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メールやSNSだと異様に堅苦しい口調になるヤーツ

 ワールドプロセッサの秘密主義についての話が、リーベの何らかのスイッチを押しちゃったんだろうね。彼女ったらすっかりぷんすかしちゃって、矢継ぎ早に愚痴を溢し始めちゃっていた。

 

「大体ですよー? あの方、人使いっていうか精霊知能使いが荒すぎるんですよー!」

「う、うん」

「そりゃ世界が食われる瀬戸際でしたから、仕方ない部分もありましたけどー……アドミニストレータ計画の企画立案から決戦スキルの構築、つまりは天地開闢結界と三界機構の解析を同時並行でやれなんて無理無茶無謀の三拍子だったんですよー!」

「お、おう」

「特に天地開闢結界の解析! やれって言われたときのリーベちゃんの気持ちわかりますかー!? まるでわけのわかんない異界の理や権能を理解して細分化して検証しろなんて、普通に考えてできるわけ無いでしょー!?」

「そ、そうだね」

 

 まあ出るわ出るわ今までの愚痴と不満と。よっぽど溜まっていたストレスなんだろうな、だって100年以上に渡る無茶振りなわけだものなあ。

 たしかに、アドミニストレータ計画を進めつつ決戦スキルを創れってのは半端なく重労働だ。なんなら重責も極めて大きいし、リーベが半泣きでキレるのもわかる。

 

 アドミニストレータ計画の進行は、軌道にさえ乗ればあとは出たとこ勝負なところはある。そこはまだいい。

 問題はやはり、決戦スキルの構築だよなあ……天地開闢結界の無効化と、三界機構の核となった異世界のワールドプロセッサたちを再起動させるスキルの作成。

 つまるところ、元々この世界の理ではないモノたちの能力や権能について細かく分析して対抗策を練りなさいという命令なのだから、はっきりととんでもないよね。

 

 片や4つの世界を食い尽くした、狂えるワールドプロセッサの誇る絶対権能。片や、その狂えるワールドプロセッサによっておもちゃにされたとはいえ、元々は異世界のワールドプロセッサそのもの3体。

 これらについて精霊知能が1体だけで、解析して分析して無効化するスキルを創れと言われたんだ。無茶振り以外の何物でもない。

 

 っていうかむしろ、よくやり遂げたなこいつ。

 ひたすらにぼやきながらもなんだかんだ、アドミニストレータ計画をほぼ完璧に遂行せしめたリーベによくよく考えて慄然とする思いだ。

 この子、ワールドプロセッサの無茶振りに答えきったんだよな……

 

「逆によく決戦スキルまで創りきったよな、リーベ……山形公平としてはもちろん、コマンドプロンプトとしてもそこが一番驚きだわ」

「……まあー、なんだかんだ私だって精霊知能ですしー? 何よりとっても出来のいい優等生なリーベちゃんですからー? ちょっと一時期おかしくなりかけたくらいで、どうにかやり遂げましたともー」

「おかしくはなりかけたのか……」

 

 俺の称賛にちょっと機嫌が持ち直したのか、ドヤ顔を披露しつつもさり気なく恐ろしいことを言うリーベ。

 おかしくなりかけたって、そりゃなあ。この世の理の元に生まれた存在で、異世界の理を解析するってのはとてつもない負担だったろう。

 

 そんなになってまで、それでも自分に課せられた使命を果たしきった彼女に、深い感謝と尊敬を抱く。

 何か、美味しいものでも奢ってあげようかなー、などと考えた矢先に、不意にスマホが通知を表示してきた。

 見ればうちのクラスのグループチャットに数件の返事と、関口くんからのメールだ。朝方ぶりだな、どれどれ?

 

 

『香苗さんは明日は予定があるんだな、わかった。そしたら悪いけど29日の朝10時頃、組合本部の談話室に来てもらっていいか? 別に堅苦しい話はしない、チョコたちへのアドバイスと俺に協力してくれたことへの礼を、先輩教官たちがしたいってだけだ。そういうことだから、よろしく頼む』

 

 

 関口くんからは朝方のやり取りの続きだ。明日か明後日、彼と一緒に三人娘を指導していた探査者さんたちとの面会。

 どうも関口くんの、指導員としての成長をも見込んでいたらしいその人たちから、直接会って礼がしたいとか言われているのだ。

 

 まあ、別に拒否する理由もないし。都合が合うなら明後日の朝、探査ついでにお会いさせてもらおうかな?

 香苗さんが明日、例の青樹さんから受け取ったマントについて調べてくるらしいから、それについても知りたいし。

 

「わかった、明後日の10時だね。こちらこそよろしく……っと。送信」

 

 すかさず関口くんに返信。というわけで明後日の午前は予定が決まった。

 次に今度は、クラスのグループチャットアプリを開く。新着でいくつか、メッセージが打ち込まれているみたいだね。

 

 

『私も行くしヨロシクー』

 

 

「梨沙さん、来るのか」

 

 明後日の夜祭に参加するかどうかって話題で持ち切りのチャット内に、ついに俺がいつも遊んでいる友だちも返事を返していた。

 梨沙さん。次いで松田くんや木下さん、遠野さんも相次いで返事をしている。無論というべきか揃って参加するつもりらしく、いつものメンツでは片岡くんと俺以外、みんな夜祭にいくみたいだ。

 

 ふむふむ。これなら俺も参加して大丈夫そうだな。

 ノコノコと参加した挙げ句、仲いい人が誰もいなくて怖ぁ……って泣きながら屋台を孤独に巡る山形くんはいなさそうでよかった。

 というわけで俺も返信、と。

 

 

『お疲れさまです。山形です。僕も参加させていただきたく思いますのでなにとぞよろしくおねがいいたします』

『片岡です。参加します』

 

 

「…………片岡くん」

 

 まったく同じタイミングで似たような参加宣言。俺とよく似たつまるところは陰キャな友人、片岡くんと思いっきりメッセージが被ってしまった。

 たぶん、同じことを考えたんだろうなあ。友だちが参加するみたいだし、じゃあ俺も、みたいな。まったく行動が同じすぎて親近感しかない。

 グループの中でもやっぱり、片岡くんとは特別近しいものがあるんだよなあ……

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― 新着の感想 ―
[一言] 陰キャはちょっと知ってるだけの人とのメールは丁寧語、わかりますw
[一言] よしこれからはブラックさんと呼ぼう
[一言] それは業務連絡なんだよなぁ……
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