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能力者犯罪捜査官の二人が仲間になった!

 謎の秘密結社・倶楽部の三幹部がこの近辺にて活動していることが判明した今。

 エリスさんと葵さん──早瀬さんのことだ。師匠同様名前呼びでいいと言われた──の能力者犯罪捜査官としての活動は、しばらくこの地域一帯で行われるとのことだった。

 

 で、それに伴いヴァールが言うには、彼女ら二人をどうしたことか、俺と香苗さんの近くに置いておきたいのだとか。

 おそらく青樹さんの香苗さんへの執着、俺への憎悪を見越しての話だと思う。ヴァールが淡々と説明してきた。

 

「青樹のあの様子では、おそらくは懲りずにまた、あなたに仕掛けてくるだろう。これまで明確な暴力沙汰こそ起こしてはいなかった連中だが、とはいえ反社会的組織で今回の件もある。暴力に対して躊躇はないものと見ていい」

「ああ、やっぱり? おっかなかったしな、あの人たち」

「なので身辺警護も兼ねて、この二人はあなたと御堂香苗の傍に置いておく。様子見の意味もあり、あなたたちの周辺にまで危険が及ばないようにするための手立てでもある。無論、そのへんの安全関係についてはこちらでも二手三手と打たせてもらうがな」

 

 豪語する姿がなんとも頼もしい。そうだよ、下手するとうちの家族や友人知人にまで害が及びかねないんだよな。

 いくら今までにそうした行為には及んでこなかったからと言って、人質を取るとか強硬策に出てこない保証もない。もしそうなったら因果律を即座に改変してでも対処はするけど、そもそも起こさないように対策するのが一番だからね。

 

 俺や香苗さんの周囲の、素晴らしい人たちがどうか、危険な目に遭いませんように。

 願いながら俺は、ヴァールとエリスさん、葵さんに頭を下げた。

 

「ぜひ、おねがいします……うちの家族やご近所さんたち、学校の友人、探査者仲間たちに、何かの間違いがないように。お手数おかけしますが、よろしくおねがいします」

「……何が手数なものか。どうか任せてくれ山形公平、必ずあなたと御堂香苗の周辺を危険に晒さないようここに誓う。精霊知能として、WSO統括理事として、また一人の命としてだ。必ず、あなたたちに報いてみせる」

 

 生真面目なヴァールが、力強く応えてくれた。彼女のことだ、ここまで言ってくれたからには一切の手抜かりなく、俺の知る人たちを守り抜いてくれるだろう。

 その辺は信じることとして、次に俺と香苗さん自身についてだな。

 青樹さんの現状と、動き出した事態。なし崩し的に巻き込まれる形になった俺たち二人だけど、それを踏まえて今後、どう立ち回るべきなのか。

 

「やっぱりどこか、人から離れたところでしばらく身を隠すべきかな? 無関係な人たちを危険に晒さないためには、そもそも俺たちが近くにいるとまずいし」

「事態が長期化しそうであれば、それも手ではあるが……今の段階からそれをするのもな。加えて言えば、あなたも御堂香苗もすでにひとかどの探査者だ。それが揃って行方知れずになるというのは、いかにも騒ぎになりかねない」

「変に有名になったのが、逆効果になるか……」

 

 救世主と伝道師、揃って失踪! ……うーんゴシップ記事。

 今や100万人をも突破している例の活動が今なお活発に行われている以上、それが突然ピタリと途絶えれば大事にはなるよなあ。

 母数が母数だけに、結構なガチ勢の方もかなりの数になってるみたいだし。下手に騒がれるとそれこそ余計な被害になりかねないわけで、となると一時的に身を隠すってのは、よっぽどな事態になってからであるべきなのか。

 

「倶楽部に限って言えば、さっきも言ったけど緩いコミュニティの規模でしかないからね。組織だっての動きは基本、できないからそこまで神経質になる必要もないよ、山形さん」

「幹部間ですら、まともに連携取れてないのはさっきの3人からも分かりますし。その点、こっちはWSOトップを主導にした超一枚岩です。安心して日々を過ごしてくださいな」

「エリスさん、葵さん……わかりました。お言葉に甘えます」

 

 安心させるべくか、倶楽部の性質と幹部の連携の拙さを理由に挙げ、いかにこちらが有利であるかを語ってくれる師弟。

 そうした言葉に、俺は肩の力を抜いた──俺一人であれこれ考えても仕方ない。ヴァールたちを信じると決めたんだ、彼女たちプロフェッショナルに任せるのが、護られる者としての責務であり使命でもあるだろう。

 マリーさんが俺の肩を叩いて、笑いかけてくる。

 

「公平ちゃんや、大丈夫……私も知り合いを手配する。この町一つ護るくらいわけない力量の、頼れるやつさね」

「マリーさん」

「引退してるが、いざとなったらこの老骨も再び刀を取るよ。だからそう、心配せんでいいさ……あんたはもう、一人じゃない」

 

 優しく温かい言葉。俺はもう、一人じゃない。

 邪悪なる思念を倒すべく500年間、一人で居続けたコマンドプロンプトさえも労ってくださっているのか、このお方は。

 

 本当に、ありがたい話だ。感謝と敬意を抱く。

 もう引退されたマリーさんに、最高の終わりを迎えられたこの人にもう二度と、刀は握らせるつもりはないけど……心意気だけでも百人力だ。なんだか力が湧いてきた!

 

「よし、じゃあ倶楽部対策はしばらくそういうことで! エリスさん、葵さん。お手数おかけしますがよろしくおねがいします!」

「いやいやこちらこそ。お手間取らせてごめんよ山形さん」

「次に奴らと出くわしたら、絶対ギッタンギッタンにしてやりますから! 安心してくださいね、山形くん!」

 

 しばらくってのが、具体的にどのくらいの期間になるのか。明日かもしれないし一年先かもしれない、すべては倶楽部の出方次第だけれども。

 それでも浅からぬ付き合いになるだろう、エリスさんと葵さんに挨拶する。二人もそれに応え、俺たちは握手を交わすのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 居なくなるんじゃなくて伝道師のチャンネルで告知して「二人きりで合宿します!」って言ったらマッハで飛んでくるんじゃない?
[一言] まあでも可能な限り早めに終わらせたい案件よね 二学期まで持ち越すと身を隠すことになった場合、休み中よりいないことが目立って心配かけそうだし デデーン、山形君にだけ追加で夏休みの特別課題プレ…
[一言] 佐「ちょっと目を離した隙に二人も増やしてる件について聞きたいな?」 山「((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル」 合流後がたのしみだね?(ニコォ
感想一覧
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