どいつもこいつもイチャイチャしすぎ(真顔)
梨沙さんが来てすぐ、松田くんと木下さんがやってきた。
二人して一緒に来たもんだからおや? と思ったんだろう、リア充グループの人たちにいろいろからかわれているね。
「お熱いですねぇ〜お二人さん!」
「え、え、馴れ初めは!? どっちから先に告ったの!?」
「やるじゃん松田!」
などなど、矢継ぎ早に好き放題言われて当のお二人さんは顔を赤らめて必死に否定している。
でも並んで手を振る仕草からしてそっくりなので、その息の合い方がますますからかわれる要因になってると俺には思えるなあ。
「ち、ちげーし! 誰がこいつと!」
「そ、そーよ! 私だって別に、たまたま!」
青春かな? 典型的なラブコメを見せつけられて、思わずコンビニまで行ってブラックコーヒーを買ってきちゃった。苦い。
一緒についてきた梨沙さんはリンゴジュースを買って飲んでいる。俺と二人、遠巻きに夫婦漫才を繰り広げる彼らとそれを囃すクラスメイトたちを、眺める形になるね。
といっても話の内容はお二人さんでなく、本当に世間話程度のことだったけど。
「あ、じゃあ妹さんたちも夜祭に来るんだ」
「そうそう。それもリーベが片っ端から知り合いに連絡したみたいでさ、かなりの大所帯みたい」
「そうなんだ? 顔が広いんだね、リーベちゃん」
「人懐っこいからね」
妹ちゃんやリーベも、知り合いを呼んで夜祭に来る。そのへんの話をしたら梨沙さんがやけに食いついてきた。リーベとはこないだのプールの時に軽いながらも会っているので、知り合い程度には思ってくれているんだろう。
肩と肩が触れ合うくらいの距離。袖すり合うも他生の縁とは言うけど、実際袖がすり合う距離ってかなりの密だよね〜などと、ちょっと内心ドキドキな俺ちゃん。
そんな俺に気づいているのかいないのか、構わず梨沙さんは笑いかけてきた。
「だったらさ。リーベちゃんや公平くんの妹さん、お父さんにももしかしたら会えるかもしれないね」
「可能性は無くはないよね。たぶんだけど、個性的な集団だろうし、向こう」
「そうなの? なんか楽しみ。いつもお世話になってますって、ご挨拶したいなあ」
瞳を輝かせてこちらを向く梨沙さんに、俺も視線を合わせて笑う。世話になってるって、それはこっちのセリフなんだけどね。
まあ会うことは会えると思う。ていうか実際、相当目立つ集団だろうし、向こうは。
確定で父ちゃん、優子ちゃん、リーベに加えてマリーさんとソフィアさん。これだけでもかなり目立つけど、さらに追加でリーベの知り合いが何人かいるだろう。
現状、あいつの知り合いったら俺の知り合いでもある。思い当たるにベナウィさん、リンちゃん、宥さん、逢坂さんあたりか? 呼ぶとしたら。
そしてその人たちも用事がなければ来そうな気配がする。なんならベナウィさんなんてご家族総出で来てもおかしくないしね。
それを思うと、なんていうかすごい多様性のある集団になりそうなんだよ、リーベグループ。しかも父ちゃんを除いて美男美女揃いだし絶対目立つ、確実に目立つ。
となれば普通に、一目見て分かるだろうなってのは想像に難くないのだ。
「──だから、見ればすぐ分かるよ〜って、どしたの梨沙さん、苦笑いして」
「え。あ、いやその……すごい、思ってたより有名人さんたちがいっぱいだなーって。フランソワさんにチェーホワさんに、望月さんって」
「あ、ああ……たしかに。みんなそれぞれ、有名だもんね」
苦笑する梨沙さんに納得。たしかに今挙げたメンツのほとんど全員、有名探査者だ。
ベナウィさんとリンちゃんについては界隈内で名高いに留まるけれど、マリーさんとソフィアさんは国際機構の役員だし、宥さんは国内でも有数の配信者ということもあって一般においても広く知られている方々だからね。
それを考えると、リーベのグループは豪華メンバーとしか言いようがない。なんなら父ちゃんと優子ちゃんが非探査者な分、浮いてるようにさえ思えるほどに。
図太すぎるくらい図太い父ちゃん──初対面のサン・スーンさんとも秒で打ち解けるコミュ強っぷりだもの──はともかく、優子ちゃんは俺や母ちゃんと同じで肝は小さいから。下手すると怖ぁ……ってなってそうだ。
強く生きろ、妹よ。
内心でテキトーなエールを送りつつも、俺は梨沙さんに応える。
「みんな優しくていい人たちだよ。新人の俺にもよくしてくれて、一緒にいろんなことを乗り越えた仲間だ。きっと、梨沙さんとも仲よくなれる」
「そ、そうかな」
「向こうだって、梨沙さんと仲よくしたがると思うよ。ほら、リーベがすでにあんな感じだったし」
リーベって接点があるなら、そこを起点に知り合い同士だって結びつくだろう。あいつのそのへんのコミュ力は計り知れないからね。
加えてマリーさんとソフィアさん、ベナウィさんは年と立場が離れすぎてるからともかく、年齢の近いリンちゃんや宥さん、逢坂さんとは問題なく打ち解けることだろう。
みんな普通にコミュ力高いしね。俺にも1%くらい分けてほしいもんだよ。
「だからまあ、リーベたちを見かけたら一緒に話そうか。俺もいるし、大丈夫大丈夫」
「公平くん……うん。公平くんと一緒なら絶対大丈夫だよね」
俺の励ましに、淡く笑みを浮かべる梨沙さん。
うん、まあ……コミュニケーション関係で俺を頼るのはちょっとなんだけど、それは言うまい。
頼むぞ、リーベ!
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