器用貧乏?いいえ万能なスキルです
後世に《忍術》というスキルについての資料を残す、という意味合いをも持ち始めたガムちゃんへのレクチャー。
まずはガムちゃん自身がスキルへの理解を深め、理論と実践の中で己の知識を体系化し、いつの日か現れるかもしれない新たなる忍術使いに対しての指導書を作る……などという、なんだか壮大な話になってきていて怖い。話が一気に膨らんだなあ。
「そのためにもまずは私が、一流の《忍術》使いにならなければ話になりません。その取っ掛かりとしてのご指導を山形先輩、ぜひともよろしくおねがいします」
「あ、うん。分かった……責任重大だね。俺としても頑張るよ」
結構、先のことを見据えているというか後進への意識があったりするガムちゃんが意外だ。いやまあ、なんだかんだと真面目な子だし、界隈全体にも目を行き渡らせようとしているのは分からなくもないけど。
将来的に実力をつけて大成していった時、あるいは香苗さんのように探査者としての意識を高く保った、模範としての姿勢を見せるようになっていくのかな。
だとしたらなおのこと、今この時点で彼女に対し、少しと言えどアドバイスすることになった俺の役割は大変なものだ。
しっかりと説明とかさせてもらわなくちゃな、とアメさんの時同様、気を引き締めて話し始める。お題はもちろん超希少スキル《忍術》についてのあれやこれやだ。
「《忍術》。効果は文字どおりに忍術を使えることなんだけど、この忍術ってのがまた恐ろしく、いろんなことができる技術でね」
「火遁、水遁、雷鳴、鎌鼬──いろんな属性の魔導、魔法系スキルに近しい攻撃法がある、くらいは私も調べましたね」
「そう、まずもって多彩な属性攻撃ができるってのが、忍術系スキルの大きな強みに挙げられる。いろんな召喚物を喚び出す《召喚》とは別の意味で場所を選ばない、状況に応じた運用ができるんだ」
各属性の魔導系や魔法系スキルにおける、最大火力に比して概ね半分程度の攻撃を用いることができる。それが《忍術》が持つ攻撃面でのポテンシャルだ。
ある程度までならば香苗さんの《光魔導》や葵さんの《雷魔導》の真似事ができるというわけなので、その時点でもう有用であること間違いなしと言える。
加えて全属性の攻撃が行えるので、たとえば水が弱点のモンスター相手には水遁で攻めたりしつつ、雷が弱点のモンスターには雷属性の雷鳴で攻撃したりもできるのだ。
つまるところいついかなる時や場所、相手であってもほぼ確定でアドバンテージを取ることのできるインチキスキル。という側面があるわけだな。
「攻撃系の忍術の習得については、これはある程度レベルが関係してたはずだ。たしか……10上がるごとに一つ、基本属性の忍術を覚えられるんだったか」
「あ、そうなんですか? たしかにこないだ、パイセンに見てもらった探査の後に新しい忍術……水遁を覚えましたけど」
「おお、おめでとう! 基本属性になる火、水、木、土についてはそんな感じで覚えていけるよ」
三人娘は比較的スローペースで探査を行っているって話だし、レベル依存での習得となればそれなりに時間がかかるだろうな、4属性まで覚えきるのも。
とはいえレベル30の時点で基本的な攻撃法が確立するのは大きい。加えて言えばそこからさらに、発展性が出てくるからね。
「基本属性の習得後、しばらく間をおいてレベル100からはスキルが上位のものに変化するんだけど……そこからはそのスキルを起点にして、新規忍術を覚えていく形になるかな」
「上位スキル……? え、そんなのあるんですか!」
「《忍術》については確定でね。《忍法》っていう、忍術を複数同時発動できるようになるスキルだったはずだよ、たしか」
特定のスキルについて、レベルの高まりや習熟していくことをトリガーにして、スキル名が変化することがある。スキルの進化というか、まあ成長だね。
マリーさんの《居合術》なんてのも実はその類で、元は《剣術》だったのが特定の条件を満たすことで進化していったスキルだ。何もないところからいきなり獲得できるスキルじゃなかったはずだし、あれ。
そして《忍術》においても同様だ。基本属性の術を覚えた後、レベル100まで到達することをトリガーに《忍法》を獲得するわけだね。
効果は忍術を同時発動できるってものなんだけど、忍術をメインに使うオペレータにとっては、これを使うことが次のステップへの入り口になる。
「派生スキル……それ自体は珍しくないですけど、《忍術》にもあるなんて知りませんでしたね。というか山形くん、どこからそんなことを知ったんですか、本当に……?」
「ええと……これについてはあの、ソフィアさんやヴァールからもいろいろって感じで。はは、仲良くさせてもらってますから、あはは!」
「ああ、統括理事の……たしかにあの方ならなんでも知ってそうですもんね。なんせうちの師匠の倍近く生きてるって噂ですから、はっはっはー!」
葵さんの疑問に、咄嗟にソフィアさんとヴァールの名前を出す。大ダンジョン時代の生き字引とも言える年齢不詳のミステリアス美女を引き合いにしたからか、彼女はあっさりと納得してくれた。
べ、便利だな〜統括理事。さすが長生きしているからか、説得力が違うわ。
ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー
【ご報告】
12/2に発売されます
「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」
2巻の特典についてご報告いたします!
各書店様の特典はそれぞれ
・佐山の日常
・関口の昔日
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の、3種類となっております!
また電子書籍特典はマリアベール視点からみた山形についてを描いた前日譚になっています!
基本山形視点の本編なため、他キャラ視点での話が読めるのは概ね特典関係ばかりですので、興味がお有りの方はぜひぜひ、お求めくださいませー
現在サイン本、書籍版、電子書籍版の予約も行っておりますので、
作者てんたくろーのTwitter(@tentacle_claw)
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よろしくお願いいたします!




