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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

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救世主神話・浄滅編

 モンスターが人間の体を乗っ取る。なんてそんなもの、聞いたことのない話だ。

 だが現実に今、そうと思しき望月さんが、血の涙を流して俺に襲いかかってきている。望まぬ意志で、殺してくれとさえ頼みながら、なお。

 

「リッチが、体を乗っ取った!? そんなことが、まさか!」

「うそ……望月さん、うそ……!」

 

 驚愕する香苗さんと、呆然と現実を受け止められないでいる逢坂さん。

 そして他の探査者たちは、ひたすらに怯えている。

 無理もない……おかしな話のオンパレードだ。俺だってもう、頭がどうにかなりそうだ。

 

「があかぎゃげぎょげぎゃげがゃきげゃきぁがゃひゃはゃひゃひひひひひひひ!」

「乗っ取ったって、殺してくれって……! くそ、そんなのあるのかよ!?」

 

 狂ったように笑う望月さん。受け入れがたい話に、俺は絶叫するしかない。

 リッチの気配がしないわけだ。望月さんに、人間に取り憑いていたのだから。

 6人も気配があったわけだ。乗っ取られた望月さんこそが、スケルトンの軍勢を率いていたのだから。

 

 どうする? どうする、どうする!?

 倒すしかないのか、殺すしかないのか!

 俺は、この人を……

 

「…………パパ…………ママ……………………」

「!?」

「かえ、り、たい…………あい、たいぃ…………っ」

「望月、さん」

 

 泣きながら、そんなことを言う望月さん。

 家族を、親を、呼んでいる。

 殺してくれと、死にたいと言いながら……会いたいと、帰りたいと、そう言っている。

 

 ふざけるな。

 俺は、歯を食いしばって打ち震えた。

 

「……リッチ」

「げぎゃげぎがぎゃがくけけけけけけけけけ!! コロシテ、コロシテエエエエエエエ!!」

「お前は、お前は……!」

 

 体が熱い。魂から、力が引き出されていく。

 踏みにじられたものを想って、心が痛む。知らず、涙が溢れてくる。

 

 こんなことが。こんな酷いことがあって良いわけがない。

 ダンジョン探査は命がけだ。道半ばで死ぬことも、もちろんあるだろう。どれだけ界隈が発達して、安全を追求したとしても、命のやり取りである以上、そこは絶対に付き纏う。

 

 だが、これは違うだろう。命を支配され、体を乗っ取られて、心を弄ばれて。

 魂を踏みにじられるようなことが、あって良いわけないだろう!

 

「──お前はっ! 命を、何だと思っているんだっ!!」

「ぐげ────?」

 

 怒りのままに力を引き出す。知らず、身体が金色に輝いていく。

 モンスター相手ではない。俺には分かる、これは、邪悪なる思念への特効だ。スキル《救いを求める魂よ、光と共に風は来た》、フルパワーで発動している!

 無限に力が、漲っていく!

 

 

『あなたはスキルを獲得しました』

 

 

 システムさんの声がした。

 突如頭に響く、その声。

 いつかも聞いたその声が、俺に、立ち向かう勇気を与えてくれる。

 

 

『緊急時につき音声アナウンスにてお知らせします』

『スキル《風浄祓魔/邪業断滅》獲得』

『効果は』

 

 《魂を救うための戦いに勝利した際、対象をあるべき姿へと戻す》

 

『このスキルは本来、アドミニストレータ側の存在に向けて作成されたスキルです』

『発動にはsystemによる承認が必要になります。承認権限は以後、コマンドプロンプトへの接続も含めて精霊知能リーベに委ねられます』

『──はいはーい! 公平さん、今回はシステム側として連絡しますよー! モンスターによる肉体の支配なんてあってはならない状態、今のあなたならパパッと救えちゃいますから!』

 

 

 リーベも次いで、報せてくる。

 ああ、ああ。救うさ。絶対に救う。

 踏みにじられた魂も、心も、体も。何があっても、どんなことに代えても絶対に助けてみせる。

 

 だから、力を貸してくれ──!

 

 

『──はい。喜んで』

『──コマンドプロンプトを呼び出しました。アドミニストレータ用スキルを実行します。パスワード入力』

 

 《──これは、魂を救うための戦いである》

 

『──ロック解除確認。スキル《風浄祓魔/邪業断滅》実行。救済対象の限定的状態時間遡行が承認されました。ロールバック期間は168時間』

 

 

 輝きが強くなる。新たなスキルに、発光現象がさらなる反応を示していく。

 見る者すべてを癒やす光よ。どうか、今、目の前にいるこの人の魂をも癒やしてくれ。

 

 

『──さあ、あとは勝つだけです。大丈夫、公平さんならやれます』

『……どうか。手を、差し伸べ続けてください。伸ばした手が、誰かの元に届く限り。あなたはきっと、すべてを救えます』

 

 

「ありがとう。システムさん、リーベ」

「ぐぎゃ──!?」

「そしてぇっ!!」

 

 望月さんの腕を払い、その胸に拳を突き立てる。

 拳そのものの威力と発生した衝撃波が、彼女を後方へ吹き飛ばす。

 次いで走る。吹き飛んだ彼女に追い付き、その腕を掴み。

 

 力の限り、いや限界すら超えて!

 俺は、望月さんを高みへ投げ飛ばした!

 

「ぐぎゃあああああっ!?」

「《風浄祓魔・邪業断滅》──っ! 光よ、邪悪を貫けえええええっ!!」

 

 高く宙に飛んだ彼女へと向かう、全身全霊を込めた正拳。

 そこから真っ直ぐに放たれた、白く眩い衝撃波が──そのまま望月さんを直撃し、そこに巣食うリッチを消滅させた。

この話を投稿した時点で

ローファンタジー日間、週間、月間1位、四半期6位

総合日間10位、週間4位、月間15位

それぞれ頂戴しております

ありがとうございます

引き続きブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします

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― 新着の感想 ―
俺の体が光って唸る! 魂を救えと轟き叫ぶ! 望月さんよ、光になれぇぇぇ!!
「俺の右手が光って唸る!シャイ〇ングf…」げふんげふん(笑)
[良い点] 昇っ!龍ゥ!拳ェェェン!! [気になる点] 浄化よりもやばい事やってない?時間のロールバックって
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