道なき道を切り拓く、それが彼女の忍花道!
《召喚》と《忍術》、それぞれのスキルについての説明はひとまず今回、こんなところだろう。あまり一息に説明しすぎても、理解が追いつかないことだってあり得るからね。
それに基本事項さえ踏まえてしまえば、後やることと言ったらひたすら探査を繰り返しての場数経験の獲得だ。
実戦の中で自分達のスキルについての理解を深め、どのように運用していくのかを考えてスタイルを構築していく。それこそが直近でアメさんとガムちゃんが考えていくべき部分だと言えるだろう。
「3人揃っての探査の中で、自ずと連携も上手くなっていくだろうし。慣れていけばいくだけ、チョコさん含めたパーティ・おかし三人娘の完成度は高くなっていくと思いますよ」
「そうですね、先生。一歩ずつ一歩ずつ、ゆっくり確実にいろいろと試していきたいと思います〜」
穏やかな笑みを浮かべてのほほんとした空気を醸しつつも、けれどその目は真摯に自身を高めることを見つめているアメさん。
始原の4体達を召喚可能になり、ひとまず第一歩目を踏み出す分かりやすい指針もできた。あとは経験を重ねていくことで、この人は《召喚》使いとしての道を進んでいけるだろう。
「ですけどまあ、パイセンには今後も折に触れて個別指導はお願いしたいなとか思うんですけどね。あの……その辺、どうですかね?」
一方でこちらはこちらで、ギラギラした熱意とともに向上心を漲らせているガムちゃん。
覇王忍者というものがなんであるのか終ぞ、俺には理解できなかったけど……まあとにかく目標として明確なものができたのであれば何よりだ。
この子はなんだかんだ真面目だし頭も切れる。今までは影も形も見えていなかった《忍術》に関してのあれこれを知った今なら、目指す地点に向けて邁進していけると信じている。
そんな彼女の、どこか頼み込むような表情と声音に俺は、もちろんと笑顔で答えた。
「俺でよければ喜んで。《忍術》についても《召喚》に関しても、まだまだ話せることはいろいろありますからね」
「ホントですか! アメ姉、やったね!」
「そうね、ガムちゃん〜! 先生、今後ともよろしくおねがいします〜!」
喜色満面の二人。嬉しそうに感謝してくる姿に、なんだか照れくさいやらありがたいやら、力になってあげたいと思うやら。不思議な愛着も湧いてくる俺だ。
別に現時点でも、この二人ならばあとは勝手にやっていっても強くなれるとは思うんだけどね。
伝えられてないことがあるってのは本当だし、理論だけでなく実践におけるあれこれも話しさせてもらえる機会があるのはありがたい。
俺としても、曲がりなりにも教える役目を請け負った以上、中途半端に放り投げる真似はしたくないからね。
さすがに毎日とかって頻度では行えないだろうけど、それでも可能な限りは二人について、伝えられることを伝える機会を設けていきたい。
そんな思うところもあって俺は、二人の決意と熱意に応じたのだった。
「こちらこそ、話とか苦手だし分かりにくいところはあるかもしれませんけど、今後ともよろしくおねがいします」
「いえいえ! すごく分かりやすかったですよ先生〜、ねっ、ガムちゃん」
「そうですよパイセン。そもそも詳しすぎってくらいスキルについて詳しいのもあって、正直意外だった程です。え、まさか家でリハとかしてました? みたいな」
「してないよ? いやいや、え? そんな分かりやすかったんだ……」
からかうように言ってくるガムちゃん。どことなく漂う小生意気さが逆に可愛くすらあるけど、言ってることはべた褒めなのでめちゃくちゃ照れる。
アメさんのお墨付きもあるし、なんなら隣で香苗さんと葵さんまでうんうんと頷いてくれている。マジか。人にものを教えるの、もしかして得意だったりしちゃうか、俺?
「傍から聞いてるだけの私達にも有意義な指導風景でした、公平くん。あなたが今回伝えてくださった知識は、あるいは今後の探査者界隈においても重要なものになるでしょう」
「特に《忍術》絡みの話は本気で値打ちありますね。忍術の習得条件や上位スキルへの派生、それらを踏まえて《忍術》保持者はどのように鍛えていけばいいのか……基礎事項と仰ってましたけど、もう今の時点で歴史的な情報がもたらされてますよ」
「そ、そんなにですかぁ……」
なんか、今後の界隈についてまで話の範囲が広がっているけど……たしかに《忍術》のこれまでや現状を踏まえると、そう言われるだけのことはあるのかもしれない。
文献ほぼなし、先人は非協力的。それゆえ情報は限りなく少なく事実上独学での孤軍奮闘を強いられるハードモード。そんな状態から少なくとも、スキルの概要と成長例の一つが今回、示された形になるからね。
今後ガムちゃんが俺から聞いた話を実践して、自身の体験として落とし込んだ時。それを資料にまとめ、後世に残していくとするならば。
それは間違いなく界隈にとって大きな価値のある財産だ。そこからさらに探査者達自身の努力と鍛錬により、俺にも見当がつかない方向に派生していくかもしれない。
「……つまりはガムちゃんこそが《忍術》関係の開祖ってことになるんだろうね。大変だけど君にしかできないことだ、こればかりはね」
「責任重大……ですけど、覇王たるもの先駆者として、偉大な功績を残すは使命であり運命です。問題なくやり遂げますよ、この覇王忍者・新潟花夢は!!」
「う、うん。頑張って、はは……」
重責を、未だ幼いガムちゃんに負わせることの是非に一瞬、戸惑いはしたけど。このことは間違いなく彼女の探査者人生に終始、つきまとっていくと思われる。
だから、あえて口にしたんだけど……強いな、この子は。抱えたものの大きさを、それでも闘志に変えて受け止めた。
覇王忍者の意味は分からないけど、たしかに覇気ある少女だ。
新潟花夢の大成に確信を抱きながらも、俺は強気に笑う彼女に敬意を抱いた。
ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー
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