君達も人間最高と叫びなさい!!
説明も一段落ついて、俺はまた別件で話があるからということで、リーベを呼んで自室に戻った。
さっきは優子ちゃんがいる手前、不安がらせないためにも伏せていた倶楽部関係についてだ。リーベにはその辺、しっかり伝えておきたい。家族を護ることに協力してほしい部分があるし、何より相棒だからね。
「──というわけで実際のところ、さっきの話でも大筋は合ってるんだけどさ。それに付随して倶楽部なんて連中も絡んでたりするんだよなあ」
「へぁー……思ってたより大事でしたねー。何かこう、意図的に省いてる部分がありそうなのは感じてましたけどー」
ベッドに並んで腰掛けて、きちんと情報共有を行う。
リーベなりにさっきの、青樹さんがグレた云々の話について引っかかるところはあったみたいなので、やっぱり今ここで打ち明けておいたのは正解だな。
下手に隠したままだとそれこそいらぬ誤解をされかねない。何よりこの子は暗躍とか裏で画策とかってのが、するのもされるのも大嫌いなタイプだし。
かつてワールドプロセッサ相手にガチギレしてカチ込んでたのは、今も忘れられない姿だ。
「にしてもスレイブモンスターって……よくそんなことできましたねー。犯罪組織だとか密輸だとかに怒る前にまず、そこへの驚きが勝っちゃいますよー」
「それなー。いや本当、どうやってモンスターを手懐けてるんだか。しかも邪悪なる思念が存在していた頃、人間と見るや殺しに向かってきてた頃からだし」
率直にビックリ! って感じのリーベに、俺も俺もと返す。システム側の俺達としては、現世の法や秩序に対しての行為の是非以前にまず、スレイブモンスターって存在自体に対して仰天してるんだよね。
モンスターを生物兵器として利用してきたらしい、委員会という組織についてもそうだけど……この世の生物に対して絶対的な敵対者であったモノ達を、誘導とか擬似的なものにしろ自分達の思うように操ってみせるって発想がまずぶっ飛んでいる。
その上で倶楽部に至っては、技術としてモンスターを意のままにできる方法を編み出したというのだから驚くほかない。
人間が、明確にシステム側の思惑を超えてみせた例としてカウントしてもいいかもしれないくらいだ。決して褒められた話じゃないし、セーフかアウトで言ったら完全無欠にアウトだけれど。
『くくく……どこの世界も人間は、突拍子もないことを思いつくから楽しいねえ。モンスターを意のままにして世界中にばら撒くなんて僕にもなかった発想だ。はは、あははははっ! いやいや面白すぎるでしょ、最高!!』
と、脳内ではアルマが楽しそうに嘯く。こいつにとっては今も昔も完全に、この手の話は娯楽要素の一つでしかないんだろう。
食らった上で尖兵としたよその世界の魂が、こちらの世界の人間達に利用されて社会に混乱を巻き起こしてきたんだ。趣味の悪い邪悪なる思念さんからしたら、さぞや見応えのある寸劇くらいのものかもしれない。
味覚以外に楽しいイベントが起きたからか、やたら楽しそうな悪趣味アルマは放っておいて。
俺はリーベに、ずばりスレイブモンスターについて気になるところを言った。
「何より気になるのは、どうやってモンスターを手懐けてるのか、だ……リーベには何か、心当たりないか?」
「うーん……あるとすれば《モンスターテイム》とか《モンスター操作》くらいですけどー。あれ、没くらいましたしねー」
「だよなあ」
やっぱり思うところは俺と一緒か。返ってきた答えに頷く。
すなわち、モンスターに宿る魂を輪廻に受け入れるという目的上、本末転倒になりかねないだろう使役系スキルが何かの拍子にオペレータの手に渡った説だ。まずはそこから疑うよね、うん。
だけど、先にも述べたけどあの辺のスキルは現在、システム領域の最下層に封印されている。
厳重なロックを幾重にも重ねた上で、完全にワールドプロセッサの管理下に置かれているから、データが上層に浮上してくるなんてのはまずあり得ない。
一度オペレータに与えてしまったスキルは、ややこしい手続きを踏まないといきなり剥奪! なんてこともできない。
すべてのオペレータの動向を把握する、なんてのもさすがに難しかったというか、邪悪なる思念相手にしてるのにそんな余裕なかったというのもあり、割と渡したら渡しっぱなしだったんだよね、これまでは。
そういうわけで悪さしたオペレータに対して、いきなり没収! って処置はなかなか難しいわけなんだけど……
逆にだからこそ、没スキルを間違って渡すようなことがないよう、そこはワールドプロセッサも管理していたわけだね。
「となると、スキルに拠らない別な手段でモンスターを手懐けたってことになるけど……なんかある? 心当たり」
「あるわけないじゃないですかー。思い至ったらその時点でシステム領域全体に周知を図りますし、捨て置くことは絶対にしませんよー」
「そりゃそうだ」
精霊知能の一体でも、モンスターテイムの仕組みについて知る者がいたならば即、その情報を共有するよなあ。
つまりは今、システム側の俺達が知らないってことはワールドプロセッサ以下、他の精霊知能達にも把握できてないなんらかのテクニックがある、ということを意味している。
「システム側も知らない、人間側だけの技術がある、か」
「正しいことに使ってくれるのであれば、まだマシだったかもですけどー。世界中の好事家や犯罪組織に向けてバラ撒くなんて、どう考えても悪だくみでしかありえませんよねー……」
嘆息するリーベ。気持ちは分かるよ。
やっとこさ邪悪なる思念の件が片づいたと思ったら、今度はこれだものなあ。
ブックマークと評価のほう、よろしくお願いいたしますー
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