表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/1843

リッチはどこへ消えた?

 学校も終わって放課後、俺は予定の通り香苗さんと落ち合った。商店街の喫茶店に入り、二人で適度な軽食がてら話す。

 香苗さんは例によって今まで、A級ダンジョンをいくつか踏破していたらしい。よくパーティを組む探査者仲間もいるそうで、そのうち俺に紹介したいとも言っている。

 

「気の良い人たちですよ。きっと公平くんにも良くしてくれます」

「みんなA級なんですか?」

「B級もいますね。私抜きで前衛3人、後衛2人。サポーター2人です。みんな成人してますよ」

 

 なんなら私が最年少です。なんて、そんな風にして仲間を語る香苗さんがどこか眩しい。

 きっと長らく共に過ごして来たんだろう。それだけの絆を感じさせる様子で、俺としてもどこか安堵する。

 

 何しろこの人、何かっちゃあると救世主だの伝道師だのだからな。たまに思い出したように大人びられても、普段の言動が狂っているから不安を抱かざるを得ないんだよ。

 こういうごく普通の人間らしい話を聞くと、無性にホッとする。俺も俺で何やら毒されている気がするけど、大体この人のせいだと思う。俺は悪くねえ!

 

「私のことはさておき公平くん。わざわざダンジョン探査を中止してまで、相談したいことがあるとは伺ってますが……一体、何があったんです?」

「あ、ええ。すみません、実は──」

 

 話もそこそこに本題へと入る。

 昨日、妹の同級生である、F級探査者の逢坂さんに会ったこと。戦闘能力皆無で、サポータースキルしか持っていない彼女が、E級昇格試験を受けようとしていること。

 やたら焦って冷静でなかったので話を聞いてみると、師匠の望月さんが四日前にE級ダンジョンにて消息を絶ったということ。そのダンジョンには最寄りのB級ダンジョンから亡命してきた、リッチが住み着いていたらしいこと。

 

 そして逢坂さんの目的が、香苗さんに一緒にそのダンジョンへ潜ってもらい、リッチが倒れるところを見届けてせめてもの仇討ちとすることだったことまで。

 とにかく俺の知っている成り行きについてすべて話した。

 

「無謀極まる話ですね。まともな探査者なら誰も、そんな無茶に付き合いはしないでしょう」

 

 呆れも露にバッサリ両断。それがA級トップランカーとしての香苗さんの判断だった。

 

「ですよねー」

「リッチが危険な、それこそB級探査者がパーティを組んでなお手を焼くクラスのモンスターであることなんて、探査者であれば普通は分かっていることです。師匠を失い冷静でないのは分かりますが、それでもありえない要求としか言えません」

 

 この人をしてここまで言わせる。たしかに資料で読んだ限りでも、それほどの恐ろしさを秘めているのがリッチというモンスターだ。

 アンデッドという種類に属するリッチは、自分より下位である同族モンスター、C級のグールやD級のゾンビ、E級のスケルトンなどを操り軍勢を成すらしい。

 

 一体一体は大したことのない連中も、それが無数の群れとなれば数人程度のパーティではどうしようもない。

 実際過去、記録を紐解けばアメリカのダンジョンでリッチが軍勢を拡大し、スタンピードさながらの様相を呈したことがあると残されている。

 鎮圧に数百人規模の探査者を投入したその戦いはもはや戦争に近いものであり、非探査者にまで被害が甚大だったという。

 

 それほどの危険性を秘めたモンスターを、子守をしながら相手など無理がある。

 香苗さんに限らず、普通の知識と感性、判断力を備えた者であれば相手にすらしないだろう。あれっ? そう考えると一応でも相手しちゃった俺は普通じゃないのか? 悪い意味で非常識なの?

 

『公平さんが普通だったら世の中の全部が異常じゃないですかー?』

 

 急に出てきて人をディスるな! 存在からして異常なお前にだけは言われたくない!

 リーベの失礼な物言いに抗議しながらも、俺は香苗さんに向き合う。逢坂さんの願いがいかに無茶振りで、非常識なものであるのかはわかった。

 問題はリッチの方だ。E級ダンジョンにB級モンスターが居座るトラップそのものな現状を、探査者組合はどうするつもりなのだろうか。

 

「どうなりますかね、そのダンジョンとそのリッチ」

「実のところ、私もそのダンジョンについては耳にしていました。望月という探査者が行方知れずとなったことも、一応は」

「あ、そうなんですね」

「上級になればなるほど、アンテナは自然と高くなるものですよ」

 

 そう言って笑う。たしかに上級探査者ほど、界隈の動きに敏感でなくてはならないのだろう。ましてこの人、国内トップクラスだからね。

 踏まえた上で、続きを促す。彼女は頷き、さらに答えた。

 

「現在、そのダンジョンは探査禁止令が敷かれ、封鎖状態にあります。順当に考えれば間もなく、組合からの依頼という形で上級探査者によるパーティを結成され、リッチ討伐も含めた踏破が行われるでしょう」

「危険すぎて、一般の探査者に潜らせられないですもんね」

「既に犠牲の出ている事案ですから。組合としても本気で乗り出していくでしょう」

 

 御堂さんがそう、言ったとおりに──

 二日後、当該ダンジョンへ組合派遣の上級探査者パーティが結成され、そして踏破へと至ったとのことだった。

 

 …………肝心のリッチが行方不明なまま。

この話を投稿した時点で

ローファンタジー日間、週間、月間1位、四半期6位

総合日間10位、週間3位、月間17位

それぞれ頂戴しております

ありがとうございます

引き続きブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
リッチ『上位探査者の群れこっわ! もいっかい亡命するわ』
[一言] 最後の、リッチが行方不明というのはここで初出ですよね? なんか凄い唐突感がある。いきなり何いってんの?みたいな
[一言] 「私も一緒に連れて行って!」じゃなくて 「誰か仇をうって下さい!」だったら問題なかったんでしょうね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ