表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
619/1839

ポエミー鑑定士の道も見えてきた男

 一気に血なまぐさい、しかも不穏極まりない話に転がってしまって唖然とする俺。見れば香苗さんも宥さんも息を呑み、葵さんのフーロイータを凝視している。

 

 探査者が戦争に投入されたってのは、大ダンジョン時代が始まってすぐに勃発した戦争において、本当にあった話らしいとは聞く。

 ただ、ソフィアさんがWSOを発足して以来、そのような行為は国家的犯罪と国際法で決められた。そこから今に至るまで、探査者が人間同士の戦地へ行ってどうのこうのってのはないはずなんだ。

 

 だけど軍事企業としては、もしまた同様の事態になった際、対探査者用の兵器を作っておけば儲けられるって考えているということなんだろうか?

 なんだか知っちゃいけない世界の陰を垣間見た気分だよ……

 

 軍事企業のおっかない話はともかく、転移してきた何者か二人が、いよいよ肉眼でも確認できる位置にまでやってきた。

 鬱蒼とした森の中、木々に塗れた視界では目視するのもやっとだが……逆に言えばこちらの存在も感知されにくくはある、一長一短の様相だ。

 

「フーロイータもスキルもいつでもいけます。ただ、《雷魔導》を使うと光や音でバレるでしょうね、さすがに」

 

 葵さんはフーロイータを構え、いつでも《雷魔導》を使えるようにスタンバっている。このスキルは使用と同時に雷が迸るから、今ここで使うとたちまち俺たちの存在が向こうに露見しかねない。

 

「すまないね。空間転移に関してだけはお力をお借りしたい」

「もちろんですとも。喜んで俺の力をお貸しします」

 

 なので俺が空間転移で二人、何者かたちがいる地点へとみんなを移動させてから使うつもりのようだった。エリスさんに感謝されつつも、俺は密やかに目標地点の座標と今いるこの地点の座標を、いつでも繋げられるようにしておく。

 精神を集中させて、葵さんがつぶやいた。

 

「……よし。いつでもいけます」

「ん、上出来。山形さん、奴さんらの動きは?」

 

 時間にして5秒と少しほどかけて、精神を統一させた葵さんに、エリスさんが満足げに頷く。こういうところ、師弟のやり取りって感じでいいよね。

 で、例の転移者たちの動向について聞かれる。称号効果による対象の観察は元より、目を凝らして肉眼で確認していた俺は、そのままの体勢で彼女に答えた。

 

「動きはありません。肉眼でも木々の間、少しだけ見えますね……間違いない。一人は翠川です」

「ふむ。もう一人は分かるかい?」

「いえ……見覚えがありませんね、もう片方は。女性ですけど、何か小声で話し合っているみたいです」

 

 木々の狭間、微かな隙間からどうにか角度を調節して見えた、男は紛れもなく倶楽部三幹部の一人、翠川だ。

 30代そこそこの、金髪をざっくばらんにして妙にニヤニヤしているジャージ姿の男だ。見た目で判断するのはアレだけど、ちょっとこう、不良さんチックな感じがするな。実際、不良どころか国際的な犯罪組織の幹部なわけだけども。

 

 対して女性のほうはもう少し若い。20代後半ってところか? 黒髪を後ろにまとめており上下スーツ姿で、スカートでなくズボンを着用していてより動きやすい印象の女性だ。眼鏡を掛けているからかクールな印象も受ける。

 

 そんな男女が山奥、密着せずとも離れ過ぎもしない距離で何やら密談をしている。

 一瞬、俺の年齢では見ちゃいけない類の光景なんじゃないかとドキドキしかけたけど……そんな艶めいた感じはなく、むしろ険悪なムードすら漂う感じだ。

 なんだ? 仲間割れが何かか? 訝しむ俺の耳に、エリスさんが独り言ちるのが聞こえた。別の木々の間から、同じように男女を見ている。

 

「……あー、たしかにあれは翠川だね。ってことは転移系スキルはあいつが保持している可能性が濃厚か? もしかしたら女のほうも持っているかもしれないにしても、そもそもどういった立場の者なのか分からない。下手すると無理やり連れてこられた被害者な可能性だってある」

「……一応俺は、鑑定スキルを持ってますからこの場で確認することはできますね。ただ、本人に無許可で使っちゃいけないですし、鑑定士の資格も持ってないですけど」

 

 独り言に乗っかる形になって悪いけど、一応提言しておく。

 男女のどちらが転移系スキルを持っているのか。あるいは持っていないのか。たしかめるには早い話、鑑定スキルを持つ俺が検めてしまえばいい。

 《よみがえる風と大地の上で》。一切の隠蔽を貫通して相手のステータスを見抜くこのスキルであれば、翠川のスキルも読み取ることは容易い。

 

 ただ、やはりプライバシーの問題があるためこういう場合でも、使うと問題になるのがネックだ。たとえ犯罪組織の幹部といえど、個人情報については護られなければならないからね。

 例外としてWSOが公的資格として認定している、鑑定士資格を持っていればあるいは、エリスさんと葵さんの捜査のお手伝いって形で鑑定してもギリギリ問題にならないと思うけど……持ってないからなあ、俺。

 

 改めて考えると割と、宝の持ち腐れだよねこのスキル。

 鑑定士の資格取ろうかなぁ? と考えていると、エリスさんからの見解を伝えられた。

ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー


【ご報告】

本作

「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」

2巻の発売が決まりました!

2022年12月2日の発売となります!


WEB版から描写を増やしたりシーンを追加したりした、いわばフルアーマースキルがポエミーとなっておりますのでぜひぜひ、お求めいただけますようよろしくお願いいたします!


現在サイン本の予約開始してますので、

作者てんたくろーのTwitter(@tentacle_claw)

もしくは

PASH!ブックス公式Twitter(@pashbooks)

をご確認くださいませ!

よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 探査者の資格関係って申請する時何が必要なんだろ?(エリスさん達捜査官は実力と人間性で分かりやすいけど、技能士や鑑定士資格は講習があるのだろうか?) [一言] まず鑑定ができる証明で大変…
[一言] ばれなきゃいいのよ公平ちゃん。と能力犯罪捜査官の目の前で言っちゃうw
[一言] スキルは音声発動だったから、鑑定のたびに《よみがえる風と大地の上で》とポエムるポエミー鑑定士爆誕か!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ