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状況開始直前

「プライバシーの問題は元より、そもそも鑑定スキルを当人の許可なしに使用していいって令状もまだ、青樹はともかく火野と緑川の分についてはもらってないしね。というわけで、鑑定については止めておこうか。後になって人権侵害だの違法捜査だの言われたら怖い」

「治安のよくない国なら通るかもですけど、ここ日本ですからね。スキルの覗き見一つとっても犯罪になりますし」

 

 案の定、モラル面から止めとこうって話になった。まあ当然ではある。

 鑑定スキルは使われた側に、強い視線を感じさせる副作用があるから、即座にバレるってリスクもあるからね。この場合、こちらの存在に気づいた翠川が何をしだすかも分からない危険もあるし。

 

「ですよねー。いらないこと言ってすみません」

「いやいや。いざという時にはお願いするという選択肢がこれでできたし、むしろありがたいよ。ハッハッハー」

 

 気まずさに謝罪する俺を、むしろ笑ってエリスさんは慰めてくれる。なんていうか、マリーさんにも通ずる包容力がある人だなあ。年の功ってやつか。

 しかし、そうなるとこの局面をどうするか。彼女は短く考えた後、葵さんに指示を出した。

 

「葵はとりあえず転移後、《雷魔導》で翠川を狙いなさい。私は女の身柄を押さえつつそれを援護するから」

「了解です。敵だと確定している翠川から先に仕掛け、女のほうは身柄を確保。翠川をどうにかしてから対応するわけですか」

「関係性が分からない以上、暫定的にだけど女も敵側と見做す。もし翠川に無理矢理連れてこられた被害者だとしたらそのまま保護するし、倶楽部のメンバーであればそのまま拘束する。山形さんもそのつもりで、私達を転移させたら御堂さんと望月さんとともにここで待機。いいね?」

「分かりました」

 

 狙いを、すでに幹部だと確定している翠川に絞っての強襲。エリスさんの作戦はシンプルながら、目的である幹部逮捕に向けて一切ブレることのないものだ。

 葵さんも俺も頷く。今回は香苗さんと宥さんはここで留守番だし、俺もお二人を転移させたら待機となる。

 

 段取りは整った、葵さんの準備もよし。であれば後はタイミングを見て、俺が空間転移用のワームホールを生成するだけだ。

 見れば翠川と女はまだ何やら話し合っている。女が少し、強張っている? 翠川はニヤニヤ笑っているけど、にわかに殺気を出し始めているし……危険かもしれないな。

 

「じゃあ、ワームホールを開きます。その後は段取りどおりで……同時に俺がバグスキルの使用を一時封印しますから、翠川もこないだのような逃げ方はできなくなるはずです」

 

 攻め入ったはいいものの、またなんらかの疑似空間転移系能力を使われて逃げられても困る。なので状況開始後、俺がコマンドプロンプトの権能でもってバグスキルの使用を封じるつもりだ。

 これで少なくとも転移に近いなんらかの逃走手段は潰せると思う。

 

 封印中は他のことに権能を使えないため、対応力は格段に落ちてしまうけれど。そもそもこの状況だと俺と香苗さんと宥さんにできることってあんまりないからね。

 あとは能力者犯罪捜査官のお二人に任せて、俺はできるだけのことをやるってだけだった。

 

「いやー山形さん、なんでもありだなー」

 

 その旨伝えたところ、エリスさんに素直に感心されてしまった。実のところそんなに万能でもないんだけどね。

 本気でなんでもありなのはあくまでコマンドプロンプト本体、つまりシステム領域にて今も因果律管理機構として稼働している、俺の本体だ。

 言ってしまえば端末体に等しいこの山形公平の身体では、特定個人のスキルを封印するだけでも割と負荷がかかってしまうわけなんだね。

 

 だから万能みたいに思われて、なんか無茶振りされだすのも困るなあ〜。

 なんて内心ちょっと心配していると、感心しきりのエリスさんに香苗さんが、ニコニコ顔で話しかけた。

 

「我らが神、我らが救世主様ですから。エリスさんも葵さんもどうです? この機会にぜひとも我ら救世の光に帰依なさっては」

「よしじゃあやろうか葵。山形さん、転移頼むよ」

「師匠が華麗にスルーなんて珍しいこともあったもんです。さすがS級探査者は格が違いますねー。あっ、私いつでもいけます」

「ひどい」

 

 勧誘しだす香苗さんも香苗さんだけど、完全スルーしたエリスさんを茶化す葵さんも割と葵さんだ。この人、自分の師匠にも容赦なくいくなあ。

 さておき、エリスさんからの指示が出た。いよいよ状況開始だ。二人並んで構える彼女らの前に、手を翳す。

 ワームホールを生成したらその時点で翠川たちにも、こちらの存在はバレるだろう。転移は迅速に、息を合わせて行わなければ。

 

「3つ数えてからワームホールを作りますから、タイミングよく突っ込んでください。目標地点はこちらから見て翠川と女性の向こう、10m離れた場所です。直線状に翠川が来るように角度は調節します」

「うーん至れり尽くせり。いやはや助かるねー、能力者犯罪捜査官のメンバーにほしいレベル」

「はは……すみません、俺はあくまでモンスター相手をメインにしていたいので」

 

 一家に一台山形くん、みたいなことを言い出すエリスさんだけど、能力者犯罪捜査官にはなる気はないなあ。

 あくまで俺の目的は、モンスターを輪廻の輪に還すことだからね。それ以外をメインにするのは、ちょっと違うと思うし。

 

 とはいえ、正義を為そうという人たちのお力になりたいという思いは無論ある。だから俺はこうして、お二人に助力させてもらっているんだ。

ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー


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をご確認くださいませ!

よろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
[一言] ところで鳴き声が〝怖ぁ……〟な救世主殿、【ワーム・スマッシャー】はしないので?
[一言] 山形君は細やかな気配りができる陰キャ。これは高ポイントですよ
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