表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
591/1839

火野くんアウトー(78年ぶり6回目)

 青樹佐智、火野源一、翠川均。

 さきほど俺に対して襲撃を仕掛けてきた例の3人組について、詳しく話を聞いていくと……どうもこれが、結構込み入った話に繋がっていっているらしかった。

 

「真人類優生思想の下、裏社会にてモンスターを海外へと密輸し続けている組織がある。先程の3人が所属していると思われる、倶楽部という名の秘密結社だな」

「倶楽部……クラブか。なんだか字面的には部活動とか、同好会って感じの響きだけど」

「強ち間違ってはいないだろう。真人類優生思想さえ持っていれば他は不問の、あらゆるタイプの人間が集う緩い繋がりのコミュニティのようだからな。探査者から能力者、果ては単なる一般人までもがメンバーにいることを確認している」

 

 ヴァールが語るのは、青樹さんたちが所属し、あまつさえ幹部ですらあるらしい謎の犯罪組織・倶楽部についてだ。

 バグスキル保持者を複数人も抱えている時点でかなり厄介な組織だとは思ったけど、その実態は割合、緩めの繋がりで構成された組織のようだった。

 

 まあ、青樹さんも火野も翠川もそれぞれタイプが違うというか、互いに互いを利用しあってる感じはあったからな、さっきも。

 特に青樹さんなんてあからさまに、掌の上でいいように転がされてる感あったし。火野老人の言葉にまんまとしてやられたこともあり、少しばかり苦い思いとともに振り返る。

 続けてモリガナさんが言った。

 

「倶楽部は規模だけならば世界的で、でもヴァールさんがさっき言ったように各国の組織同士の繋がり自体は緩い。だからどこかで一国の幹部を捕らえたところで、芋づる式にまとめてアジトに踏み込めるってわけでもないのが厄介なところでね」

「なので私ら師弟が世界方々を巡り、虱潰しに倶楽部のアジトを探し続けているんですよ、山形くん。この度来日したのもその一環です」

「犯罪組織を追って、世界中を股にかけてらっしゃるんですね……」

 

 なんというか、予想以上にスケールのでかい話が出てきた。国際的な犯罪組織かよ……そんなところの幹部だなんて、何やってるんだ香苗さんの元お師匠さん。

 それを追って世界を駆ける、モリガナさんと早瀬さんの能力者犯罪捜査官師弟コンビもだけど、なんだか映画が何かの設定みたいに思えてくる。あるもんなんだなあ、エージェントと犯罪組織のバトルだなんて。

 

「エリス先輩と葵ちゃんが今回来られたのは、さっきの連中を追ってですかい?」

「まあ、そうなるねマリー。厳密には青樹佐智一人を追っていたんだけど、まさか幹部格っぽいのが二人も釣れるとは思わなかったよ。結果的に誘き寄せるための餌みたいになってしまった山形さんには申しわけない物言いだけど、正直儲けた感はある」

 

 マリーさんの問いかけに、頭をかきながら気まずげにこちらを見てくるモリガナさん。なるほど、青樹さんを追ってみたら幹部格が二人もついてきた、と。鴨が葱を背負って来たというか、それこそ芋づる的な感じだったんだな。

 ていうか、モリガナさん先輩さんなんだね、マリーさんの。見た目は俺より少し年上くらいにしか見えないからアレだけど、たしかに雰囲気は老成しているものな。

 

 たぶんだけど、モリガナさんはモリガナさんでバグってるな。不老──肉体年齢停止バグでも引き起こしたか?

 その辺は後ほど、聞けるタイミングがあれば聞きたいところではあるけれど。今はとにかく先に、新たに現れた敵についての情報を得ることが先決だね。

 追加で現れた幹部の、火野と翠川についてヴァールも重ねて問いかける。

 

「翠川はともかく、火野に至っては80年越しの因縁だな。たしか、第二次モンスターハザードの際にエリスが叩きのめしたのだったか」 

「そうですね、ヴァールさん。そういやそんなやついたなあって、正直あの爺さんの名乗りでようやっと思い出しました。まだ生きていたのもそうですけど、いい歳してまだあんな悪ふざけしてるのかと目眩がしそうです」

「はっはっはー! 人生まるっと悪ふざけですね!」

「むごい」

 

 言われても仕方ないくらいの有様ではあったけれども、早瀬さん案外辛辣だよなあ。すっかり忘れていたモリガナさんもそうだけど冷淡な感じで、結果的にさきほど執着を見せていた、火野老人の独り相撲さが浮き彫りになる。

 78年前の、モリガナさんとの因縁か……第二次モンスターハザードって言ってるけど、そこで敵味方だった関係のようだ。

 ふとそのへんが気になって、モリガナさんに問いかける。

 

「ええと、モリガナさんは第二次モンスターハザードというものに関係していたと? そこであの、火野老人と戦ったんですか」

「エリスと呼んでほしいかな、山形さん……そうだね。78年前に起きたその事件で、当時18歳のうら若きエリスさんは、さっきの爺さんの若い頃の姿をボッコボコにしたよ」

「ボッコボコですか」

「首謀者の一人だったからね。4回か5回くらい戦って、その全部で半殺しにしたかなあ。最終的に捕まえはしたものの、間もなく脱獄して行方知れずになったとは耳にしてたけど……まさかこんなふうに再会するなんて。ハッハッハー、半殺し6回目かぁ」

 

 なかなか、血の気の多い話を聞いてしまった。モリガナさん……いやさエリスさんってば、結構気さくな感じだなあ。

 

 しかしそうか、ヴァールが第一次、モリガナさんが第二次。そしてたしか、マリーさんが第四次でそれぞれ活躍していたってこないだ、ヴァールが言ってたものな。

 そう考えるとたしかにモリガナさんは先輩で、マリーさんは後輩になるのか。78年前ったら、マリーさん5歳だしね。

ブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします

書籍1巻発売中です。電子書籍も併せてよろしくおねがいします。

Twitterではただいま #スキルがポエミー で感想ツイート募集中だったりします。気が向かれましたらよろしくおねがいします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 読み直して気づいた事 悲報火野老人、初代聖女に忘却される エリス「80年近くしぶとく生きてるとは」
[一言] システム側も、これまでのバグやダンジョンがらみの問題については責任を持って対処すべきですよね~。ということで、山方さん、積極介入を!
[一言] おじいちゃん弱ない?(苦笑 まぁ、普通に考えたら戦闘力的に相手が強すぎたんだろうけど、言動からしたらどちらかというと戦闘力よりも後方支援なのかな? こいつを止めないと何も終わらないタイプの思…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ