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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
第二部・第八次モンスターハザード編

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全自動モンスターぶっころトラップ

『聞こえているだろう山形公平、国道沿いの市民病院前だ! すまないが転移を頼む、このままでは市民に被害が及んでしまう!』

 

 電話越し、どころか遠くから叫んでいるようなヴァールの声が、たしかに俺の耳にも届いてくる。

 おそらくは戦闘中なのだろう。翠川が隠し持っていたというダンジョンコア、それもエラーダンジョンコアを用いての人為的なスタンピードを防ぐべく、必死に瀬戸際で食い止めているのだということが俺にも分かる。

 

 言うまでもなく緊急事態だ。俺は即座に結界を発動した。

 

「神魔終焉結界!」

「彩雲三稜鏡!」

「フーロイータ! からの《雷魔導》!!」

 

 人通りの多い往来だがそんなことは関係なく、俺たちは臨戦態勢を整える。神魔終焉結界の蒼いコートを纏う俺に、彩雲三稜鏡を羽織る香苗さん。

 そして対モンスター兵装AMW・フーロイータを取り出して、同時に《雷魔導》を発動する葵さん。雲一つない晴天のどこか上空から一筋の雷鳴が走り、彼女へと下った。三叉槍内蔵のスキルブーストジェネレータが稲妻を受け止めて、増幅し強大な力となるのだ。

 

「公平くん、準備万端です!」

「病院までの空間を開けてもらえれば先陣を切ります! 《雷魔導》雷槍技!!」

「了解です、今──開けます!」

 

 矢継ぎ早に告げてくるお二人に、俺も問題なく応えて権能を使う。空間転移、座標は市民病院にセット!

 開く別地点へのワームホール。ここを潜れば即座に、市民病院の前にまで辿り着ける。そこまで行けばすぐにヴァールとエリスさんにも合流できるだろう。

 そして、まさに一番槍を葵さんが務める!

 

「────プラズマチャージ!! アクセルライトニングッ!!」

 

 増幅された雷がフーロイータから放たれ、紫電となって彼女の全身を眩く照らす。強化された《雷魔導》のこの威力は、アンジェさんやランレイさんにも迫る威圧と迫力がある。

 そのまま技を放ち、葵さんは一筋の光となってワームホールを突き抜けて行った。次いで俺と香苗さんもすぐ、後を追って市民病院へと転移する。

 

 空間を繋げる穴を潜れば、俺も何度か来たことのある病院のすぐ真ん前だ。ワームホールを閉じつつ、瞬間的に周囲を確認する。

 周囲に人影はない……けど、病院の中に大勢の人が避難しているのが見える。モンスターが施設内に入り込んでいる感覚はないから、なんとか最悪は免れているか。

 

 ならばこのまま合流すべきと、俺と香苗さんはモンスターやスキル保持者の気配がするほうへと地面を蹴り、空高く飛んだ。

 すでに葵さんは合流しているんだろう、3つのオペレータの気配と、現世に現れては即座に消えていくモンスターたちの気配。

 それらが示すところに、俺は呻いた。

 

「エラーダンジョンを意図的に生成して、スタンピードを町の中で起こそうとしているのか。なんてことを……!」

 

 どうにか防げているもののこの状況は、完全にスタンピードが起きる寸前だ。翠川め……絶対に許されないことに手を染めたな。

 仮にヴァールやエリスさんがいない状況でこれが発生していた場合、まず真っ先に狙われるのは罪なき一般市民だ。ましてやここは病院のすぐ傍、体の調子が悪い人達が間違いなく大勢、犠牲になってしまうことは容易に想像がつく。

 

 あまりにも悪辣だ。卑劣な蛮行という表現ですら生温い、まさしく外道の手口。

 そもそもどうやってダンジョンコアを隠し持っていたのか、身体チェックには引っかからなかったのか? などといった疑問は尽きないが、まず何よりも先に翠川の悪意への怒りが今、俺の中にはあった。

 

「──いました! ヴァール、エリスさん、葵さん!!」

 

 空高く飛んで俯瞰してみれば、どこで何が行われているのかは具に分かる。たった3人でスタンピードを食い止めんとする探査者達の姿とて、もちろん例外じゃなかった。

 駐車場のすぐ近く、ダンジョンの入り口がありそこからモンスターが湧いて出ている。それをヴァールが《鎖法》の鎖で巻き取り貫き、エリスさんが《念動力》のナイフで打ち抜き、葵さんがフーロイータと《雷魔導》で薙ぎ払っていた。

 

 間に合った! ここからは俺たちも参戦だ、香苗さんとともに急降下する!

 

「合流後、彩雲三稜鏡にて周囲の保護を行います!」

「頼みます! 俺は結界で、モンスターたちを一網打尽に!!」

 

 短くやり取りして段取りを済ませ、俺達は戦士達のすぐ近くに着地した。そのまま即座に次の行動へ移る。

 香苗さんが彩雲三稜鏡を振るった。クレセントゴーレムの素材でできたマントが細かい粒子となって分散し、ダンジョンの入り口を起点として四方10mほどをカーテン状に囲む。

 

 簡易ながら、侵入も脱出もさせないバリアの構築だ。これでひとまずは周辺市民の安全はある程度、担保された。

 とはいえ、そもそもスタンピード自体がもうこれで終わりなんだけどな! 俺はスキルを発動した。

 

「《清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師》! 全員、ダンジョン周辺から離れて!」

「っ!!」

 

 攻勢結界。ダンジョンとそこから這い出るモンスターたちを基点に、俺の攻撃を自在に伝導させる特殊な空間を形成する。

 同時にヴァール達3人に避難を呼びかければ、彼女らはとっさのことながら即時退避をしてくれた。助かる……敵味方の識別はできるにしても、巻き込んでしまうのはちょっとね。

 

 そして、これなら問題はない。

 攻勢結界の中においてのみ、半永久的に続くよう設定して──俺は自身が持つ、モンスター浄化用スキルを併用した。

 

「《目に見えずとも、たしかにそこにあるもの》!!」

 

 瞬間、青白い炎が結界内を埋め尽くす。

 ダンジョンから出てくるモンスターを全自動で浄化し、輪廻へと返す即興のトラップが完成したのだ。

ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー


【ご報告】

「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」2巻、本日発売です!

書籍、電子書籍ともによろしくお願いいたしますー!


作者てんたくろーのTwitter(@tentacle_claw)

もしくは

PASH!ブックス公式Twitter(@pashbooks)

にて詳しい告知をさせていただいております。ぜひともご確認くださいませ!

よろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 最近厨二病に思いを馳せる展開が多かったのであらためて読み返してみると、某ライダーの劇場版風に街中で並んで同時変身て、これも1度はやってみたい胸熱シーンですよね〜。 本人達それどころでは…
[一言] 相変わらず名称から1mmも効果予想できんやっちゃな ぼっちなら問題ないけど連携取る場面になったら味方が解釈するまでワンテンポ以上遅れるやつや やっぱナチュラルボーンぼっちなんやなって
[良い点] 山形くんがM○RVEL並みにヒーローしててカッコいい [気になる点] >人通りの多い往来 シャイニング……バズり……うっ、頭が
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