表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
573/1839

年下、同年代、年上。隙がないよね

「あれ、山形パイセン?」

「うん?」

 

 不意に声をかけられたのは、えびせんを粗方食べ終えたあたりのことだ。野外ホールまで行って、みんなでダンスを見ていた時のことになる。

 あたりに響くポップミュージックに合わせての創作ダンス。俺にはこの手の技術とか、評価点なんてものはわからないけど……なんとなし、よく動くなあとか、動きが曲に合ってる感じするなあ、とかそんな感じで素人目にもそれなりに楽しんでいた。

 

「え、今俺、なんか呼ばれた?」

「誰だろ、どこからかな。知り合いの声?」

「パイセンって言うんだし、まあ心当たりは一人……ああ、いた」

 

 いきなりあらぬ方向からの呼び声に、なんだなんだと振り向く。隣の梨沙さんまでもが目を丸くしてあたりを見回している。声の主は予想に違わず、そしてすぐに見つかった。

 人で賑わうホールの前、聞こえてきたほうから見知った顔が3人、やって来たのだ。こないだ知り合いになった人たちで、今朝方も彼女たちのことでいろいろ、関口くんや斐川さんたちとも話をしたな。

 

 チョコさん、アメさん、ガムさん。

 おかし三人娘がそれぞれ浴衣を着て、俺たちの前に姿を見せたのである。

 

「お疲れさまです。この間はどうも、パイセン。デートっすか年上キラーが同年代と。同年代ハンターの異名も獲得するんですかすごいですね」

「違うよ? クラスのみんなと来てるんだよ? っていうか年上キラーも同年代ハンターもやめてもらえます?」

「わかりました年下ラヴァー」

「それも違うよ!?」

 

 あやうく三冠王しかけるところに、慌ててストップをかける。年下ラヴァーは特にヤバいだろ!

 実際のところ漫画やアニメとかだと俺、年下ヒロインのほうが好きだったりするんだけど……という内心の暴露はさておいて。すっかり遠慮なしに物を言うようになったガムちゃんに挨拶する。

 

「まったく……お疲れ様です。元気してた? ガムちゃん、それにチョコさんとアメさんも」

「お陰様で。連携のほうもぼちぼちと」

「こんにちは、山形さん! この間はありがとうございました!」

「山形くん、お疲れ様。お陰で私たち、前よりずーっと仲良くやれてるわ〜」

「それは何より」

 

 三人娘の挨拶と言葉に、この間の探査を経て彼女たちが、より深く強い期絆で結ばれたらしいことを見て取り、ホッとする。

 まあ、元から戦闘以外では仲のいい三人だったからね。唯一のギスりポイントだった連携の拙さに、それぞれが反省する形で向き合っていくなら、和解や歩み寄りなんて簡単にできることなんだろう。

 

「ね、ね。知り合い? 公平くん」

「ん? ああ、探査者のね。このあいだ縁があって知り合ったんだ」

 

 そんなタイミングで梨沙さんが、目を丸くしつつも俺の裾を引っ張ってきた。どうでもいい話だけどその、女の子に裾をくいって引っ張られるの、すごく嬉しい気持ちになるね。なんか、気のおけない感じがして。

 じんわりとした幸福感を噛み締めながら、俺は梨沙に三人娘を、三人娘に梨沙さんを紹介する。

 

「ええと、左から徳島さん」

「徳島千代子です! チョコって呼んでください、よろしく!」

「鹿児島さん」

「鹿児島天乃です。アメって呼んでね、うふふ」

「そして新潟さん」

「新潟花夢。花の夢と書いてカノン。ややこしいからガムって呼ばれがちです、よろしく」

「私ら3人、探査者パーティ・おかし三人娘でーす! 以後、お見知りおきをー!」

 

 三人娘がそれぞれ名乗りを上げて、最後にパーティ名を告げてポーズを決めた。いやパーティの名前それでいいのかい?

 チョコ、アメ、ガムと、あだ名がみんなしてお菓子みたいだから転じておかし三人娘と俺や香苗さんは呼ぶし、彼女らもそのことは承知しているけれども。

 だからってそれだけでパーティ名までそれに合わせる必要も、ない気がするんだけどなあ。

 

「こ、個性的……あ、あの、私は佐山梨沙と申します。こちらの、公平くんのクラスメイトで友達です。いつも公平くんがお世話になっております」

 

 梨沙さんが若干、テンションについていけずに顔を引きつらせつつも、それでも自己紹介する。

 折り目正しい所作で美しく礼をする姿が、浴衣姿もあってかものすごく和風美人に見える。金髪ギャル系女子高生なのに。不思議だ。

 

 三人娘も似たようなことを思ったのか、びっくりしたように彼女を見、次いで俺を見ている。何かな、俺がこんな美人さんの半径5メートル以内に存在していることが不思議なのかな? 実は俺もだ。

 ガムちゃんがニンマリと笑って、俺に近づいて肘で小突いてくる。

 

「ンですかパイセーン、隅に置けないじゃないっすか同年代ハンターさーん」

「何が? そして同年代ハンターやめてって」

「この際ですし年上キラーと年下ラヴァーまでこの場でコンプしちゃいます? 今なら将来有望天才覇王忍者ガムちゃんとおっとりポンコツお姉さんアメ姉がセットでお得ですよ?」

「コンプ!? 君いったい俺のことなんだと思ってるの!?」

 

 執拗に人をトロフィーマニアにしないで? そしてアメさん、顔を赤らめてモジモジしないで、今あなたはしれっとポンコツ呼ばわりされたんですよ?

 なんていうか、強制的にペースを持っていかれるなあ、ガムちゃん相手だと。ニヒヒと笑う彼女に、俺も梨沙さんも顔を見合わせて苦笑いするのだった。

ブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします

書籍1巻発売中です。電子書籍も併せてよろしくおねがいします。

Twitterではただいま #スキルがポエミー で感想ツイート募集中だったりします。気が向かれましたらよろしくおねがいします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] さすが山河 この三冠王の記録は余人には破れまい
[一言] 年下……生後数ヶ月のリーベかな(笑)
[一言] 年上キラーと聞いて飛んでくるちょっと年上から150歳までのお姉さん達が……w
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ