おそろしく自然なデートの約束……オレじゃなきゃ見逃しちゃうね
俺の話はそこそこにして、逆にリーベに問いかける。今日は優子ちゃんと一緒に出かけていたみたいだけど、どこ行ってたのか。
「もうじき優子の誕生日だし、その辺絡んでるのかな? とは思うけど」
「当たりですー! 実は商店街のほうにも行ったんですけど、公平さんの言ってたバッグはもう売り切れてましてー」
「げげ、マジか!?」
ちょっとまずいねそれ、誕プレ最有力候補だったのに。
春先、商店街の店で売られていたとかいうバッグを妹ちゃんがほしいな~とか言ってたので、それをプレゼントできたらなと算段をつけてたんだよな。
ただ、そのバッグがどれか分からないからリーベに調べてもらったわけなんだけど……まさか売り切れとは。人気商品だったってことなんだろうけど、残念だ。
しかしそうなるといよいよ、何を誕プレにすべきか迷うなあ。いっそ形に残るものでなく何か食べ物、スイーツとかにしてみようか? そういうのもアリだって聞くしね。
と、考える俺にニンマリ笑ってリーベが続けて言う。
「ですから今回、ちょっと足を伸ばして遠いところまで行ってみましたー。隣県は中心駅の、駅チカを二人で巡ってきたわけですねー!」
「えぇ……? わざわざ県境超えたの? たしかに電車ですぐだけど」
「せっかくですからねー! それにリーベちゃんも都会でウインドーショッピングするの、興味ありましたしー! 誕プレ調査の一環、一環!」
テンション高いなリーベ。かなり上機嫌な時の感じなので、結構いい感じに誕プレについて調査できたんだろうな。
話を聞いていくと、今日はなんといつもの商店街でなく隣県の駅チカまで足を運んでいたのだとか。おいおい本格的だよこの子。好奇心ありきで行ったにしても、ああいうところってお高い店も多いだろうにそんなところでリサーチしたのか。
「服とか装飾品とかバッグとかー、そういうのを見繕いながらたまにおいし~いスイーツとかパスタとか食べちゃってー! 人間の文化文明をとにかく満喫できて、リーベちゃん的にも満足ですよー!」
「それはよかったけど、よく二人で行けたな……大都市の駅チカなんて、迷子になる気しかしないけど。そもそも優子、ビビってたんじゃないか?」
「よ、よくお分かりですねー……たしかに優子ちゃん、行きの電車に乗ったあたりからソワソワ挙動不審になってましたけどー。スリに遭わないようにって荷物をギューって抱きかかえて、不安そうでしたねー」
「やっぱり。あの子そういうとこ母ちゃんに似てるんだよなあ」
人の賑わう都会に放り込まれると、途端に挙動が怪しくなるんだよ俺たち家族は。普段からして行動範囲が狭いから、たまに人気スポットを訪れると決まって尻込みしだすのだ。
特に母ちゃん優子ちゃんはその傾向が強く、逆に俺と父ちゃんは割とどこでも呑気に楽しむというか、気の向くままにフラフラあちこち行ったりする。
ビビりすぎなのもよくないけど即迷子ムーヴかますのもよくないよねって、帰った後には毎度話し合う程度には両極端な家なわけだね。
だから優子ちゃんの怖気づきにも納得するんだけれど、そんな状態のあの子とよく一緒にウインドーショッピングできたなとつい、リーベのコミュ力に感心する。
鼻も高々に、彼女は胸を張った。
「そこはそれ、この精霊知能リーベちゃんがついてますからねー! かわいいかわいい妹分を、かわいくかわいくエスコートするなんて容易いことなのですよー!」
「いやマジですごいよ。助かった、リーベ。あの子といろいろ楽しんでくれて、ありがとうな」
「こちらこそー! 優子ちゃんとあれこれ見て回るの、とっても楽しかったですー! 今度は公平さんも一緒、一緒!」
腕に抱きついて甘えるように擦りついてくる、リーベは本当に楽しそうだ。邪悪なる思念の件が片付いてからこっち、この子は毎日楽しそうで見ていて心が優しい気持ちになる。
空いてる手で彼女の頭を撫で擦る。絹糸のように細く滑らかな美しい金髪を、痛くないようにゆっくり優しく手で梳れば、リーベはうっとりとして瞼を閉じた。しばし流れる静かな空気。
数分してから俺は本題に入った。
「でも、バッグが売り切れってなるとどうしたもんかなあ。優子が好きそうなデザインとか俺、ちょっとよく分からんし」
「ふっふっふー! そこはさすがのリーベちゃん、優子ちゃんがほしいって言ってたバッグ、隣県でも売ってるのをもう見つけちゃってたりしますよー!」
「え、マジか!?」
そいつは僥倖だ、せっかくなら欲しがってるものをプレゼントしたいしね。
リーベ曰く在庫もあるみたいだったから、優子ちゃんの誕生日までに在庫切れになるなんてことはないだろうとのことだし、これは買いだな、買い。
よーし決まりだ。明日か明後日にでもリーベを連れて隣県に行こうかな。多少値は張るみたいだけど俺ちゃん探査者だし、特に問題なく懐は傷まない。
基本そんなに豪遊もしないから、貯まってばかりの我が財産。妹のために使うならこれ以上の使い道はないってなもんだろう。
「というわけで案内頼むよ、リーベ」
「お任せくださいー! 公平さんとデート、デート!」
デートじゃない……わけでもない、のか? 女の子と二人、都会の駅チカをうろつくわけだしな。
楽しそうなリーベに俺も応じて笑いつつ、ともあれそんな感じで話はまとまった。
ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー
【ご報告】
12/2に発売されます
「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」
2巻の特典についてご報告いたします!
各書店様の特典はそれぞれ
・佐山の日常
・関口の昔日
・逢坂の不安
の、3種類となっております!
また電子書籍特典はマリアベール視点からみた山形についてを描いた前日譚になっています!
基本山形視点の本編なため、他キャラ視点での話が読めるのは概ね特典関係ばかりですので、興味がお有りの方はぜひぜひ、お求めくださいませー
現在サイン本、書籍版、電子書籍版の予約も行っておりますので、
作者てんたくろーのTwitter(@tentacle_claw)
もしくは
PASH!ブックス公式Twitter(@pashbooks)
をご確認くださいませ!
よろしくお願いいたします!




