げめいたノリになるのも仕方ないのかもしれなかった。

 

「翠川の捕縛に、ウィリアムズさんの取ってきたスレイブモンスターの製造法についての資料。そしてダンジョン聖教との連携……倶楽部ももう風前の灯って感じだよなあ」

「とはいえ、本番はここからだ。翠川を捕らえた以上、青樹や火野も本腰を入れて動き出すだろう。やつらの能力は未だ得体が知れない。警戒しなくてはな」

 

 倶楽部の活動的にはもう、ほぼほぼ詰みみたいな状況だろうけど。それとこれとは別で、残る幹部達が何か仕掛けてくる可能性は高い。というか、確実に何かしてくるんだろう。

 それを思えば用心するに越したことはない、と。ヴァールらしい堅実さで俺も、葵さんも気を引き締め直す。

 

 ここからだ、戦いは。

 対オペレータとなれば俺は基本、補佐とかフォローに徹する形になるけど、今回のようにスレイブモンスターを引き連れてきたらそいつらを片付けることくらいはできる。

 いわば露払いだね。ついに到達した新しい時代を、護ろうとする人達に余計な手出しはさせないさ。

 

「とりあえず外に出ましょうか、お二人とも。師匠達にもここで何があったかとか、今後についてとか聞かなきゃですしねー」

 

 葵さんに促され、ダンジョンの出入り口から外に出る。入道雲の立ち込める晴天が、洞窟から出た実感を与えてくれる。

 脱出だ。すぐさま近くにて待ってくれていた、香苗さんとエリスさんが駆け寄ってきた。

 

「公平くん! ヴァールさん、葵さんも!」

「お、帰ってきたねえ。おかえり葵、それにヴァールさんに山形さん」

「ただいま帰りましたー! はっはっはー!」

 

 彩雲三稜鏡で未だ、ダンジョン近辺に何人も立ち入らせていない香苗さんと、そんな彼女を傍で護衛していたエリスさん。お二人とも特に何も、変わったところはないみたいだね。

 ヴァールが、担いでいた翠川をエリスさんに指し示す。《雷魔導》の直撃を食らった彼の意識はまるでなく、もうしばらくは眠ったままなんだろうなって感じがする。

 

「少しばかり手間取りはしたが捕縛完了だ。御堂香苗、バリアは解いてくれていい。この男は警察に引き渡す」

「了解しました。戻りなさい、彩雲三稜鏡」

 

 もうバリアを解いて、警察なり警備探査者の人達なりにも来てもらっていいとなり、香苗さんはすっかり慣れた様子で彩雲三稜鏡を自分の手元に戻した。

 立ち入りが可能になって、すぐに警察の人がやってくる。その応対をヴァールがしているのを横目に、俺は香苗さんとエリスさんにダンジョン内で何があったのかを軽くだけど説明していった。

 

「かくかくしかじかあーいえばこーいう────ってなわけで、翠川のバグスキル《座標変動》はヴァールの後輩さんに消し去ってもらいました」

「精霊知能、ヌツェン……! バグスキルを取り除いたこともそうですが何より! 公平くんがついに召喚スキルまで手にされたとは! 救世主の呼び声に応え、配下たる上位存在達が今後、現世に現れるというわけなのですね!!」

 

 説明を受けて、まあ大体分かっていたけど香苗さんが暴走を始めた。神話です! これこそまさに救世主神話伝説です!! などと奇怪な言動に及んでいらっしゃる。

 この様子だと近々、実際に使うところを披露しないといけなくなりそうだ。明らか興味津々だもんなあ。

 

 どうせなら何かしら便利な子を呼んでみるかぁー、誰がいたっけなあ。などと考えつつもはしゃぐ彼女を眺めていると。

 隣でエリスさんがなんかニヤニヤしていた。葵さんに向け、からかうように笑いかけている。

 

「おやおや葵さんや、昨日師匠が撃たれたことにそんなに腹を立てていたのかい? なんてかわいい弟子だろうねーまさか師匠のためにブチギレるとは」

「はあ? キレてませんけど? 全然まったくこれっぽっちもキレてませんけど。やですねー自意識過剰な人はこれだから。尊敬しているからってそこまでそんな、重いキレ方するわけないじゃないですか」

「ハッハッハー照れるな照れるなういやつめ。翠川を倒したご褒美もあるし、ブチギレたと認めるんなら今日はエリスさんが、回らないタイプのお寿司でもご馳走してあげよう」

「もちろんブチギレましたよー当たり前じゃないですかー! わーいやったーお寿司だはっはっはー!!」

 

 コントかな?

 弟子が自分を想って怒ったことに喜色満面のエリスさんと、師匠への照れ隠しにつっけんどんになる葵さん……という構図だったのに、食欲に負けてすっかりデレデレし合っているバカップルならぬバカ師弟の様相だ。

 でもまあ、回らないタイプのお寿司ならしかたないよね!

ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー


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書籍、電子書籍ともによろしくお願いいたしますー!


作者てんたくろーのTwitter(@tentacle_claw)

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よろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 回らないお寿司なら仕方ない…うん、仕方ないw
[一言] 寿司が回らないと、手のひらがくるっくる回るのだ!
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