表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
第二部・第八次モンスターハザード編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

646/1846

見て盗めも何も見るものがないんですがそれは……

 アメさんのスキル《召喚》についての話とか説明についてはこの辺にして、次はガムちゃんのスキル《忍術》だ。

 こちらのスキルについては《召喚》以上にシビアな現状で、マジでほとんど文献がないらしい。そもそもからして。100年続いた大ダンジョン時代にあってなお数人しか過去、保持者が現れなかったっていうんだから筋金入りだろう。

 

 その辺、散々資料を探し回ったんだろうガムちゃんが憮然とした面持ちで、不満あるいは愚痴を溢していた。

 

「過去の保持者の人達もさすがに、ちょっとくらいは資料なり残しとけよって思いません? 日記とかでいいんですよ、手記とかでも。ガッツリした研究成果どころか《忍術》についての言及がされた資料すら見つからないのはさすがにおかしいです」

「まあねえ。そこについては俺も、過去の保持者達は後続の保持者に何か遺すつもりはなかったのかな? とは思うかなあ」

 

 世界的に見ても極めてレアなスキルについて、保持者は何かしら情報を残しておいてもいいんじゃないかとは、たしかに俺も感じる。

 レアスキルについてはとどのつまり、過去の保持者が残した情報こそが頼りとなる。全探組に資料として引き渡されたものもそうだし、個人的な日記や手稿などに書きまとめた雑感だけでも、あるとないとでは大違いだ。

 

 そうしたものをほとんど一切、残すことのなかった過去の《忍術》保持者は一体、どういうつもりだったのか。理由があって何も残さなかったのか、それとも面倒くさがったとかだろうか。

 ガムちゃんの指導官としても活動している葵さんが、ふと口を開いた。

 

「一応、わずかながらですが資料はあったんですけどね……それについても、《忍術》は自らの手で試行錯誤して編み出すものナリとかなんとか書き残して、それだけでした」

「えぇ……?」

「現在でも活動されている《忍術》スキル保持者にも連絡して、よければアドバイスなどいただけないかと頼んでみたんですが、はっはっはー! すげなく断られちゃいましたよ。自分は独学でどうにかやってきた、その子もどうにかやれるでしょ! って」

「後進に対してなんの助言もしないとは……どういうつもりでしょうか」

 

 完全に何も教えるつもりのない資料なり先達に対して、不満を吐露したのは香苗さんだ。探査者としてあるまじきことです、などと鼻息を少し荒くしている。

 この人はA級トップランカーだった頃からだけど、先達は後進への模範たるべしって意識が高い人だからね。S級として対外的にもそうした姿勢が求められる立場になった今、そうした突き放すような姿勢はなおのこと、許し難いのかもしれない。

 

 ただ、葵さんは苦笑いしつつも見解を異にするようだった。

 やんわりと宥めるように、香苗さんへと言う。

 

「昔ながらの探査者達には、そういうタイプもいるっぽいんですよ御堂さん。見て盗め、自分で考えろが基本と言いますか」

「それは知っていますが、そうした人たちもそこまで教えることに対して消極的ではないでしょう? 何一つヒントさえ残さないでは、見て盗むも何もありません」

「そこが超希少スキル《忍術》の大変なところなんですよねえ。自助努力が基本の人たちなので資料は残さないけど、そもそも母数が極端に少ないから見るも何もあったものじゃない。負の連鎖になっちゃってるんですよ、残念ながら」

「自分ができるからと言って、なぜ他人に、それも後進に押し付けるのか……理解しかねますね」

「はっはっはー! ぶっちゃけ同感です」

 

 頭が痛いとばかりに嘆く香苗さんに、豪快に笑いつつ同意する葵さん。どうにも昔ながらの理屈と《忍術》保持者の数の少なさが、相乗効果をもたらしてここまで何も伝わっていない状態を生み出しているみたいだね。

 技術の伝承とか継承とか、割とマジで一切ないんじゃないかな、《忍術》保持者の間には。そんなことだと永遠に同じ形で、独学から適当なスキル運用が行われていってしまうように思うけど。

 

 これ、ヴァールってかWSOは把握してるのかな……してない気がする。さすがに数人しか出現してない保持者までカバーするのは、ちょっと無理があると思うし。

 先人のノウハウやら教訓やらが一切存在しないのはキツい。直接関係のない俺でさえそう思うんだから、ガムちゃんはもっと厳しさを感じていることだろう。

 

 事実、今も呆れたような、苛立ったような感じで呟いてるしね。

 

「最低限の資料とかくらい後世に残しといてよポンコツども……! 自分一人で始めて自分一人で終わるなんてそんな迷惑な話あるかっての……!!」

「が、ガムちゃん落ち着いて? 先生が、先生ならなんとかしてくださるわ」

「怖ぁ……」

 

 八方塞がりな状況に、ストレスが溜まっているのか口調が荒くなるガムちゃん。気持ちは分かるけど落ち着いてほしい、君は穏やかなほうが素敵だ。

 そしてアメさん、俺に何もかもを丸投げする勢いで託してくるの止めて? 《忍術》について教えることは教えるけど、そんな調子で何かあったらとりあえず俺に投げるとかされるとそのうちとんでもないことになると思うの。こわい。

 

「……そうですね。パイセン、すみませんがご教授お願いします。これまで忍者ごっこで一人遊びしてた連中とは違って、私はしっかりと後世に伝えられるよう資料を作りますから」

「う、うん。分かった……頑張ります、俺も」

 

 アメさんの取り成しに、どうにか冷静さを取り戻して俺に頼み込んでくるガムちゃん。

 後世の同スキル保持者のためもあるし、これは本気で取り組まないと大変だぞ……

ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー


【ご報告】

12/2に発売されます

「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」

2巻の特典についてご報告いたします!


各書店様の特典はそれぞれ

・佐山の日常

・関口の昔日

・逢坂の不安

の、3種類となっております!


また電子書籍特典はマリアベール視点からみた山形についてを描いた前日譚になっています!

基本山形視点の本編なため、他キャラ視点での話が読めるのは概ね特典関係ばかりですので、興味がお有りの方はぜひぜひ、お求めくださいませー


現在サイン本、書籍版、電子書籍版の予約も行っておりますので、

作者てんたくろーのTwitter(@tentacle_claw)

もしくは

PASH!ブックス公式Twitter(@pashbooks)

をご確認くださいませ!

よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 忍者等のスキルって初期の適正ランダムを除いた場合の習得条件位は予測程度には伝わっているよね?(いくらなんでもそれすらしなかったらそのうちですらなくブチギレられるのでは………手遅れではと…
[一言] ようするに「自分が苦労したんだから後輩連中も同じように苦労しろ」というのが本音じゃな? 溢れ出る老害ムーヴ! 実際先人がいるのにとっかかりすらなかったらやってらんねぇってなるし、そこからま…
[一言] まったく前例のないポエミースキルは自分で試行錯誤する必要があるけど、前例があるなら少しでもいいから情報は欲しいですよね 後世に残される覇王忍者ムーヴ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ