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くっ……逃がせ!とは言わない女騎士様

「いや、死んでないから」

 

 晴天を仰いで、まるで亡き師に向けるように囁く葵さんに、しらーっとした目を向けつつそういうのは当のお師匠、エリスさんだった。

 傷もすっかりなく、というか元より怪我をしていないということになったため、まったく普段通りの様子で続けて言う。

 

「腹に風穴を開けられた時はぶっちゃけ、ああこれ死んだかも、不老だけど不死ではないしなーってぼんやり思ってたけどさ。山形さんの不思議パワーですっかり元通りだよ、ハッハッハー」

「知ってます、はっはっはー! …………よかった」

 

 毎度ながらの呑気な調子でやり取りするも、葵さんはやっぱり師匠が撃たれたことに、ショックを受けていたんだろう。無事な様子に、そっぽを向きながら心底安堵したようにつぶやいている。

 かくいう俺も一安心だ。銃弾がエリスさんを撃ち抜いた瞬間、どうなるのもかと焦ったけれど……バグスキルの封印をかなぐり捨ててでも、最優先で彼女の治療にあたって正解だった。

 これで翠川に逃げられたってんならもう平謝りだけど、この通り葵さんが見事、やつを昏倒させてくれたからね。

 

「公平くん! エリスさんは……よかった、ご無事ですね」

「早瀬さんも大丈夫ですか!?」

 

 状況が一段落したと見て、香苗さんと宥さんが駆けつけてきてくれた。口々にエリスさんと葵さんの安否を気にしているけど、これこの通りピンピンしていらっしゃるから、彼女らも胸を撫で下ろす。

 

 さて、こうなるとあとは翠川と一緒に来た女の人だけだな。何やらしれっとその場を立ち去ろうとしているあたり、後ろ暗いところはありそうだけど……それをそのまま見逃すわけもない。

 

「…………」

「どこへ行くつもりですか?」

「助けられておいて。あなたを庇って撃たれた人さえいるのにそれは通りませんよ」

「っ!?」

 

 すぐさま香苗さんと宥さんが声をかけ、女の人に近づく。何一つ、それこそエリスさんへの感謝の言葉一つもなく逃げようとしたことに対し、我らが狂信者お二人は結構お怒り気味だ。

 俺としても、逃げようとすることの是非はともかくとして、自分を庇って負傷した者に対しての敬意くらいは何らかの形で示してもいいんじゃないかなーとは思うね。

 

「改めまして、どーも能力者犯罪捜査官の早瀬です。今しがたあなたを庇って撃たれた人の弟子です」

「! そ、それは……どうも、ありがとうございます」

「そーゆーのは師匠に直接どうぞ。私としては、翠川均との関係やあなたご自身につきまして、いくつかお聞かせ願いたいことがあるんですよ」

 

 追撃するように葵さんも女の人に接近する。フーロイータはまだ手にしている状態だ。まあ、翠川と敵対していたらしいけれどイコール、能力者犯罪捜査官が保護すべき対象であるとは限らないしね。

 敵の敵はまた別の敵。そう想定しているかのような彼女の警戒ぶりに女性は息を呑む。まさに今、翠川を倒してみせた葵さんの電撃が自身にも向けられるかもしれないとなると、さぞやプレッシャーだろうな。

 

 一触即発ではないにしろ、かなり剣呑な空気だ。

 俺はエリスさんを介抱しながら──もう大丈夫だろうにこの人、変に腕にしがみついてくる──翠川が何かの拍子に動き出さないか注視している。

 さっさとこの人、警察に引き渡さないとなあ。考えているとエリスさんが俺の腕の中から、女性へ向けて告げた。

 

「あー、まあ私のことは置いとくとして。お嬢さん、別に危害は加えないから、大人しく警察までご同行願えないかな? 翠川と一緒にいたってことは、やつが所属している組織の関係者という疑いも持つ他ないからね」

「…………分かりました。どのみち私に、選択肢はなさそうですし。離脱できないとなれば、切り替えて不名誉な疑惑を払拭することに努めましょう」

 

 しばらく考える素振りを見せた女性だったが、この状況では従うしかないと思ったのだろう。両手を挙げて降参を示しつつも頷いた。

 静かに目を瞑り、やがて深い吐息とともにつぶやく。

 

「能力者犯罪捜査官となれば、私に課せられた任務とも多少関係してくるでしょう……先々代様が仰っていた、山形公平様もいらっしゃるならばなおのこと」

「俺?」

「ええ。神谷美穂様──ダンジョン聖教先々代聖女様からお話は伺っております。そしてできればその力をお借りしたい、とも」

 

 思わぬところで思わぬ人から、神谷さんの名前が出てきた。ダンジョン聖教における象徴的存在、聖女……その2代前の方だね、神谷美穂さんは。

 近場で言えばそれこそエリスさんが初代聖女だそうだし、アンジェさんとランレイさんが首都圏で相手しているだろうサークルだか言う組織に対しても、当代聖女さんが出張っているそうな。

 

 そう考えると今この国、やたら歴代聖女がやって来てるんだな……せっかくだし神谷さんとエリスさんからは今度、サインもらっとこう。

 ミーハーなことを考える俺に構わず、女性は一礼して名乗りをあげた。

 

「お初にお目にかかります。ダンジョン聖教騎士団所属、B級探査者オーロラ・ウィリアムズと申します。以後よろしくおねがいします、山形公平様とそのお仲間様方」

ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー


【ご報告】

本作

「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」

2巻の発売が決まりました!

2022年12月2日の発売となります!


WEB版から描写を増やしたりシーンを追加したりした、いわばフルアーマースキルがポエミーとなっておりますのでぜひぜひ、お求めいただけますようよろしくお願いいたします!


現在サイン本の予約開始してますので、

作者てんたくろーのTwitter(@tentacle_claw)

もしくは

PASH!ブックス公式Twitter(@pashbooks)

をご確認くださいませ!

よろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
[一言] つまり・・・新たな信者 ということですねw
[一言] (使途の増える音)
[一言] ここで出てくるのか…最初から敵同士なのか、方向性の違いで敵対したのか……。
感想一覧
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