表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
577/1839

和風巫女お姉さんに先生って呼ばれたいだけの人生だった……

「俺が……師匠!?」

「ああ」

 

 驚くべき提案だった。アメさんとガムちゃんが、それぞれ保持しているスキル《召喚》と《忍術》について、俺から学びたいというのだ。

 空いてる時間だけでもとはいえ、事実上の弟子入り志願と言える。いや俺も全然新人なんですが。むしろ誰かしらの弟子でもおかしくないんですけど。

 

 一体全体どうしてそんなことを言い出したのか? 不思議がる俺に、関口くんは事情を説明し始めた。

 

「今日の昼過ぎに三人娘と斐川さんたち、指導教員方が面談を行ったんだ。ちょうど俺やお前が香苗さんと一緒に探査していた頃だな」

「ああ、今朝方にそんなことを仰ってたね、斐川さん。3人に事情を聞きながら、今後の意志について確認するとか」

 

 関口くんの先輩指導員、斐川さんと荒巻さんと早瀬さん。

 俺と香苗さんも今朝には面談をした、あの人たちはチョコさんたちとも話をしたみたいだ。ああした事態になった以上、当事者である3人には直接事情を聞かないといけないだろうしね。

 

「ありがたい話で、3人の指導は引き続き俺をメインに、補助要員として斐川さんたちにもついてもらう流れにはなったんだけど……それはそれとして、アメとガムから要望があってな」

「要望って、それが今の話? 俺を師匠とかどうとか」

「二人とも、お前からの助言に助けられたって意識が強いみたいなんだ。だから今後も折に触れ、お前に鍛えてほしいって言い出しててな。知り合いだし、ダメ元でも頼むだけ頼んでみようかってなったわけだ」

 

 そう言って、関口くんはアメさんとガムちゃんを俺の前に立たせた。彼自身は一歩退いて、チョコさんと二人、それを見守る。

 で、俺の前に立った二人はと言えば、緊張した面持ちで──アメさんは無論のこと、ガムちゃんまでもが固くなっている──俺に、自身の想いを告げてきた。

 

「先日は山形くんには、本当に助けられました。スキル《召喚》の隠された性質や能力について教えていただいて、おかげで私でもパーティの役に立つことがどうにか、できそうなんです。本当にありがとうございました」

「私も……指揮官役を振られて不安だった時に、優しくしてもらって。チョコさんとアメ姉の本当の力を、私なら引き出してあげられるって、私ならやれるって、励ましてもらえて。本当にあの時、嬉しかったです。柄じゃないかもですけど、感謝してます。ありがとうございました」

「いや、それは……そんなことは。思ったことをそのまま、伝えてみただけですから。あの、お気になさらずに」

 

 めっちゃ本気の感謝を向けられて、むしろこっちが恐縮する。正直、マジで感じたこと、思ったことをそのまま口にしただけなんだものなあ。

 アメさんについてはたぶん、バトルに先駆けて召喚しておいたほうがいいんじゃないかなーみたいなアドバイスの話をしているんだと思う。ガムちゃんは本人も言ってたとおり、パーティの指揮官を務めるにあたって緊張してたから、俺なりに励ましとかエールを口添えた感じでしかない。

 

 なんだけど……それが案外、お二人には得難い話だったみたいだ。なんかこう、むず痒くなる熱い尊敬的な眼差し的なアレでまっすぐに見てきている。

 どこか熱っぽい声音で、アメさんが思いの丈を述べていった。

 

「《召喚》についてはこれまで、私も指導員の方々も各自、文献を紐解いて学びながら実態を把握するしかありませんでした。周囲に保持者が少なくて、資料から読み解くしかなかったんです」

「ああ……まあたしかに、召喚系スキルは使用者が少ないですね。その上でノウハウの肝になるのが結局、探査業とは関係ない部分でのコミュ力ですし、なかなか技術的な継承は難しいですか」

 

 何せ神々との交信能力とも言えるスキルで、うまくやれば強大な力を持つ神の力さえ借りることのできる可能性を秘めているからな。

 いたずらにばら撒く類のものでなし、保持者が極度に少ないのも仕方ない話ではあるよね。

 

 その上、あくまで召喚系スキルは"謁見できる権利"でしかない。そこから保持者当人のコミュニケーションによって、呼び出そうとしているモノの協力を取り付けなければならないのだ。

 こればかりは誰にもなんとも教えようがないよね。少なくとも俺には無理だ、なんならコミュニケーションの仕方を誰か教えてくれってレベルだもの。

 そんなわけなので《召喚》については、すべての仕様を予め網羅するというのは難しいと言えた。

 

「そんな中、どうしたことか山形くんは《召喚》について、明らかに私より、指導員の方々よりも詳しいんですもの。教えを乞わない手はないって思って、こうして師事をお願いしに来ました」

「別にそんな、師事なんてせずとも聞かれたら答えますよ。だからほら、師弟とか言わずに穏便に」

「いえ! こういうことはしっかりしないといけませんもの! 山形くん、いえ先生と呼ばせてください! これからこの鹿児島天乃は、先生を敬い尊びます!」

「えぇ……?」

 

 急に一人で盛り上がらないでよ怖ぁ……

 師弟関係ってのに何やら思い入れがあるのか、年下の俺相手にも躊躇なく下手に出てきたアメさん。年上の美人お姉さんに先生って呼ばれるの、そこはかとなくマニアックな匂いがして怖いんですけど。

ブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします

書籍1巻発売中です。電子書籍も併せてよろしくおねがいします。

Twitterではただいま #スキルがポエミー で感想ツイート募集中だったりします。気が向かれましたらよろしくおねがいします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 極めれば神格まで召喚できるなんて…信者となればシャイニング山神が召喚できるようになるか⁉
[一言] 新たな幹部候補生の誕生か。
[一言] 召喚巫女が伝道されてしまう!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ