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ハグ魔・葵のハグハグ攻撃!

 とっても愉快な伝道シーンはそこそこにスルーするとして、ダンジョン探査を続けていく。

 4階層目、18部屋目。子犬くらいの蟻がわんさか埋め尽くされた部屋に辿り着いた俺は、あまりにショッキングな光景に思わず通路から全力攻撃をぶっ放してしまっていた。

 

「うわわわわっ!? さ、《清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師》、《目に見えずとも、たしかにそこにあるもの》ー!」

 

 俺の攻撃を、限定的な範囲でだけどあらゆる場所から展開させる空間を生み出す攻勢結界スキル《清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師》。これを使って部屋全体を俺の領域へと変え。

 発動者を起点として範囲内の、敵味方を区別して攻撃を行うことのできる識別式浄化スキル《目に見えずとも、たしかにそこにあるもの》を用いて、部屋の真ん中を中心に内部全体に蠢くモンスターたちを一気に浄化する。

 

 これら2つのパッシブスキルを組み合わせた結果、俺自身は敵の射程に入ることなく、まとめてモンスターを倒すことができてしまう遠距離広範囲火力コンボが成立してしまった。

 初めて意図的に、スキル同士を組み合わせてみたけど……これヤバいな。さっきまで失神しそうなくらいウジャウジャといた恐ろしい蟻たちが、一気に蒼い炎に包まれて消えていく。

 

 秒殺とはまさにこのことか。いや正直、精神的にはかなりギリギリだったけれども。

 隣で宥さんが、唖然としてつぶやいた。

 

「なんて、慈悲深い優しい焔……あれだけのモンスターを、一瞬にして安らかに葬るだなんて」

「これこそ奇跡の御業! す、素晴らしい画を撮ってしまいました! 使徒宥、これは私達がなんとしても動画とともにコメンタリーをつけなければ!」

「はい、伝道師香苗! まさしく救世の蒼き炎! これをもって世界中に、今こそ救いは訪れたのだと示し帰依を呼びかけるのです!!」

「誇大広告やめてください」

 

 モンスターを輪廻に還すことはたしかに救いだし、結果として人間たちも救われるところも一部なりともあるだろうけど。イコール全世界が救済されます的なそういうアレはやめてほしい。ハードルが月まで届きそうだ。

 このようにいつもの二人はいつもの反応なんだけど、今回はエリスさんと葵さんのド肝まで抜いてしまったみたいだ。驚きに表情を歪ませ、言葉もないとばかりにこちらを見ている。

 どうにか絞り出すように、エリスさんが呻く。

 

「……ヴァールさんから聞かされてはいたけど。本当になんだその、アドミニストレータ? ってやつなんだねえ、山形さん。探査者の上位にあたるモノであり、仔細は知らんけどこないだ世界を護り抜いたとか」

「あ、その辺はもう御存知なんですね」

「昨日の夜、葵も交えてビデオ会議でね。御堂さん配信の動画のことも知ってたからある程度半信半疑だったけど、今のを見たらもう確信しかないよ。ハッハッハー」

 

 乾いた笑みを浮かべる、彼女の視線はどこか感心しつつも呆れと驚きが見える。あのビデオ動画、フェイクはなかったんだね……的な遠い目って感じだ。

 一方で葵さんはというと、こっちはこっちでヘぇ~とかほぁ〜だのと感心しきりだ。蟻が消え去り、大量のドロップ素材だろう触覚が散らばる部屋を見回して、なるほどーなどとのんきな声音で言ってくる。

 

「ぶっちゃけ探査者としての実力、私より全然上ですねえ。ちょっぴりジェラりもしますけど、ここまでのことをされるとむしろ尊敬しちゃいますよ、はっはっはー!」

「それは、その……いえでも、やっぱり踏んできた場数や経験値は葵さんのほうが上ですよ。それに、能力者犯罪捜査官として培ってこられたものは、おそらく俺には絶対に身につけられないものでしょうし」

  

 身につけたくないし、身につけてはいけないものでもある。変に比較し始めた葵さんをフォローする間にも心中、そんなことをつぶやく。

 ダンジョンを探査するための探査者であり、大ダンジョン時代を終わらせるためのコマンドプロンプト転生体であり、そして邪悪なる思念を倒すためのアドミニストレータだからね、俺は。

 

 どの立場からしても積極的に人間を相手取るのは極力、控えなければならない。まして能力者犯罪捜査官だなんて、どんなことがあっても目指すことはない職業だろう。

 だからこそ、俺は自分には決してできない使命を背負う彼女たち捜査官を強く尊敬する。

 

「罪を犯した能力者と戦うなんて、諸々の事情もあって俺には難しいことですから。俺のことをそんなふうに仰っていただけるのは光栄ですけど、それを言うなら俺だってお二人のことを心から尊敬します」

「ハッハッハー、なんだか嬉しいことを言ってくれるね、山形さんは。ねえ葵さんや」

「そうですね師匠! えへ、褒められちゃいましたはっはっはー! 御礼にハグしーちゃお!!」

「!?」

 

 昨日よろしくまた、抱きつかれた!? 柔らかくて暖かい温もりが俺の身体にまとわりついて、気持ちいいやら嬉しいやらだ!

 葵さん、抱きつき癖でもあるのか? やたらスキンシップ多いけどこれ、勘違いする人はしちゃうぞこれ。しちゃうぞ俺。

 宥さんも割と無防備なところがあって、ああサークラ気質とか心のどこかでちょっぴり、思う場面は過去に何度かあったけど……葵さんはさらに過激だ。

 

 一体今までにいくつの男がこうした振る舞いで撃墜されたのか、想像するだに恐ろしいよ怖ぁ……

ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー


【ご報告】

本作

「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」

2巻の発売が決まりました!

2022年12月2日の発売となります!


WEB版から描写を増やしたりシーンを追加したりした、いわばフルアーマースキルがポエミーとなっておりますのでぜひぜひ、お求めいただけますようよろしくお願いいたします!


現在サイン本の予約開始してますので、

作者てんたくろーのTwitter(@tentacle_claw)

もしくは

PASH!ブックス公式Twitter(@pashbooks)

をご確認くださいませ!

よろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
[一言] ハーレム山形爆発しろ…(ぶつぶつ あ、明日新刊ですね! 忘れず買いますよ!
[一言] 昆虫軍団のグロさに思わずブッパしてしまったw
[一言] 称号効果で確定ドロップするから、ドロップアイテムもわんさと落ちてて拾うの大変そう
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