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当たり前のように手を繋ぐバカップル(憤怒)

 ダンジョンを出る。商店街の路地裏はあいかわらず日陰に埋もれているけれど、夏の熱気だけは他と変わらず孕んだ空気が流れる。

 ダンジョンが消滅したことを確認して、俺たちはじゃあ次行こうかと歩き出した。関口くんと三人娘を後ろから追う形で、俺と香苗さんが並んで歩く。

 道すがら、俺たちは身を寄せてあれこれと話していた。なんでか彼女が俺と手を繋ぐのが、嬉しいけど恥ずかしいし突拍子もないから怖い。

 

 なんなら前を行く関口くんが目ざとく気づいてチラチラ睨んでくるし。怖ぁ……

 そんな戦慄の山形くんにも構わず、香苗さんは俺にボソリと尋ねてきた。

 

「昼までに終われると思いますか? どう思います、公平くん」

「微妙なところですね……新しいやり方と、それを指導する関口くん次第になりそうな気がします」

 

 時刻は10時前。さっきの探査に30分そこそこしかかけていないので、このペースでいけば普通に昼前には依頼もすべて片づくだろうけど……俺と香苗さんで二部屋分瞬殺してのタイムでもあるからな。

 ましてや今から関口くんによる、おかし三人娘パーティ改造ブートキャンプが開催されるのだ。説明やら実践と反省と改善の、いわゆるPDCAを行いながらの改革になるだろうから、そこでどれだけ時間を食うかわからない。

 

 あるいは、昼過ぎくらいまでもつれ込むかもしれない。

 ここまで絡んだんだから今日一日は最後までつきあうつもりだけれど、なんとかスムーズにうまくいくといいんだけどね。

 そんな願いを込めて視線をやると、ちょうど三人娘に関口くんが語るところだった。

 

「さっき挙げた3人の問題点を、具体的にどういう方向で直していけばいいか……俺なりに案はある。香苗さんと山形の意見も取り入れながら、参考にしていってほしいと思う。いいかな」

 

 三人娘それぞれ抱える課題に対して、それではどうしたらいいのかという解決策。俺や香苗さんのアドバイスまで含めて伝えようとする言葉に、チョコさんもアメさんもガムちゃんも真剣な面持ちでいる。

 次のダンジョンはどうやらすぐ近くにある総合スーパーの裏手、物資を搬入する搬入口にあるらしい。これまた迷惑なところに発生しているもんで、さっさと踏破しないことには近隣住民の生活にさえ、支障が出かねない話だ。

 

 というわけなので向かいながら説明する、という形を取る中で。

 関口くんはやはりチョコさんから、改善内容について触れていった。

 

「まずはチョコ。君の場合は簡単な話、とにかく突っ込む癖を直さなければいけない。周りとの連携もしないままに一人だけ先走るのは、ソロ戦闘者のやることだ」

「は、はい!」

「というわけで、次の戦いからは今から言うように動いてくれ……突撃する前にアメとガムを見て話しかける。突撃した後、タイミングを見計らって後退して、一旦距離を置いた上でアメとガムを見る」

「えっ……? 突撃前に話しかけるのはわかりますけど、一旦後退ですか?」

 

 思いもよらないとばかりに、彼の提案に困惑するチョコさん。突撃前に仲間と意思疎通するのはともかく、斬りかかってからタイミングを見て離脱するという指示に、意図を計りかねている様子だ。

 まあ、まずはとにかくそのへんからだよねーと納得する。彼女の突撃癖は身体に染みついているだろうから、とにかく水を差させて冷静に周りを見る癖に変えていかないといけないだろうし。

 

「いわゆるヒットアンドアウェイに近くなるな……なんなら一撃いれたらその度に後退して周りを見るくらい極端でいい。君に必要なのは、仲間の状況を把握するための冷静さだ」

「うう……あ、頭を冷やせってことですね。ガムちゃんにも言われましたけど、イノシシなんですね私、本当に……」

「そんな状態から脱却するための策だ。まずはやってみてほしい、きっと君のためになるから」

 

 敵を倒すとかそういうのは二の次にして、とにかく周りをよく見なさい、と。

 そこまで言われてしまっては、さしものチョコさんもイノシシ呼ばわりを嘆きつつも頷くしかない。

 

 よし、と返して次、関口くんはアメさんに話しかけた。

 彼女もチョコさんと真逆の方向で冷静さを欠き、周りを見ることができていないという実情がある。

 そこについてどうする気なのか。彼の指導が始まった。

 

「アメ。君の場合はまず、何をおいても《召喚》するところからだ。誰がどう動こうと関係なく、とにかくスキルを使うこと。最初はそこから意識しよう」

「パニックになっちゃうと、それすら覚束ないものね〜……」

 

 アメさんは正直、自力で戦闘に入ることすらできてないからね……他人に発破をかけられてようやく、スキルを使うって領域だ。

 なので実際、とにかく部屋に入った瞬間召喚スキルを使えってのは頷ける指示ではある。基本中の基本だし、スキルを使わないことには彼女にできることは少ないからね。

 

 ただし。そこに関しては俺からも腹案がある。

 俺はおもむろに関口くんを呼んだ。

 

「どうした、山形。何かアドバイスがあるのか? その繋いだ手はなんだお前、見せつけてるのかお前」

「怖ぁ……あ、いや。アメさんの動き方に関して、提案があってさ」

「提案?」

 

 いきなりの提言に驚いたように俺を見る、関口くんとおかし三人娘。

 スキル《召喚》を始めとする召喚系スキルには、いくつか仕様があったりするからね。そこを押さえておくと、きっとアメさんの力になるはずだ。

 そう思って俺は、彼女に思うところを言った。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 関口ぃ!自分はハーレムイケメン陽キャムーブかましておいて嫉妬するんじゃあない!(正論) [一言] まあシャイニングさんに寄ってくるのは殆どが狂信者か人外か外人だから許してクレメンス………
[一言] 某ニュータイプ「後ろにも目をつければいい」 あの御仁も指導者向いとらんよな 言うこと観念的だし
[一言] こそこそ顔を寄せ合ってお話しするどころか手を……!
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