アポを取るのは早めにしよう!
部屋に戻ってひと寛ぎ。椅子に座って机に向かい、パソコンを起ち上げつつスマホを弄る。
ええととりあえずソシャゲ、デイリーこなして無料ガチャ回して、と。ああ、ちなみに昨日の夜にありったけのガチャ用アイテムを費やしてなお大爆死した山形くんが俺になります。
こないだのピックアップガチャの時にはめでたく大勝利したのに、これが反動あるいは因果応報というやつだろうか。かなしい。
今回はそこまで射幸心を煽るキャラクターでないのが不幸中の幸いだ。いやそれならガチャするなよという話なんだけど、まあせっかくだから、ね?
「……ん、メッセージ?」
最悪課金するかなーと、親に聞かれたら怒られそうなことを考えながらもそれはそれとして。SNSアプリにメッセージがいくつかと、メールが一通が来ているとの通知が出た。見ると何人か、知り合いから来てるな。
深夜、寝ている間にクラスのグループチャットと関口くんからはメール。そんでもってつい今しがたにソフィアさんからメッセージ。何々、人気者ですか俺ちゃん?
なんじゃらほいと一つ一つ確認していく。まずはグループチャットだ。
『明後日29日、大橋前の公園で夜祭があるから参加する人、集合!』
という呼びかけ。クラスの中では関口くんと同じグループにいる、イケメン陽キャくんの提案だね。
それに呼応するように何人も挙手ないし行くだの行けないだの返信している。基本的に関口くんグループの人メインだけど、他のグループの人も何人か返事してるな。
俺も返事したほうがいいんだろうか? と思ったけどひとまずはスルーで。迂闊に行きますって答えてのこのこと参加した結果、親しい友人が一人もいなくて怖ぁ……ってなる可能性あるからね怖ぁ……
梨沙さんや松田くんたち、いつもの面子が何かしらリアクションしたら答えようかな。とりあえずそういうことにして次、関口くんのメールだ。どれどれ?
『深夜に悪いな、山形。昨日はありがとう、助かったよ。他の教官方に顛末を報告したら、一度お前と香苗さんに礼がしたいって言われてな。よければ28日か29日の午前にでも、二人で組合本部に来てもらえないか? 俺としても改めて礼をさせてほしいし、頼むよ』
なんともまあ、意外とメールの文面がお堅い。それこそさっきのグループチャットとかだと、結構砕けた感じなんだけど、探査者としてのメールだからだろうか? 切り替えてるのかね。
さておき、他の教官方っていうと関口くんに三人娘の世話を任せていた、先輩探査者さんたちか。報告を受けてそんなことを言い出すあたり、彼の言うとおり指導を丸投げしているわけでもなかったんだな。
明日か明後日か、か。とにかくヒマヒマしてる俺はいいとしても香苗さんのスケジュール次第だな。さくっとチャットで彼女にメッセージを送る。
──相変わらず早いよ、返信。秒で返ってきたメッセージに慄然とするものを覚えながらも、確認する。
『私としましては29日のほうが助かります。明日は例のマント、彩雲三稜鏡の検査を頼みにあちこち向かいますので、厳しいかもしれません』
とのことなので、必然的に29日に決定か。仮に夜祭に行くとなればまあまあ忙しない日になりそうだな。行くとすればだけど。
ていうか香苗さん、彩雲三稜鏡の検査に明日、行くんだな。元とはいえ師匠の青樹さんからS級昇格祝いにと、もらったマントをそこまで疑わなきゃならないってのは物悲しいけど……関口くんをも含めたあの三人の経緯を思えば、仕方のないことなんだろう。
「ええと、29日なら香苗さんともども行けるけど……と。送信。次、ソフィアさんのメッセージか」
関口くんにとりあえずメールを返して、あとは返信待ち。それをもって香苗さんにも正式にお時間を取ってもらおうかな。
そっちのほうはそれでいいとして、最後にソフィアさんからのメッセージを確認する。どう考えてもこの人からの話が一番重要度が高そでちょっと怖い。WSO統括理事直々の話なんて、とんでもない内容じゃなきゃいいんだけど。
恐る恐るチャットを開く。そこには、意外なことが書いてあった。
『早朝より失礼する。ソフィアでなくヴァールだ、山形公平。ついては直接会って話したいことがあるので、アンジェリーナとランレイを連れて本日の9時頃、あなたの家にお邪魔しても構わないだろうか? 突然で申しわけないが、よろしく頼む』
「本当に突然だな!?」
マジでいきなりの来訪とか、逆にすごいなこいつ!
ソフィアさんじゃなくてヴァールからのメッセージだったことにもビックリだし、なんでかアンジェさんとランレイさんを引き連れてくるつもりだってのもビックリだけど、何よりこの唐突な突撃っぷりが一番ビックリだ。
雑いな、アポの取り方……なんとなくヴァールらしいっちゃらしいけど。
たぶんそういうこと、ソフィアさんに任せきりだったんだろうなあ、あいつ。こないだ見せた脳筋バトルからもなんとなく伺える細かいことは考えない感じが、逆に不器用な愛嬌を感じさせてくる。
ま、うちの家族のことだし否やは言わないだろうけど。そもそもうちに来るとして、話は俺の部屋でするだろうし。
てなわけで俺はすぐ、ヴァールに向けていいよー、と返信したのであった。
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